プライベート・ライアンの主人公たちの道のりを調べてみた
スティーブン・スピルバーグ監督の映画「プライベート・ライアン」、観たことある方も多いのではないでしょうか。
私は大体半年に1回は観ています。定期的に観たくなるぐらい好きですね。
何度も視聴している間に気になったのは、ミラー大尉率いる8人の兵士ってどんな道のりを歩んでいるんだろう?ということです。
ところどころ地名が出てくるのですが、フランスの土地勘もないので、いまいち進行ルートがピンときません。
そこで、グーグルマップを使って主人公たちの道のりを調べてみることにしました。
スタート地点:ノルマンディー・オマハビーチ
説明するまでもないかもしれませんが、スタートはノルマンディーのオマハビーチとなります。
イギリスから船で輸送されてきたミラー大尉たちの所属する第29歩兵師団は、このビーチで迎え撃つドイツ第352歩兵師団の激しい抵抗にあうことになります。
上陸作戦のシーンは本当に何度見ても圧巻で、映画史に残る作品だと思います。
グーグルマップで見るとこのあたり。周辺に記念碑などが建てられていて、歴史を感じさせます。
ストリートビューでオマハビーチを見ることもできました。
映画ではもっと砂浜が狭くて、崖が切り立っていたように思ったのですが、ストリートビューで見ると違った印象を受けますね。
上陸舟艇からビーチへ飛び出した兵士たちはどんな気持ちでこの砂浜を進んだのでしょうか。
余談ですが、上陸の際にマイケル・ホーヴァス一等軍曹がフランスの土を採集しているシーンがあり、その時にイタリアとアフリカも土も見えます。
様々な戦場を渡り歩いてきた歴戦の兵士であることが分かります。
目的地:ヌーヴィル・オー・プレーン
ライアン二等兵を帰還させる作戦を任された後、ミラー大尉が「広報チーム活動でヌーヴィルへ出発だ」と言っていましたので、
目的地がヌーヴィルであることは間違いないと思います。
ただ、ヌーヴィルでグーグルマップを検索していただくと分かるのですが、フランスの各地に同名の場所が散在しています。
では、どうやって場所を特定したかと言いますと、実はプライベート・ライアンにはストーリーの基になった「ナイランド兄弟」という4兄弟がおられまして、
三男のロバート・ジョセフ・ "ボブ"・ナイランド二等軍曹が降り立った地が「ヌーヴィル・オー・プレーン」という場所なんですね。
ちなみに「オー・プレーン」の意味ですがおそらくフランス語で「平野の」とか「平原の」ということだと思います。
フランスの地名はこんな感じで「○○の△△」みたいに地名と風土がセットになっていることがよくあるみたいです。
それよりちょっと待って!史実でヌーヴィルに降り立ったボブは三男だけど、映画のライアン二等兵は四男だよね!と気づいた方は鋭いです。
というのも史実の方の四男、フレデリック・ウィリアム・ "フリッツ"・ナイランド軍曹がどこに降り立ったかというのは、
日本語ベースの資料では正直分からなかったんです。このあたり英語やフランス語ができたらと悔やまれます。
ただ、今回の映画はノンフィクションではありませんし、地理的にも他のヌーヴィルと比較して違和感がないので、
ヌーヴィル・オー・プレーンで間違いないと思います。
調べてみるとオマハビーチからは歩いて約12時間の距離でした。
戦争中なので最短ルートでは移動できないでしょうし、途中で戦闘もはさむのでもっと時間はかかると思います。
それもで歩いて何とか行ける距離ではあると思うので、ミラーたちが派遣されたのも納得はできます。
最初の村(場所不明)
ミラー大尉たちがオマハビーチを出発してから到着した最初の村ですが、特に地名らしきものは見当たりませんでした。
もし詳しい方がおられたら教えてください。
ここで「脚を折った奴」と呼ばれる兵士にライアン二等兵がいる場所のヒントをもらうことになります。
この兵士はライアン二等兵と同じ「101空挺師団」の所属で、「ヴィアヴィル(Vierville)」からやってきたとのこと。
