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安部公房『飢餓同盟』を読んで太宰治を嫌いになった。

安部公房を読んで太宰治を嫌いになった。

『飢餓同盟』
『飢餓同盟』はわたしが初めて読んだ安部の作品で、衝撃的な作品だった。
『飢餓同盟』の興味深い所のひとつは、主人公・花井たちのひもじい同盟を読書会の共産党たちとは一線を画した存在として登場させている点にあると思う。
権力や財産の所有を否定するひもじい同盟は、花園に関わる資本家・権力者たちに毒を以て毒を制すやり方で反逆を企てる。
しかし、物語の途中、花井の計画は読書会メンバーの突発的で感情的な、浅薄な行動によって危ぶまれたりする。そんな読書会メンバーに対して、花井は苦言を呈した。

考えたこと
読書会メンバーとひもじい同盟の理想とする社会はかなり近いものがあったのではないかと思う。それでも両者が手を取り合えなかったのは、双方の決定的な違いにある。
ひもじい同盟は極めて現実的に、現実・資本主義を生きながらの改革を企てた。花井は、共産主義を進化させたまだ名もなく不完全な思想の持主だったのではないだろうか。
一方で、読書会メンバーは夢想家止まり、次の朝起きたら世界が変わっているというような変化を信じていた。まるで10代の若者のようだなと思う。

安部は資本主義を生き抜いた作家だと感じる。彼が日本共産党を除名されたのも納得するようなストーリーだ。花井の登場は、安部がシュルレアリスティックな表現を好む夢想家では止まらなかったことを示していると思う。虚無主義に溺れ死ぬことなく、彼は闘い続けている。
主人公花井は最終的に精神病棟に入れられてしまうが、これは安部が『飢餓同盟』を出版した1954年から現在まで未だに解決されてない問題なのだろう。

それでも、『飢餓同盟』を書いた安部公房は、やはり資本主義を生き抜いた作家であると思う。

まもなくして、わたしは太宰を嫌うようになった。

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