ダブり〜2限目〜G

それから数日経った頃。

俺たちは次のライブにむけて曲を作っていた。

サワナカの体調も順調に回復して、
刺された男も順調だ。

もちろん角材で殴られた奴も大丈夫だ。

俺はお見舞いのはしごしで忙しい。

サワナカも明後日には退院できるようで
俺は刺された男の病室へ向かった。

その頃サワナカの病室では年上くんが見舞いへ
来ていた。
「ナナちゃん、明後日退院だね」
「ほんと心配したよ。でも良かったよ」
サワナカは幸せそうに
「ありがとう」
と言った。
すると年上くんはサワナカに
「ナナちゃん・・こんな時になんだけど・・」
サワナカは
「どうしたの?」
と聞くと
「俺やっぱり店辞めて田舎へ帰ろうと思う」
「今月の返済も間に合いそうにないし・・・」
「親父が体壊したんだ」
と話した。
それを聞いたサワナカは
「えっ!?それって?」
「どうにかならないかな?」
サワナカは鞄から封筒を取り出して
「これ、少しだけど使って」
と渡した。
「ナナちゃん、これは受け取れないよ」
サワナカは
「大丈夫!全然足しにならないと思うけど少し
でも足しになったらいいかなぁって」
「また、来週からバイトするし、今は全然頼りないけど協力するから」

年上くんは
「ナナちゃん、ありがとう」
「これじゃ、どっちが年上かわからないね」
「俺も夢あきらめないで頑張るよ」
「じゃー店開けないといけないから戻るよ」
と言ってサワナカの病室を出た。


一方違う病室では
「バカだなぁ〜お前は」
「じゃーまたな!ちゃんとリハビリやれよ」
と言って俺は病院からスタジオへ向かった。

その頃サワナカはベッドから立ち上がり
ふと床を見ると
「あっ、これ忘れ物かな?」
「ってか、カギじゃんっ!?」
と言って忘れものを届けようと彼を追っかけた。


カタンっ!!

と誰かとぶつかったサワナカは
「大丈夫ですか?」
と声をかけて床にある松葉杖を拾って渡した。

「あっ、大丈夫 ありがとう」
「君、ユウくんのクラスの子だよね?」
どうやらリハビリに向かう途中の刺された奴と
ぶつかったようだ。

サワナカは
「はい、もしかしてあなたが2年の….」
と聞くと
「そう、こないだ刺されちゃって」

「えっ!?刺されたんですか?大丈夫ですか?」

「まぁ、お陰様で」

「ほんと、良かったですね」

「ありがとう、俺、これからリハビリだから」

「じゃー私そこまで一緒にいきますよ」

「いいの?でも他に用があったんじゃないの?」

「そうなんですが・・・」
「でも、もう間に合いそうにないんで後で電話します」
「なので一緒にいきましょう」
と2人はリハビリ棟まで向かって行った。


すると
「そうだよっ!余裕だろ!?」
と電話で話してる人の姿を見てサワナカが
「あっ、先輩ちょっと待ってくれます」
「ちょっとこれ渡してきます」

「鍵?じゃー俺ここで大丈夫だから」
「早く行ってあげて!ありがとう」

サワナカは鍵を渡しに行った。


その頃俺はと言うと・・・
「なんか、だいぶ曲できたな」
「月の光が…みたいな」
俺は夕方のまだ光る前の月をみて色々イメージしているとスマホがなった。

「もしもし」
「リハビリいったか?」

「ユ、ユウくん、クラスの子が・・・」
と焦った声で話出した。

内容はこんな感じだ。

鍵を渡しに行ったサワナカは

「ヤバいって!女子高生だから」
「今日もちょっと弱いとこ見せたら金渡してきたからな」
「卒業までは、無理のないように回収して、
卒業したらキャバでも入れて引っ張るって」
「まぁ、直で風俗もありかな?ははは」
と年上くんの会話を聞いてしまったようだ。

チャリン

と鍵を落としたサワナカに気付いた奴は
「ナナちゃんっ!?違うっこれは・・」

サワナカはその場から走り去った。

俺は
「えっ!?で、サワナカは?」
「追っかけろっ」


「すいません」
「俺まだ傷が痛んでまともに立てないっス」
と言ったが俺は
「知るかバカっ!」
「とにかくサワナカの病室へ行け!!」
「いや、サワナカを探せ!」
とスマホ越しに怒鳴って切った。