おそらくこの「ヴィエルヴィル=シュル=メール(Vierville-sur-Mer)」のことを指しているのだと思います。
オマハビーチのすぐ近くですので、地理的にもおかしくはないのですが、着地したときに脚を折ったのなら、
映画内の描写的にそこそこの距離を移動しているように見えるので、かなり大変だったのではないかと推測できます。
マイク(マイケル・ホーヴァス一等軍曹)が「これじゃ年をとる」とぼやくように、兵士たちのストレスが各所に表現されています。
グライダーの不時着地点(カロンタンの近く)
グライダー歩兵連隊を輸送したデウインド少尉と出会う場所です。
悲惨な状況に「フーバー」と一行が漏らすなか「辞書にのってません」と付いていけていないアパム伍長が良い味を出しています。
ここも具体的な場所は示されていませんが、映画の中に2つヒントがあり、
まずダニエル・ジャクソン二等兵が負傷した兵士たちに「29歩兵師団がもうじき到着する」と言っています。
29歩兵師団の足取りを調べてみると、オマハビーチに到着した後に「サン=ロー」へ向かっています。
サン=ローはオマハビーチから南西の方角にあり、この場所は途中のどこかであると予想できます。
もう1つのヒントは、ミラー大尉が「我々はここだ」と言って地図を広げるシーンがあるのですが、
その際に地図に「CARENT…(後半読めず)」という地名が載っています。
これは地形的にカロンタン=レ=マレ(Carentan-les-Marais)で間違いないと思います。
先ほどの予想よりは西の地点ですが、ちょうどオマハビーチからヌーヴィルまでの中間あたりの場所になります。
映画を注意深く見ると「我々はここだ」と指差しているのは、カロンタンの少し北(地図の真ん中)あたりです。
この場所でついにミラー大尉たちはライアン二等兵の場所を突き止めることができます。
手榴弾で耳をケガした兵士から「ラメル(Ramelle)へ行った」という情報を得ることができました。
ライアン二等兵の居場所:ラメル
このラメルなのですが、日本語や英語で検索しても見つかりませんでした。
ヒットする場所はあったのですが、ちょっとあまりにも遠すぎる場所なので、ここではないだろう、と。
映画の中でラメルは「メルデル川(Merderet River)沿いの町」であると言われています。
川は大体このあたりになります。
結構長い川なので、地図で表記しているのは川の真ん中あたりになります。
メルデル川をストリートビューで見るとこんな感じ。小さな川ですね。劇中でラメルの町に川が出てきますが、確かにこれぐらいの川幅でした。
また、映画で「ここから南西」とも言われています。
これが少し悩んだのですが、カロンタンの辺りに居た場合、メルデル川は北西にあるので矛盾してしまいます。
ただ、先ほどもミラー大尉が地図で指し示した場所がカロンタンの北という予想を立てました。
すると南北に流れるメルデル川の南の方であれば、カロンタンの少し北に居た場合、方角の矛盾はなくなります。
つまり、グライダーの不時着地点はおそらくこのあたりです。
ヌーヴィルのかなり近くまで来ていたことになります。
そして、ライアン二等兵のいるラメルはこのあたり。
この予想を元に一行がたどった道のりを考えてみるとこうなりました。
オマハビーチからヌーヴィルへ向かい、途中で南西のラメルへ向かったと考えると妥当な線だと思います。
本当はラメルを見つけられるともっと精細な道のりが分かるのですが。詳しい方がおられたら教えていただきたいです。
これにて、ミラー大尉たちがたどった道のりを追う旅は終わりとなります。
思い付きで始めたこの企画でしたが、フランスの地名や地理、そして第2次世界大戦の勉強になり、映画の理解も深まりました。
機会があれば、1度現地を訪れてみたいものです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。