ダブり〜2限目〜H

数日経った頃。

つい数日前にあんな事があったとは思えない
日々だ。

サワナカの容態も順調に回復し、
あの出来事も少しは気になっていると思うが
吹っ切れた様子だった。
いや、俺たちには見せて無いだけなのかもな。
俺たちもその事には触れるつもりもない。

でも、生きてて良かった。
ほんと人間って簡単には死ねないもんだな。

そんなの当たり前だ。

だってサワナカは死ぬべきでは無かったから。

あの刺された奴もめでたく退院して、
今も懲りずに暴れている。

ゴウは、ムラマツの側近にやられたのが
よっぽど悔しかったのか
「次、会ったらぶっ殺す」と毎日探している。

もちろん角材で殴られた奴なんて元気すぎる
くらいだ。


そして今日はライブだ。
俺たちはいつもの様にライブを楽しんだ。

ほんといつも通りだ。

ライブも終わりみんなで片付けをしていた時に
俺はスマホを見ると副会長から着信があった。

俺は副会長に連絡した。


「あっ、会長!今日ライブいけなくてごめんね」
俺は
「気にするなっ。サワナカと一緒にいてやれよ」
「今、病院だろ?元気か?」
副会長は
「ナナ、かなり絶好調よ!もう退院できるって」
「ほんと凄い回復力」
と嬉しそうに言った。
俺は
「良かったなっ」
と言った。

そしてひとつ思いついた事を副会長に話した。

「そのままリモートにしろ」
「新曲聞かせてやるよ」

副会長は、
「ほんと!?ちょっと待って」
と言ってリモートに切り替えた。
「やった!ナナ、新曲だって」

俺は、イサカにスマホを渡して
「頼むわっ、1曲だけっ」
と言ってメンバーに演奏してもらった。

そして
「見えるか?てか、聞こえるか?」

副会長が頭の上でオッケーサインをだした。


◇sayonara◇

作詞:コニシユウ
作曲:OREnoAOHARU

陽が堕ちる夜の始まり
言い出しそうな「さよなら」

憧れる事は、悪い事じゃない
でも、少し見失っていた

あの日の君は、まだ幼なくて
掛け違えたボタンのように

恋をする事は、悪い事じゃない
でも、少し急いでた

あの日の君は、まだ手探りで
両手で掬った水のように

届きそう・・もう少し・・
触れたいから背伸びしてた

触れたいのに触れられない
泣きたいのに泣けなくて
月が光る夜の途中で
寂しいのに笑ってた

気付いてた・・弱いから・・
夜の海に堕ちそうになる

言いたいのに言えなくて
弱いくせに強がってた
月のような君想いながら
言い出しそうな「さよなら」

忘れたくて忘れられない
笑いたくて信じていた
月が沈む夜の最後(おわり)に
さえぎるように「また明日」


演奏が終わると
拍手しながら
「会長ぉ〜、どうしてこんな曲ができるの?」
と副会長が泣いていた。

俺は
「なぜ、お前は泣いてんだ!?」
と言った。

副会長は
「ねぇ〜ナナぁ」
と言ってサワナカに抱きついた。 

サワナカは
「もう、リョウてばぁ」
と頭を撫でていた。

サワナカは泣いていた?
いや笑っていた?
笑い泣きか?

そんな事はどっちだっていいんだ。

俺は正直、恋だの愛だのわからない。
でも、好きって気持ちであそこまで出来た
サワナカは凄いと思う。

俺はずっと月は自らが輝きたいんじゃないか?
と思っていた。
だけど、月は太陽の光があるから輝けるのでは
ないか?と今は思う。
それに理由はないけど、きっとそうだと思う。

なんだそれ?って言いたくなる事だが
今俺がそう思えるようになったのは

きっと

月のような君に出会えたからだと思う。
その日は月が綺麗に輝く日だった。


その後は?って

サワナカは当然日常生活に戻っている。
バイトも続けてる。
とは言ってもシフトは週2くらいかな。
相変わらず女子達は自分の彼氏の自慢話で競い
あっている。

刺された子は相変わらずゴウ達と暴れている。

ゴウは、やっぱり負けたのが悔しかったのか
「次会ったら、ぶっ殺す」と言って
今日もあいつを探している。

角材で殴られた奴はって?
言うまでもなく今日もピンピンしている。

あの年上くん達はどうなったか知らないが
知る必要もないだろ。
だから、年上くんの後輩に絡んだ奴も
探してない。


そんないつもと変わらないある日の下校時
いつもの様に校庭を歩いていると

「会長、どうしてあの曲【sayonara】なの?」
と副会長が聞いてきた。

俺は
「なんだ?今更?まぁーなんとなく」
「・・・・」
少し考え
「ちょっと前の自分にさよなら的なっ!」
と言った。

副会長は、
「的なっ!かぁ〜?」
「でもほんと会長が書いたと思えないよねっ」
と言った。

「舐めてもらっては困るね」
「俺だから書けるのだよ、副会長さん」
と少し誇った。

すると
「リョウ、会長っ」
サワナカが声をかけてきた。

副会長は
「ナナ、今日バイト休みだよね?」
「だったら今から会長とファミレス行くけど
一緒にいかない?」
とまた勝手に決めた。

俺は
「なぜ?俺がいかないといけないのかね?」
と拒否するとサワナカは
「リョウごめん。今日予定あって」
「だから、2人で楽しんで!また次誘って」
と言って急いで校門を出て行った。

校門の前に1台の車が止まっていた。
その運転席から男が出てきた。

「ナナちゃん今日は何処行こうか?」って

そう、
サワナカは懲りずに別の年上といい感じの様だ。

俺は、副会長に
「お前知ってたか?あれ新しい彼氏か?」
と聞くと、副会長は嬉しそうに
「そう!彼氏的なっ!」
と俺に言った。

「的なっ!かっ」

俺はサワナカに
「じゃーなっ」
と言おうとしたらサワナカは

それをさえぎるように

「また明日!!」

と言って助手席から手を振っていた。

             2限目おわり



















































































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