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破滅の落葉(Hametsu no Rakuyo)

 大学二年の時、自転車を用意して最寄り駅から学校までの移動に使った。自転車がなければつらいような距離ではなかったから、あんまりそんな人はなかった。
 この自転車は学内の移動にも使った。体育の授業で体育館や弓道場へ行く時と、図書館、生協の本屋、音楽サークルの部屋等へ行くのに使っていたと思う。
 ヘビメタが髪を靡かせながらママチャリに乗っているのは何だか滑稽だから止したがいいと云う者もあったけれど、余計なお世話なので放っておいた。また、学内を走っているのを面白がって追いかけて来る後輩などもあったが、大抵全速力で振り切った。

 文学部の学舎は学内の丘の上で、出入りには正門からの坂道と裏門からの坂道があった。
 ある時、授業が終わって帰宅するのに裏門から出るつもりでそちらの下へ方へ下って行くと、じきにブレーキが利かなくなった。裏門の道はあんまり人が通らないから落葉まみれで、ブレーキを掛けてもズルズル滑るのである。
 坂は中々の勾配で、滑りながらどんどん加速する。門はもちろん開いているけれど、鎖を通す腰高の柱が何本か、五十センチぐらいの間隔で立っている。
 もうこうなったら、あの柱にぶつかって転ぶしかない。幸い誰もいないので見られて恥ずかしいこともない。ただ自分が痛いばかりである。痛いのは嫌だが、未来永劫ずっと痛いわけでもないだろう。
 そう覚悟を決めて滑って行くと、ペダルの端が「ガッ!」と擦れただけで、柱の間をまんまと通り抜けた。
 門の外には落葉がなかったから、通り抜けたらブレーキが利いて止まった。
 あの隙間を通り抜けたかと、振り返って見ても何だか信じられない。それでも通り抜けたのには違いない。段々凄いことを成し遂げたように思われて、誰にも見られなかったのが残念な気がした。

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百裕(ひゃく・ひろし)
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