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「FACTFULNESS」を読んでの雑感
いまさらではあるが、かつて話題だった本である。
筆者のハンス・ロスリング氏はTEDというオンライン講義にも何度か登場している。"The best stats you've ever seen"と題した講座を行っている。開始から間もなく始まる、競馬実況のような迫真の演説には誰もが心惹かれるだろう。"And we have a completely new world..."というところで自然に拍手が起こるのも当然だ。
さて、このFACTFULNESSという本は、「10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣」というサブタイトルがついている。
その思い込みとは、
1 分断本能
2 ネガティブ本能
3 直線本能
4 恐怖本能
5 過大視本能
6 パターン化本能
7 宿命本能
8 単純化本能
9 犯人捜し本能
10 焦り本能
の10個だ。
詳細については本書を読んでいただければと思うが、報道に携わる人間として「意図せずしてこの本能をうまく利用してしまっていた自分がいた」と反省するばかりだった。
ロスリング氏も再三、マスメディアの報道の在り方について言及はしており、それがそのまま私の胸に突き刺さったと思ってくれて構わない。
たとえば、4の恐怖本能においては
「悪い」と「良くなっている」が両立する
ということが書かれている。
残酷なようだが、戦争が起きたという報道をみたときに、「戦争が起きていない平穏な世界が基本的には存在している」と感じる感性がFACTFULNESSである。
8の単純化本能の項は
「メディアの言うことを信じて世界の姿を決めつけるなんて、わたしの足の写真を見ただけで、わたしのすべてを理解した気になるようなものだ」
という一言から始まる。世界を単純に見た方が理解もしやすいし、そうした方が人生おさまりがいいというものでもある。
とはいえ、そうはいかないのが現実というもの。イデオロギーや専門的な知識を、世界の在り方とパチパチと磁石のごとくつなぎ合わせて、いつの間にか世界認識がゆがむということが起きる。
といった話が約400ページにわたって書かれている。
「長いな」と思う人がいるかもしれないが心配することなかれ。
翻訳者のおかげか、非常にこなれた日本語でめちゃくちゃ読みやすい。
外国の哲学書によくある、「英文を直訳しておりますけども何か文句あります?」的な翻訳と比べれば、読みやすさは月とすっぽんだ。
そして読みはじめた人はぜひ、「おわりに」まで目を通してほしい。
上記の10個の本能に付け加えて、この「おわりに」に書かれている”1つの本が編まれるまでの日々”を付け加えて、FACTFULNESSなのだと思う。
ぜひご一読を。