定義としてはカフェオレにもカフェラテにも該当しない
コーヒーに牛乳を少し足して飲んでいる。ちょっと胃に優しくなる気がするし、飲み過ぎ防止のためでもある。マグカップに一センチほどの高さまで牛乳を注いで電子レンジで温め、それをタンブラーに注いだ上でペーパードリップで濃い目のコーヒーを淹れて混ぜる。これはどうやら定義としてはカフェオレにもカフェラテにも該当しないようだ。カフェオレはコーヒーと牛乳の比率が一対一でなければならず、僕の場合は八対一くらいである。一方、カフェラテはそもそもコーヒーではなくてエスプレッソと牛乳を混ぜたものらしく、比率は一対四が基準とされている。だから僕の場合はコーヒーフレッシュを入れている感じに近い。砂糖は入れない。
最近寒くなってきたせいなのか、なんとなくもう少しこだわりたくなってミルクフォーマーなるものを買ってみた。単四電池二本で動く電動の泡立て器である。三十秒温めた後の牛乳に突っ込んでスイッチを押すと、ものの数秒でモコモコに泡立つ。これを濃い目に淹れたコーヒーと合わせて嬉々として飲んでみたところ、味はそれまでとそんなに変わらなかった。口当たりがちょっとまろやかになるだけである。余計に増えた労力に対してそれほど劇的に満足度が向上したわけではなかったのでやや失望したが、せっかく買ったばかりのミルクフォーマーを使わないのも勿体無いのでしばらくこの手法を採用している。すると不思議なもので、自分の中で徐々にこの味が育っていった。泡立たせ方や配分のコツがなんとなく掴めて思い通りに作れるようになってくると、コンビニやカフェなんかのカフェラテを飲んでも「ちょっと違うな」と感じたりするようになった。
ちなみに僕が現在採用しているレシピはどちらかというとカプチーノに近いのだけれど、カプチーノもやはりエスプレッソを使うし牛乳との比率も異なる。ここに書いたものはあくまでも我流に過ぎない。それから僕は特にコーヒーの知識が豊富な訳では全然なく、文章を書く上で一応グーグルでファクトチェックしているだけである。実際は行き当たりばったりに実験しているだけだ。
思いがけず前置きが長くなってしまったのだけど、僕が本当に書きたかったのは単四電池についてである。というか、より正確にはその充電器についてだ。
僕はミルクフォーマーをアマゾンで買ったのだが、その際に充電式の単四電池も一緒に買った。ある程度長く使うことを想定していたわけだ。充電器は別売りだったので一緒に買おうと探したのだけれど、どれだけ検索してみても単三電池用の充電器しか見つからなかった。この単三電池用の充電器は既に持っており、かれこれ数年は使っていた。そして、僕はこの充電器が単四電池にも併用できることにやがて気がついた。ちょうどピアノの鍵盤の黒い部分みたいに、単三電池の合間にセットできる隙間があったのだ。電池だから言う訳ではないが脊髄に稲妻が走った。充電式単三電池とその充電器を持っていたことで、これまでの僕は電化製品を選ぶ時に「電池駆動の場合は単三電池に対応している」という条件を一つの大きな基準としていた。単四電池駆動の場合は、ほかのどんな要素が優っていても見送る傾向があった。しかし、この前提はあまりにも唐突に崩れ去った。『ファイト・クラブ』みたいなオチに遭遇し、なにかしら変な物質が脳内に分泌された。
そんな訳でミルクフォーマー自体への感動というか感謝はちょっと削がれてしまった。なんだかフェアではない気がする。