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Chez Inno 2024.10


はじめに

東京京橋にあるフレンチレストラン「シェ・イノ」に再訪しました。

勝手に評価!

  • 総合評価:4.6 凄く良い!

  • 料理・味:4.6

  • サービス:4.6

  • 雰囲気:4.5

  • コスパ:4.3

実際に食べたもの

コースは数種類ご用意されています。
今回我々は、前菜・メイン・デザートのついたランチコース(税込サ別9,900円)に、アラカルトからマリア・カラスをフルポーション(税込サ別9,900円)を追加しました。

アミューズ

ふくいサーモンのマリネ

もっちりとした口当たり。旨味の乗った上質な脂がしっとりと、滑らかに広がります。
合わせるのは、マヨネーズベースにエストラゴンを合わせたソース。まろやかさがサーモンの旨味を包み、ピンクペッパーが点でアクセントを加えます。

パン

バゲット、バター

カリッとしたクラストに、ふんわりと軽いクラム。
そして、フランス産バターに、岩塩を練り込んだバターです。
パンもバターも、無くなると気前良くおかわりをお持ちくださります。

前菜

前菜とメインは、複数種類から好きな物を選択できます。

鴨肉とフォアグラのテリーヌ(左)
鴨胸肉と鴨のフォアグラの燻製(中央奥)
穴子と帆立のテリーヌ(右)

前菜の3種盛り。
以前伺った際に同行者が頂いていたのが羨ましくて、こちらを選択。ちなみに、今回は私が連れに羨ましがられました(笑)
2種類のテリーヌは、指3本分はあるほどの幅に、厚みもしっかりあります。

鴨肉のテリーヌは、ぎゅっぎゅっと詰まっている。この1カットにどれほどの量を使っているのだろうと、恐ろしくなるほどです…(笑)
広がる旨味に、お肉を口いっぱい頬張っている感覚を味わえつつ、ほろりと滑らかに消えていく。鴨肉の旨味とフォアグラのまろやかさが、しなやかに混ざり合った仕上がりです。
合わせるのは、コンソメ、ポートワインにスパイスを加えたジュレ。コンソメによって丸みを帯びたポートワインの甘みやスパイスの華やかさが、味わいに深みと輪郭を生みます。

次に、鴨胸肉と鴨のフォアグラのミルフィーユ仕立て。フォアグラは砂糖や蜂蜜に漬けた後、燻製されています。
口に含むとぶわぁと燻製の香りが広がる。そして、不純物を微塵も感じない、濃厚な甘みとコク。
この香りと味わいが、蜂蜜の甘みによって丸みを帯びていく。
胸肉の旨味にはブラウンシュガーでキャラメリゼされた皮の、香ばしい焦げと甘い香りが加わります。

最後に、穴子と帆立のテリーヌ。
ムースは3層仕立て。帆立のムースをベースに、ハーブを加えたものと、サフランを加えたもの。
ふんだんに空気を含ませて撹拌させているためか、ふんわり軽やか。雲のごとく、空中に浮かせてしまえるのでは?と錯覚するほどです。そして、海のミネラルを凝縮したような、磯由来の様々な香りと甘みが華やかに開きます。
軽い口当たりなのに、味わいは重厚に感じられるのは、不思議でしかない。
ソーテルヌと雲丹を合わせたソースは、雲丹の磯のコクと甘みがまっすぐに、しかしソーテルヌでまろやかに広がります。
異なる海の味わいが交わることで、立体感が生まれていました。

メイン

佐賀産マナガツオ

マナガツオはパネし、ソテー。
ふっくらしっとりした身からは、まるでせせらぎのように、さらさらと流れる脂。甘さも感じますが、とても透き通った、繊細な脂です。

ソースはヴァンブランソースをベースに、ヴェルモットとセップ茸、生ハムを加えたもの。
口に含んだ瞬間、セップ茸の旨味がいっぱいに広がる。その中に潜む生ハム由来のコクが芯となり、フュメドポワソンの柔らかなミネラルが包み込みます。

マナガツオとセップ、それぞれの味わいは勿論存分に楽しめますが、両者が溶け込んだ際の一体感たるや…
海の食材と山の食材、自然の構成要素を分解し手を加えつつ、それをまた1つのものとして再構築していく。料理の真髄に触れたかような感覚に浸ります。

