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私は、男を甘やかしたいの!!|『アニー・ホール』(2)
テーマ発表!!
前回に引き続き、映画「アニー・ホール」をベースに新しい物語を妄想します。
※「アニー・ホール」のストーリーなどについては、前回の記事をご参照ください。
妄想開始!
嘉村 それではまいりましょう!
三葉 はい。
嘉村 「アニー・ホール」は、女性を「道具」としか考えられぬダメダメ中年男が、失恋を通じて成長する物語ですが、「設定を思いっきり変えても面白くなるのでは?」ということで……さて!どんな物語にしましょうか?
案①
三葉 まずは、「アニー・ホール」風の物語を作る時に注意すべきポイントを確認しておきましょう。
三葉 ……ですね(より詳しくは前回の記事で)。
嘉村 ふむふむ。
三葉 さてご覧の通り、「アニー・ホール」の主人公はダメダメ中年男です。しかし……。
嘉村 ええ。
三葉 「アニー・ホール」のストーリー構造は、「女性が主人公の物語」にも適用可能でしょう。
嘉村 ふむ。
三葉 ということで「案①」は……ズバリ!「『アニー・ホール』 ~『私は男を甘やかしたい』編」です。
嘉村 男を甘やかしたい!
三葉 ええ。主人公は、「かわいい男の子に甘えられたい/かわいい男の子を甘やかしたい」という欲望を持つ女性です。
嘉村 ふーむ。
三葉 彼女は、幼い頃から「カッコいい男性」や「年上の男性」よりも、「かわいい男の子」「年下の男の子」に胸をときめかせるタイプの女子でした。
嘉村 ふむふむ。
三葉 そして高校1年生になり……初めて恋人(Aくん)ができた!相手は中学2年生、母校の後輩です。彼女は、Aくんのイガグリ頭が好きだった。額のニキビも好きだった。すぐに恥ずかしそうに赤面したり、俯いてしまうところが、かわいくて仕方がなかった。
嘉村 なるほど。
三葉 Aくんは中坊です。当然、お金に余裕はない。デート代は、いつも主人公が負担していました。
嘉村 ほぉ。
三葉 バイトをしてお金を貯め、アイスを買ってやったり、遊園地に連れて行ってやったりする……それが彼女の喜びでした。「Aくんが、私の買ってあげたアイスを嬉しそうに食べているわ。口の端にアイスを付けちゃって!……えっ、いま『とてもおいしいよ』って言ったの!?恥ずかしそうに小声で呟いて……嗚呼、かわいい♡」。Aくんを見つめていると心が満たされ、下腹部が熱くなるのでした。
嘉村 うーむ。まぁ、気持ちはわからぬでもありませんが……高1にして、なかなかの変態ですねぇ。
三葉 2人はラブラブ。主人公は幸福でした。……が!しばらくして、彼女の気持ちは冷めてしまいます。
嘉村 ほぉ……何があったのでしょうか?
三葉 ええ、Aくんが図々しくなってきたのです。「おごってもらって当然」とばかりの態度!そこには、感謝も恥じらいもない。時には、高価なモノを自らねだることすらあった。
嘉村 あー……。
三葉 主人公はうんざりです。彼女が好きなのは「かわいい男の子」であって、「ヒモのような厚かましい男」ではありませんからね。
嘉村 まぁ、彼女の気持ちもわかりますが……ただ、アレですよね。Aくんは、まだ中学生です。毎度毎度おごってもらっていたら、感謝の気持ちや恥じらいが薄れてしまうのも無理ない気もしますね……。
三葉 かくして、主人公はAくんと破局を迎えました。ではここで、「主人公とAくんとの恋愛模様」を整理しておきましょう。
嘉村 なるほど。
三葉 さてAくんとの破局後、主人公は大学に進学し、就職した。そして社会人3年目の夏……彼女に2人目の恋人(B氏)ができました!