俺は走って病院へ引き返した。



でも遅かった。

サワナカは病室から飛び降りた。


「ユウくん・・すみません」
「俺がすぐに動いてれば・・」

俺は
「お前は悪くない」
「むしろお前には礼を言いたいくらいだ」
「さっきは悪かったな」
と声をかけた。

サワナカの容態はただ祈るしかなかった。

俺は、副会長に連絡をして病院に来てもらう
ことにした。

俺は、副会長を待たずに病院を出て走っていた。
陽が堕ちる夜の始まりに。

怒りってのはある線を越えると感じなくなる。

俺はとにかく走った。

あいつの店へ向かったんだ。

バーンっ!!と扉を蹴り開け中へ入った。

するとそこにはゴウ達もいた。

そうタトゥーの男も。

ゴウは
「ユウ、俺が1番のりだったな」
「おいっ、なんか…」
と俺の肩を掴もうとしたゴウの手を振り払い
カウンターに座る奴のところへ行った。

「おい、おい、ガキが、大勢でなんのようだ?」
周りの奴等が言う。

するとカウンターに座っていた奴がこう言った。

「これは、あの時のダブりくんじゃないの」
「そんな怖い顔してどうしたの?」
「もしかして、絡んだ奴でも見つかった?」

俺は言った。
「金返せ!で、サワナカに2度とかかわるな」

奴は言った。
「ちょっと待って。何か勘違いをしてないか?」

俺は言った。
「勘違い?」
「だったら何故サワナカは飛び降りたんだ?」

ゴウが
「ユウ、飛び降りた?誰が?」

俺はそれに返事せず続けて言った。
「とにかく返せ。そして消えろ」

奴は立ち上がり
「ガキが!ごちゃごちゃとうるせぇんだよ」
「高校生がイキがるな!」
と言ってカウンターにあった瓶を持って
こう言った。
「じゃー俺に勝ったら返してやるよ」
「そしてこの…..」


ドカッ!!
俺は、飛び膝を奴に入れた。

ゴウが
「フォーっ」
と拍手しながら
「ユウ、やるじゃんっ!」
言った。

俺の膝が奴の顎に決まり崩れ堕ちる奴に言った。
「金返せ!そして2度と姿をみせるな」

その空気に奴の周りは唖然としていた。

「じゃー次はこっちだな!?」
とゴウが言った。
「お前、刺したんだってな?」
「刺した手はどっちだ?右か?左か?」

タトゥーの男は
「あんまり調子に乗るなよ」
と言ってナイフを出した。

ゴウは、
「右か?」
「残念だが、当分イケねーなっ!」
と言って右腕に蹴りを入れた。

バキッ!
骨が折れた音がした。

ゴウは床に落ちたナイフを手にとり迷いもなく
折れた腕に刺した。
痛みのあまりひざまづいた奴の腕をつかみ
手のこうを左足で踏みつけ右足で奴の顔面を蹴りあげた。
そしてこう言った。
「それと、頭カチ割ったんだよな?」

さっきの蹴りで歯が唇を貫通し血を流しながら
タトゥー男は
「それは俺じゃない」
とかろうじて聞き取れるトーンで言った。

ゴウは
「関係ねぇーよ、全部お前だ」
と言ってテーブルで殴ろうとした時
ドアが開いた。

「おい、おいっ、かなり盛り上がってじゃん」
と数人の男達が入ってきた。

ゴウはその中の1人の男を見て
「ムラマツっ!」
と叫び手に持っていたテーブルをその男に
投げつけた。

ドカッ!
恐らくムラマツの側近の男が庇い次の瞬間

ゴウが崩れ堕ちた。
ゴウは一瞬でやられた。

その側近の男が
「おいっ、テメーらには用はないんだ」
「あれ?ノビてんじゃん」
「これやったの兄ちゃん達?」

俺は、
「だったら何だよ?」
「てか、何してくれてんだ?」

側近は俺の事なんて相手にせず
「助かったわ!こいつらうちらの組の名前使って
薬や恐喝で遊びまわってたから」

「ムラマツさん、どうします?」

ムラマツは
「つれてけ」
と言って2人を連れて行った。


ムラマツは
「お前ら先出てろ」
そして俺に言った。
「お前、名前は?」
ムラマツは凄い空気を持っている。
正直殺されるかもって思った。

その時だった
「おいっ、警察だ」
「お前ら動くなっ!」
マミさんだった。

このビルの誰かが通報したようだ。

「ユウ、お前らなぜこんなとこにいるんだ?」
と聞かれた。

俺は、ことの全てを話そうとした。

すると
「久しぶりだな」
とムラマツがマミさんに話かけた。

マミさんは
「ムラマツ お前何故ここに?」

「さぁー!?何故でしょう?」
「マミ、相変わらずダラシねぇな」
「じゃーまたな」
とマミさんのネクタイを直して店を出て行った。

俺達はマミさんに助けられたのだ。


「こらぁ〜テメぇぶっ殺す」
気絶していたゴウが目を覚ました。

「ムラマツは?」
「てか、おっさんがどうしているんだ?」

「お前、1回入るか?」
とマミさんはゴウに言った。

俺たちはマミさんのおかげでおとがめなく
終わった。

もし全てを話ても連れて行かれたあいつらは
多分見つからないと思ったし当然の報いだ。

でもゴウが何故ムラマツにたいして向かって
行ったのかは俺は聞かなかった。

ゴウは
「あいつ次あったら殺す!」
「でも、ユウがキレたとこ久々にみれたし」
「今日はヨシとするか」
「じゃーまたなっ」
と言ってゴウたちはその場を去った。

ゴウたちとも別れスマホをみると凄い数の
メッセージと着信が溜まっていた。

その中のひとつ副会長からのメッセージを見て
俺は安心した。

「会長、ナナ大丈夫」
サワナカは無事だった。

他にも色々書いてあったがこの文字が見れて
よかった。

そんな、月が光る夜の途中だった。

2限目Hにつづく
















































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