BOØWY
自転車に乗って塾へ向かう途中で、原付と接触した。細い道の入口を越える際、通りから入ってくる原付の前輪に自転車の後輪が跳ね飛ばされる格好で、自分は転倒した。それほどスピードが出ているようでもなかったけれど、エンジンの力は大したものだと、跳ね飛ばされながら感心したのを覚えている。
どういう風に転んだかは覚えていないけれど、左の膝と脛を打ったように思う。
「大丈夫?!」
原付の兄さんが慌てた様子で言った。
「大丈夫です、すみません」
そう言って自分は自転車を起こし、そのまま塾へ行った。
塾にはもう竹本君と幸田君が来ており、BOØWYの話をしていた。その時分、BOØWYが急に売れ始めていて、自分は何かにつけて「売れる前から聴いていた」とアピールするので大変だったのである。
自分は氷室ファンだから、あの人はクール過ぎてカッコよすぎる、全体歌声がシブ過ぎると、二人の会話に入って絶賛した。
竹本君と幸田君は布袋派で、あの足ピョコピョコがファンキーだと云う。後は松井が動かないとか、高橋の声がでかいとか、そんな話をしている間に、急に右足が痛くなった。
「痛たたたた」
「どしたん?」
「来る途中で原付に跳ねられたんよ」
「まじで?」
そこで授業が始まって、足の痛みはそれきりになった。暫くじんじん痛んだけれど、じきに治った。
後になって、どうして跳ねられた自分が謝ったかと腹が立って来た。しかし相手がどこの誰かもわからず、云ったのを取り消しに行くこともできないから、思い出すたび不愉快になって困った。
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