嘉村 ほぉ。
三葉 B氏は、29歳の男性です。彼は、売れないバンドマン。「オレはメジャーシーンには興味がねぇ」「本当にわかっているヤツにさえ聴いてもらえれば、それで充分さ」なんてうそぶいていますが……要するに、才能もなければ運もない男なのです。
嘉村 うーむ……またとんでもない男を捕まえましたねぇ。
三葉 主人公は、友人の紹介でB氏と出会いました。そして何度かデートを重ね、肌を合わせ、同棲を開始した。
嘉村 ふむ。
三葉 主人公は、B氏の子犬のような瞳が好きでした。「バンドマンにしてはかわいすぎる」という理由で、前髪を伸ばし、どうにかしてその瞳を隠そうとするB氏が大好きでした。
嘉村 ふむふむ。
三葉 B氏は人前では平然としているものの、本当は肝っ玉が小さく、「このまま売れなかったらどうしよう」「オレはこの先どうなるんだ」と内心不安でいっぱい。彼は、主人公の前でのみそれを吐露しました。そして主人公が膝枕をしてやると、ポツリと呟く「ずっとこうしていたいよ」。……捨て犬。そう、まるで捨て犬。キャンキャン吠えて虚勢を張りまくる汚い捨て犬が、私にだけ心を開いている!主人公は、喜びに震えた。
嘉村 なるほど……。
三葉 主人公は精神的にのみならず、経済的にもB氏をサポートしました「お金のことは心配しないで。あなたは音楽に専念すべきよ」。彼女は会社員として働き、給料を得て、そのお金で肉や野菜を買い、料理を作る。B氏がそれを食べる……嗚呼、幸せ!
嘉村 本当にもう、「母性本能大爆発」というか、「ドS」というか、あるいは「ドM」というか……。
三葉 彼らのラブラブ同棲生活は、およそ1年続きました。しかし、B氏の30歳の誕生日に、2人の関係は終わりを迎えた。
嘉村 ほぉ!
三葉 その日、B氏が打ち明けたのです「オレ、決めたよ。もう中途半端はしねぇ。バンドはスパッと止めて、就職する。真面目に働く。いままで苦労をかけた分、お前を幸せにしたいんだ。だからオレと結婚してくれ!」。
嘉村 おー、プロポーズ!
三葉 ええ、そうですね。そしてまさにその瞬間、主人公は別れを決意しました。
嘉村 えっ!?
三葉 だって主人公は、「かわいい男の子に甘えられたい/かわいい男の子を甘やかしたい」という欲望を持つ女性ですからね。それなのに……。
嘉村 あー、B氏は自立してしまった!
三葉 その通りです。B氏は「もう甘えない。むしろ、これからはオレに甘えてくれ」と言っているわけですよね。主人公にとっては、これは受け入れがたいことです。かくして、彼女の気持ちは冷めてしまった。これを整理すると、以下のようになります。
三葉 ここでご注目いただきたいのは……「相手(Aくん、B氏)が自分の好みから外れると、主人公は途端に薄情になってしまう」という点です。
嘉村 ふむ。
三葉 彼女の気持ちはスッと冷め、相手に対する関心を失い、破局を迎える。つまり、主人公にとって「恋人」とは、「『かわいい男の子に甘えられたい/かわいい男の子を甘やかしたい』という欲を満たす『道具』」に過ぎないんですよね。だから、「道具」として役に立たなくなると、途端にポイッと捨ててしまう。
嘉村 うーむ……「アニー・ホール」の主人公に匹敵するダメっぷりですねぇ。
三葉 さて、次に進みましょう。2人目の恋人と別れてから1年後……3人目の恋人(Cくん)が登場します!そして、この「3人目の恋人との恋愛模様」こそが「案①」のメインストーリーです。
嘉村 ふむふむ。
三葉 ある日、主人公が勤める会社に1人の男性が転職してきました。それがCくんです。Cくんは主人公と同い年。学生時代にはバリバリスポーツをやっていたそうで、逞しい体つきをしている。顔も無骨な感じです。
嘉村 つまり、主人公の好みとは大違いというわけですね。
三葉 ええ、その通りです。
嘉村 ふむふむ。
三葉 主人公は、Cくんの教育係に任命されました。右も左もわからぬCくんに、あれこれアドバイスを送る役割ですが……これが、なかなか上手くいかない!
嘉村 ほぉ。
三葉 Cくんはスポーツマンらしく、思ったことをズバズバ口にするタイプです。一方主人公は、人一倍気を使うタイプ。2人は、「何よ、この男!失礼千万ね!」「何だ、この女!ったく言いたいことがあるならハッキリ言えよな!」とイライライライラ。
嘉村 ふむ。
三葉 つまり……マンガやドラマでお馴染みの「ラブコメ的な関係」ですね。2人は大きく異なるタイプの人間で、第一印象は最悪。その後も衝突を繰り返す。しかし、とある出来事をきっかけに「へぇ、結構いいヤツじゃん」「コイツ、悪いヤツではないよなぁ」と互いを見直すようになる。そして、友情を築く。一緒に酒を飲みに行き、憂さを晴らす。仕事では、見事な連携プレイを披露する。最高のコンビ!……ですが、ある時気づいてしまうんですよ。自分の抱いている気持ちが、「友情」ではなく「愛」だということに。
嘉村 なるほど。
三葉 主人公は戸惑います。えっ……愛!?私ったら、あんなかわいさのカケラもないヤツに恋しちゃってるわけ?冗談でしょ!?だって、相手はスポ根野郎よ。私の好みはもっとかわいくて、純朴な感じで、それで私に甘えてくるような……ええっ!あんな男に恋って、まさか!
