ダブり〜1限目〜J
イサカからのLINEを確認した。
そこには、1番最初に投稿した奴の情報が
書かれてあった。
例の投稿者
投稿したのは裏垢。裏だから本垢までしか
分からない。もう少し時間があればそいつの
身バレまで完璧だけど、今は本垢までしか
わからない。
投稿した時は中学生で現在は高校生1年。
名前はコウノタカヒロ。
出身中学は南中だから近所だな。
アイコンはコレ↓
と言う内容で画像が添付されていた。
俺は彼女に
「お前ら南中じゃなかったか?」
「コウノタカヒロって知ってるか?」
と言って添付された写真を見せた。
彼女は驚いた。
「この人がその部員です」
「やっぱりなっ そう言う事か」
と俺は話の流れを掴んだ。
俺はイサカに
ビンゴ!!
と返信し、それをゴウに転送した。
こいつを見つけて欲しい
早いな。イサカは。
了解っ!!
そうして事の流れを整理した。
「会長、これって?」
「そう。エトウが黙ってるのをいい事に
奴が種をまいてエトウを悪者に仕向けたんだ」
「最低」
と副会長は彼女の手を握りしめた。
でも、エトウの件はわかったのだが
親父さんの方は?と気になった俺はイサカに
電話して聞いた。
イサカはこう言った。
「親父さんの事に関しては特に何も言って
ないな」
「調べるか?」
俺は甘えて調べてもらう様にした。
「とにかく、ゴウ達の方は時間の問題だ」
「俺たちは、とにかくエトウの家へ行こう」
彼女は、
「ほんと、ありがとうございます」
と俺達に言った。
副会長は
「まだだよ。ありがとうなんて言うの」
「会長は凄いよ。ここまであっと言う間に
調べたんだから」
「でも、この後はあなたにしかできないからね」
「私なんて…」
俯いて言った。
「ただこうしてついて行くしか出来ないから」
その表情は少し悔しいそうな寂しそうな感じ
だった。
俺は、
「お前だって凄いさ。こうやって彼女のフォロー
をしている。俺にそれは出来ない」
「だからついて行く事が出来るなら最後まで
ついててやれ」
と俺は副会長に言った。
俺は心の中でこう思ったから
ただ、ついててやるのは簡単な事かもしれないが
今日会ったばかりの他人にこうやって親身に
なってあげれる方が凄い。
最初に彼女を見つけたのはテマエとシマキ
投稿者を割り出したのはイサカ
その部員を見つけるのはゴウ
俺は、何もやっていない。
むしろ国語と英語が欲しいと思ってたから。
俺は、全然凄くなんかない。
副会長は
「会長は凄いよっ。それとお友達さんたちも」
と俺に言ってくれた。
俺たちはエトウの家へ行った。
インターホンを押すとエトウの母親が出てきた。
「昨日は、ごめんなさいね」
俺は言った。
「こっちこそ2日連続押し掛けてすみません」
「今日もお話させてもらっていいですか?」
母親は
「もちろん。どうぞ」
と言って中へ入れてくれた。
2階へ上がり部屋をノックした。
コンコン
「エトウ!また来た。悪りぃな」
「今日は少し俺の話を聞いてくれ」
扉の向こう側の反応は全くない。
俺は部屋の前に座ろうとすると着信があった。
「エトウ、ちょっと悪りぃな。電話してくるわ」
と言って副会長に繋ぎを頼んだ。
「無理だって」
「大丈夫、お前ならやれる。それと、彼女が
一緒って事はまだ言うなよ」
「とにかく何でもいいからこの場を繋いでくれ」
と言って俺は一旦外へ出た。
電話は、ゴウからだった。
「ユウ、部員くんを見つけた。どうする?
