10才の子どもに本を選ぶ
今年もブックサンタの季節がやってきた。
ブックサンタとは子どもに本を寄付する取り組みで、その参加方法は加盟書店で本を買うだけ。
数年前に取り組みを知ってから気になってはいて、今年は参加しようと公式SNSを見てみたら、小学校中学年〜高学年向けの本が比較的足りていないことを知った。
ならばその9〜12歳向けの本を選びたい。選ぼう。
でも、その年齢層への本のプレゼントってけっこう難しい。
書店で働いていたとき、「子どもの朝読に良い本はあるかしら」とお母さんから問い合わせを受けたことを思い出す。
小学校中学年・高学年って、一番読書迷子になりやすい年齢層だと思う。
多くの子は絵本を卒業していて、一般文芸書はルビが振ってなくて読めない漢字があるだろうし、ヤングアダルト小説は中学生以上向け。
となると、児童小説や図鑑?
個人的には岩波少年文庫をオススメしたいけれど、自分が10才のときに文庫をプレゼントされて喜んだだろうかと想像すると否である。
ということで、以下の3点を考慮して候補を考えてみた。
・装丁も含めプレゼントにふさわしい本にする
・どういう好みの子に贈られるか分からないためマニアックな本は避ける
・ベストセラーやロングセラーは集まりやすい(かぶりやすい)ため避ける
「ロアルド・ダールコレクション」
自分が10才のとき、周りでどんな本が流行っていたかなあと思い返すと、断然ハリー・ポッターだった気がする。
でもハリー・ポッターは今の小学生もすでに読んでいるかもしれないし、と考えたとき、思いついたのが評論社から出ているこのシリーズの『マチルダは小さな大天才』。
ハリー・ポッターが出版される前はイギリスで一番売れていた児童小説で、頭脳明晰なマチルダがあくどい大人たちに一泡ふかせる痛快なストーリー。
映画やミュージカル(日本でも上演されている)にもなっている。
このシリーズにはティム・バートン監督の映画が有名な『チョコレート工場の秘密』など、映画化されている作品が多くあるので目移りしてしまう。
文庫と四六判の中間くらいのサイズの上製本で見た目も安っぽくなく、挿絵が多いところもポイントが高い。
『はてしない物語』
ミヒャエル・エンデのこの名作はなんと函入り。プレゼントとしては高級感たっぷり。
さらに物語に登場する本の装丁をそっくり再現した造りになっている。
(私は友達に「これはこの装丁で読んでほしい!」とオススメしてもらって読んだ。)
いま読んでいる本に登場する本が自分の手元にある……!?という不思議な感覚を味わってほしいし、それを機に読書の認識が変わる子もいるはず。
対象年齢は小学6年生・中学生~となっているけれど、主人公は10才の冴えない男の子。
なるべく近い年齢でこの物語の中に飛び込んだら、きっと素敵な読書体験になるだろうな。
『あしながおじさん』
朝日出版社から出ているこの本は、詩人・谷川俊太郎さんと『旅の絵本』で有名な安野光雅さんという夢のような組み合わせ!
総ルビでカラーイラストもたくさんあって、ページ数は220ページと少なめ。
手紙で構成された書簡体小説なので読書に不慣れな子も読みやすい。
小説とはいえ人の手紙を読むのって、なんだか背徳感があって楽しいよね。
同じシリーズには『赤毛のアン』(こちらの訳は岸田衿子さん)もあり、こちらも人に贈りたい一冊。
『Wonder(ワンダー)』
「ワンダー 君は太陽」として映画化もされているこの作品は、スピンオフ作品までもが映画化(今年公開)されている人気ぶり。
主人公は10才の少年で、公式サイトには読むなら小学校5・6年生~とある。
いじめを題材としているから、その年頃の子たちにはかなり身近に感じる部分もあるだろう。
あと、なんといってもこの本は気持ちの描かれ方がとっても丁寧。
登場人物の誰かに感情移入して読書を楽しんでほしい。
「プチ・二コラ」シリーズ
「朝の10分間読書に最適!」と銘打っているこのシリーズは、実用的なプレゼントとして良さそう。
朝読といえば「5分後に意外な結末」シリーズも人気だし、短いお話は読書に不慣れな子もとっつきやすい。
フランスの小学生二コラが仲間たちとやんちゃするこの本は、どれもクスッとさせてくれる。
フランスのエスプリが効いていて、ユーモアの引き出しが増えるというか、視野が広がる作品でもあるなと思う。
Newton大図鑑シリーズ
上記では読み物を候補に挙げたけれど、図鑑もやっぱり外せない。
図鑑の大きさ・重さは、英知がぎゅっと詰まっている証し。
読まずとも見てるだけで満足できちゃうのって、図鑑の魅力だよなあ。
科学雑誌ニュートンから出ている図鑑シリーズは大人から見てもどれも面白そう。私もほしい。
図鑑というとリアルな写真がどーん!と表紙になっているものが多いなか、イラストの表紙はスタイリッシュで格好良い。
難しい漢字にはちゃんとルビも振ってある。
私は「天気と気象大図鑑」「くすり大図鑑」「古代遺跡大図鑑」あたりがニュートンらしくて気になった。
なかには「バイアス」「パラドックス」「哲学」などかなり攻めたテーマの図鑑もあり、ニュートンの心意気や良し。
『マップス 新・世界図絵』
有名な絵本なので知っている人も多いかもしれないが、この本、でかい。
なんと縦38cm×横28cmという大きさ。
この本がプレゼントされたときの10才の笑顔が容易に想像できる。
この大きさだけでも喜ばれそうだけど、この本は中身もすごい。
ページにはイラストがぎっしりと埋め尽くされていて、さまざまな国の特色が分かる。
こんな国あるんだ、ここ行ってみたい、と想像の翼が広がる設計になっていて楽しい。
小学校低学年・中学年~と対象年齢もピッタリ。
こうやって本を選んでいる時間が楽しくて、プレゼントをあげる側であるはずの私がもらう側より楽しんじゃってる。
ベストセラーを避けたから街の本屋さんにはあまり在庫がないかも。
大型書店で求めやすいラインナップになりました。
私が寄付できる金額は微々たるものなので、実際に贈れるのは全てではないのがちょっと悔しいけれど、上記の本を書店で探してブックサンタに参加してみます。
後日追記。
ブックサンタ、参加しました。
書店で自分の分と一緒にお会計して、店員さんに手渡すだけ。
すごーく簡単だった。
ブックサンタの良いところは、売上という形で書店への応援にもなるということ。
これ以上積ん読を増やせない……というときも、ブックサンタなら本が買えちゃう。
しかも、この本をだれかが喜んでくれるかなあと想いを馳せられる。
それってすごく豊かな時間だよなあ。
独り善がりかもしれないけど、でも、やらないよりやった方がマシ!何より大好きな書店の売上に貢献できることは確実!と自分を鼓舞して、参加してみて良かった。
「私もだれかのサンタクロース」。
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