嘉村 ふむふむ。
三葉 主人公は、学生時代からの友人に相談しました。話を聞いた友人は破顔した「それってさ、ただの欲求不満じゃないの?」「えっ?」「悪いことは言わないから、止めておきなさいよ。スポ根野郎なんて、ガサツで、短気で、頭が悪いに決まってるんだからね」。……主人公は、友人の言葉にイラッとした。そして思う。あー、私、恋してるわ。いま、メッチャ擁護したい気分だもん。「Cくんは、そんな人じゃないわ!」って言葉が喉まで出かかってるもん。恋しちゃってるわ、これ。だって、脳内で「CHE.R.RY」が流れ始めたもん。
三葉 かくして、主人公はCくんと交際を始めました。2人は幸せでした。何てことのない日常が輝いて見える。まさにラブラブです♡
嘉村 ふむ。
三葉 ところが……やがて主人公の悪いクセが出る!そもそもCくんは、主人公の「理想の男性像」とは大きく解離した人物です。付き合い始めた当初はそんなことを一切気にすることなくラブラブだったものの……距離が縮まるにつれ、主人公は「『理想の男性像』と『現実のCくん』の差」を意識するようになってしまったのです。
嘉村 あー……。
三葉 そして彼女は、Cくんに「かわいらしさ」を求め、「もっと甘えてほしい」と頼んだ。「私は、あなたに甘えたくないの。甘えられたいだけなのよ」と言う。Cくんは困惑します。訳がわからぬ。Cくんの戸惑いは、間もなく苛立ちに変わった「そんなにかわいい男が好きなら、そういうヤツと付き合えばいいだろ!オレに求められても困るよ」「オレは対等な関係でいたいんだ!お互いに支え合うべきだろ?それなのに、なぜオレばかりきみに甘えなきゃならんのだ!」。
嘉村 まぁ……Cくんの言う通りですよね。
三葉 一方の主人公は、自分の思い通りにならぬCくんにうんざりしてしまう。こうして、2人は破局を迎えました。
嘉村 なるほど……。
三葉 破局後、毎日顔を合わせるのは辛いものです。主人公は間もなく転職し、2人は疎遠になった。
嘉村 ふむ。
三葉 それからしばらく後……彼らは、偶然街で再会しました。そして5分ほど立ち話をして別れた。彼らの間にはもう恋愛感情は残っていない。……が、主人公は思いました「やっぱいいヤツだなぁ!もし生まれ変わったら、ヤツと結婚するのも……悪くないかもね」。で、物語は幕を閉じます。
嘉村 なるほど。
三葉 さて、ここまでご紹介してきた「主人公とCくんの恋愛模様」を整理してみましょう。
三葉 最初はよかったんですよね。主人公は、Cくんを「道具」ではなく、1人の男性として愛していた。しかし途中から、Cくんを自分の「理想像」に近づけようとしてしまう。つまり、Cくんを「自分の欲を満たす『道具』」として扱い始めてしまったのです。
嘉村 ふむ。
三葉 結局のところ……主人公は、AくんやB氏同様、Cくんも「道具」として扱ってしまったわけです。
嘉村 ふむふむ。
三葉 ……が!その後、Cくんと偶然再会した時、主人公は「やはりいいヤツだ」と改めて好感を抱く。ここでご注目いただきたいのは、主人公が「自分の『道具』にならなかった男性を高評価している」ということです。「『道具』か否かを問わずに、男性に好意を持てるようになりつつある」という意味で、「アニー・ホール」の主人公同様、「案①」の主人公も、人間的な「成長」を始めたと言えるでしょう。
嘉村 なるほど。
三葉 以上、「『アニー・ホール』をリスペクトした物語」のアイデアをご紹介しました!
続きはこちら!!
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クリエイター向け:「アニー・ホール」の構造を使って、オリジナルストーリーを考えよう!!【私は、男を甘やかしたいの!の巻】
— 100%ツールズ@創作の技術 (@100_tools) April 5, 2020
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最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。
(担当:三葉)
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