軽くビビらして謝りに行かすか?」
俺は、
「お前はホント暴力でしか解決出来ないのか?」
「とにかく部員と話させてくれないか?」
俺は、ゴウに少し用件を話して代わってもらった
ゴウは、スピーカーにした。
「お前と代われだってよ」
「お前がコウノか?」
「はい」
声が震えていた。
「お前、エトウの事SNSに投稿したんだよな?」
「はい。すみませんでした」
向こうの景色がわからないのだが、部員は
やけに素直だった。
それもそうだよな。なんとなくだが、向こうの
状況は、わかる気がする。
「消せ」
俺はそれを言った。
「何故そんな事した?」
コウノは全て話した。
そして最後に、
「まさかここまで大事になるとは思わなくて
本当に取り返しのつかない事をしたと思ってますすみません すみません」
と泣きながら謝っていた。
俺は、呆れて言葉も出なかった。
ただ、軽はずみに投稿した事で1人の人生が変わりいや今回はエトウと彼女の2人だ。
自分勝手な行動で2人を傷つけ、自分はごく普通の生活をしている。殴る価値もない。
俺は、電話を切りエトウの部屋へ戻った。
「あっ、会長。早く。なんとか話たけど私じゃ」
「悪りぃな。部員から話は聞いた」
「ここからは、俺が話すよ」
と言って副会長と変わった。
「エトウ、お前いい奴なんだな?」
「てか、俺には出来ない事だよ」
「1人の女を助けてヒジやられて悪者にされて」
「ただ、引きこもって」
「自分が全部罪被って」
「優しいじゃなくて、バカだなっ」
「俺には全く真似できないわ」
「ちょっと、会長??」
副会長が止めに入ってきた。
俺は
「いいから、いいから」
「でも、今日で終わりだ」
「コウノが全て話した
そして、その事実をネットへ投稿する」
「次はコウノにお前が味わった苦痛を味わってもらう」
「いや、お前以上にだな。
ヒジだけじゃ済ませない」
「コウノの家族もろとも潰す」
扉の向こうで何か音がした。
俺は話を続けた。
「と、言うくらいムカついた」
「でも、そんな事して何になる?」
「なぁ?」
「エトウ、お前自身このままでいいのか?」
「ただ逃げて、そんなんでいいのか?」
「お前がそんなんじゃ助けられた彼女が前へ進めなんだ」
「なぁ?」
と言って彼女にふった。
彼女は話した。
「エトウくん。ごめんね」
「エトウくん1人に辛い思いさせて」
「私、もう逃げない。全部話す事にする」
「だからエトウくんは昔の様に笑って欲しい」
ガチャ
扉が開いた。
そこには、少し髪が乱れ痩せたエトウがいた。
「エトウくん。ごめんね」
と泣きながら謝ってる彼女にエトウが話した。
「もういいんだ。俺の方こそ守れなくてごめん」
と、言って俺たちの方を見た。
「俺は、ただ彼女が笑っているならそれで
良かったんだ」
「でもこれじゃ俺のせいで
彼女が笑えてないもんね」
「コニシくん、ナカタさんありがとう」
「でも、コウノの事はもう許してやって下さい」
とエトウは言った。
「アツシ」
と母親が階段の下から呼び、上がってきた。
「かぁさん、悪かったよ」
エトウは部屋から出てきた。
俺はゴウに連絡して部員を解放するように言った。投稿した内容も削除して、部員はエトウに対する謝罪を後日しに来たらしい。
エトウの母親が俺たちにケーキとコーヒーを
出してくれた。
彼女がエトウに
「口についてる」
エトウは恥ずかしいそうにそのクリームを取った
母親は、笑ってエトウの昔話を始めた。
「もういいよぉ、そんな話するなよ」
って笑いながら。
俺は彼女が言ってた
「笑ってて欲しい」
って言った意味がわかる様な気がした。
そんな雰囲気の中俺は、エトウと母親に
親父さんの事を聞いた。
「親父さんの会社って、
エトウの件が関係あるのか?」
すると母親が
「今回の事とは関係ないの」
「今、不景気でしょ?」
「そんな事で業績も下がったいたの」
「それにかぶさるように主人の会社の社員が
横領していて。そんな中でも社員の給料とか
支払い。そう言う事で少し疲れてたと思う」
「あの人は、ほんと子供が好きだったから」
「そんな時に、ある会社が主人の会社を買いたい
と営業があったの」
「株式会社レイズ 投資会社」
「でも主人は、親の代から引き継いだ会社を
手離さないと言って断ったの」
「その時位から得意先から仕事が減ってきて
今の様な状態」
「それでも主人は今耐えれば立ち直ると言って
毎日得意先や銀行周りをしてるの」
「そっか、大人って大変なんだな」
「お節介かもしれないが、俺も知り合いに聞いて
みるよ。それで仕事に繋がるといいしな」
と言ってケーキを食べた。
「コニシくん、ナカタさん、本当にありがとう」
「正直言って高校へは行きたかったんだ」
「でも、ネットで拡散された以上、高校にも同じ中学の奴らも居てるし、またこんな事になるのかって不安があったんだ」
副会長は
「エトウくん。大丈夫だよっ!」
「例え学校で言われたって私たちは友達だし
クラスメイトだから」
「このクラスはみんなエトウくんの味方だよ」
「ねっ、会長!?」
と笑顔で話した。
「ほんと、ありがとう」
とエトウは口にクリームをつけたまま言った。
1限目Kに続く