ダブり〜1限目〜M
「じゃーお疲れぇ」
「次は、Live本番だな」
なんて、いいながら俺たちは音合わせを終えて
別れた。
俺は、副会長に
「駅まで送るわ」
と言うと
「ありがとう」
と返事が返ってきた。
駅までの道中に公園がある。
それを見つけた副会長が、公園を指差してこう言った。
「会長、少し話して帰ろうよ」
俺は、こう言った。
「そうだな、少し話すか」
俺たちは、公園の中にあるベンチに座った。
「コーヒー買ってくるけど、何か飲むか?」
と俺は、紅茶好きの副会長に聞いた。
「ありがとう。じゃー紅茶がいいな」
俺は、副会長がそう言うのはわかっていた。
自販機で買って戻ってくると、副会長は
目の前にあるブランコを見ていた。
「はいよ」
と俺は紅茶を渡した。
「ありがとう」
「お前、ブランコに乗りたいのか?」
「乗ったら??」
すると、副会長は
「会長、いつか私の背中を押してくれる?」
と言った。
俺は、
「ブランコか?なら、今からのるか?」
と副会長に聞いた。
すると、副会長が
「私、いつか叶えたい夢があるの」
俺は
「そうか、その夢叶うといいな」
副会長は
「何か聞かないの?」
「普通聞くよね?」
俺は
「そうなのか?普通は聞くのか?」
普通は聞くようだ。俺はそう言うところは
鈍感のようだ。
「夢って?」俺は聞いた。
すると、副会長は
「何それ!?もっと聞き方あるよね?」
と、言った。
俺は、正直面倒くさと思いながらも
副会長に、
「ごめん、ごめん、教えて下さいよ」
と言った。
「私、女優になりたいって小さい頃からの夢
だったの。おかしいでしょ?」
「普通に考えて無理だってわかっているから、学校行って何かしらの仕事につこうと思っているんだけど、どうしてもあの頃の夢が忘れられなくて、もしかするとなれないかなぁ?なんて思ってるの」
俺は、こう言った。
「いい夢じゃないか。俺はバンドでデビューするって夢がある。でも、俺たちの方が無謀な夢だと思うけどな」
つづけて俺は
「でも、それになぜブランコなんだ?」
と、聞くと
「小さい時、お遊戯会で主役になったの。
でも、上手くできなくて、落ち込んでたの。
何度も練習して、練習したけど本番セリフを忘れちゃって。。ダメでしょ?
その帰り、泣いてる私をお父さんが公園に連れて行ってブランコに座らして、こう言ったの、リョウは、女優になりたいんじゃなかったのか?未来の女優が泣いてちゃファンが悲しむよって。」
「それでも、泣き止まない私にお父さんが、
私の背中を押してブランコをこいだの」
「シンデレラ、シンデレラってお遊戯会でやった劇を始めたの。私は、ブランコに揺られながらお父さんとセリフを言い合って、その時不思議とセリフが言えたんだよね。」
「ほら、言えた。」って言って
「リョウ、お父さんはいつでもリョウが悩んだ時は背中を押してあげるからって」
「それが凄く心強く感じたの」
「なんか、恥ずかしい話をしたよね?」
と副会長は照れを隠すように紅茶を口にした。
俺は、
「じゃーいつか俺たちのミュージックビデオに
お前を出してやるよ」
と俺は言った。
そして、副会長はこう言った
「ホント!?それは嬉しいな」
「仕方がないから出てあげるよっ」
と言って
「今日、会長たちが楽しそうに歌を歌っているのを見て私もやっぱり叶えたいって思ったの」
「だから、もし私が悩んだ時背中を押してくれる?」
と俺に言った。
俺は、少し照れくさいけど頷いた。
夏の匂いがする公園で。
1限目Nにつづく。