追加:マリア・カラス

マリア・カラス

2回目ですが、微塵も薄れることのない感動。
パイ包みで有名なお店は多くありますが、その中でも王者、いや女王の地位に君臨するマリア・カラス。

まず、パイに包まれたのは、仔羊の背肉にフォアグラ、シャンピニオンデュクセル。
仔羊は弾むような弾力がありつつ、ショキッと一太刀で噛み切れてしまうほどに柔らか。しなやかな生命力を感じる、肉のエキスが広がります。
デュクセルには刻んだトリュフも使用。このことで、この活き活きとした仔羊、フォアグラの甘み、そしてエレガントなソースの橋渡しとなります。

合わせるのは、ペリグーソース。
フォンドボーに、マデラ酒、ポートワイン、刻んだトリュフを使用した、まさにクラシックフレンチの権化。
食べ進める毎に、どうしても味わいが過剰に感じてしまいそう、だらけてしまいそう。なのに、全くしつこくない。ソースの大海が、途中で足りなくなってしまうほどです。
そんな魔法のようなソースを支えるのが、フォンの純度の高さなのではないでしょうか。
どう粗探ししても、雑味がないのです。
たっぷりのワインと絡み合うことで生まれる、この重みが何とも心地良い。

プレート

連れの誕生日にプレートをご用意いただきました。フロマージュのジェラートと青りんごのソルベを合わせて。
プレートの文字の高さや幅が整いすぎて、プリントされたものなのでは?と疑いたくなるほどでした。(パティシエの方が一皿一皿丁寧に書いてくださっています)

デザート

デザートワゴン
(右手前から時計回りに)グレープフルーツのコンポート、ガトーショコラ、パリブレスト、スフレチーズケーキ、チョコレートと洋梨のムース、秋のフルーツのタルト

ギャルソンさんがいらっしゃり、目の前でカットしてくださります。
カスタードのこどく卵感が濃ゆく、しゅんわりと繊細な気泡のように消えていく、スフレチーズケーキ。
ヘーゼルナッツのナッティーな香ばしさとコク、塩気が滑らかに絡まり合った、パリブレスト。
どちらも非常に凝ったデザートです。是非ホールで頂きたい。

カプチーノ

デザートを頂くタイミングに合わせて、食後のお飲み物もご提供いただきました。ちびちびと頂きながら、ほぅと幸せのため息を漏らします。


「創造のない伝統に進歩はない。伝統の持たない創造には、持続力がない」
そんな井上シェフのお言葉が、ぱっと脳裏に蘇りました。
歴史を「過去の産物」として軽んじるのではなく、その重みに対する理解と敬意を惜しまない。
クラシックという言葉と地位に甘んずるのではなく、現在の社会的文脈を踏まえた上で再定義していく。
そんな底知れない努力と情熱を感じる品々でした。

サービス

「井上の家」という思いもこもった、「シェ・イノ」という名前そのもののおもてなしでした。

まず、今回は2回目の訪問だったのですが、皆様筆者のことを覚えてくださっていました。(名前だけでなく、趣向までも)
また、前菜やメインを選ぶ際、悩みに悩み…かなりのお時間拘束させてしまったにも関わらず、非常に親身になって相談に乗ってくださりました。「想像を膨らませていただいて、我々がそれに寄り添ったご提案をさせていただきたい」と、優柔不断にはこの上ないお言葉までいただきました…!(笑)
さらに食事中は、筆者が説明をメモ書きすることを覚えてくださっており、説明をゆっくりにしてくださり、追加の質問にも細やかにご対応いただきました。

友人と接するような気さくさがありつつ、細やかなご高配もいただける、そんな距離感が非常に心地良かったです。

お値段

ランチコース(税込サ別9,900円)に、マリア・カラスフルポーションを追加(税込9,900円)、モクテル1杯で24,115円/1名でした。

まとめ

料理もサービスも、色褪せるのことない感動が詰まっておりました。
今回ランチコースで他の選択肢としてあった前菜やメインも非常に気になるし、ジビエのパイ包みなどまだまだ頂きたいメニューも沢山ある。
またワクワクと想像を膨らませて参ります!


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