ダブり〜3限目〜A
コツ コツ
夜道をヒールの音を鳴らして仕事終わりの
モトキタは帰宅していた。
コツ コツ
モトキタは誰かにつけられるような気がした。
コツ コツ コツ コツ
少しスピードを上げ歩く。
後ろからだんだんこちらへ近づいてくる気配に
モトキタはさらに足速に前へ進む。
その時、突然肩をつかまれた。
「キャーァっ」
と叫んだ。
目を閉じたまま無意識に鞄で殴った。
1発、2発、また1発と鞄を振り抵抗した。
薄く目を開き見ると目の前に男がいる事は
確かだ。
モトキタは、ただ鞄で抵抗する事しか出来な
かった。
すると目の前の男は
「イタっ!おい、おい、まてまてって、俺だよ」
モトキタは振り回していた鞄を止めて
ゆっくりと目を開けた。
目を開けるとそこにゴウがいた。
モトキタはホッした表情で
「オカウエくん?何よぉぉもう!?」
「本当びっくりさせないでよ!」
ゴウは
「びっくりさせないでよ〜って!!こっちこそ
勘弁してくれよ、さっきから呼んでんのによっ!
シカトするから!てか、何ビビってんだ?」
モトキタは
「ごめんね。いきなりだからびっくりしたよ」
「いやいや後ろから急に掴まれたら普通びっくりするでしょ?」
ゴウは
「びっくりはするかもだけど・・」
「振り向きざまに殴るか?普通それで」
と言って鞄を指さした。
モトキタは鞄をそっと後ろへまわして
「あっ、何?血出てるじゃん!?大丈夫?
私、そんなに強く叩いたかな?」
ゴウは傷口を抑えながら
「あっ、これか!?」
「いや、これはさっきケンカした時の血だわ」
モトキタはさっき後ろへ回した鞄を前へ戻し
中身を探りながらゴウに言った。
「もぉーまたケンカしたの?だめでしょ!!」
「ほんと退学になるよ」
「それにしても凄い怪我・・鞄にないかぁ・・」
どうやら鞄に絆創膏的なものが無かったようだ。
「これくらい毎回だから大丈夫だよ」
とゴウが言うとモトキタは
「家すぐそこだからちょっと寄りなさい。
時間あるでしょ?」
と指を差しながら言った。
そう言われたゴウは
「こんな傷、大した事ねぇよ!」
「てかなんだ?誘ってんのか?」
と言うゴウの言葉にモトキタは
「何言ってんの?そんな訳ないでしょ!」
「それより大した事ないじゃないでしょ?」
「その傷、消毒しないとバイ菌入ったらどうするの?」
としっかりと教師をしていた。
そんな教師と生徒のやり取りが行われていたころ
俺はバンドのメンバー達と、とある店でポテトやバーガー的な物を食べながら、とある話で盛り上がっていた。
「おいおい見ろってこれっ!!」
「女教師 夜の課外授業だってよ?」
「ウエイお前はこう言うの好きだろ??」
とにやにやしながらタイケが言った。
ウエイは
「女教師??てか俺よりナカヒロじゃねぇ?」
「俺は年上はパスだわ。てかイサカもおねぇさん好きだろ?」
ナカヒロは
「いいよなぁ〜課外授業!!なぁ、イサカ?」
イサカはさっき撮った動画を編集しながら
「夜の授業?そんなもんある訳ねぇだろ?」
「お前らマジでそんな事がワンチャンあるとか
思ってんのか?」
タイケは
「あんたは、ほんと夢がねぇなぁぁ」
「あるとかないとか、そんな事じゃないのよ」
ねっ!て共感を求める様に他の奴らに振る舞った
ナカヒロが
「こいつ、実はムッツリだかんな!」
とイサカを攻撃し始めた。
イサカは編集に夢中だから、ナカヒロを無視した
するとウエイが
「ユウは?女教師とか好きだろ?」
「てか、お前の担任若いんじゃなかった?」
俺は
「だなぁぁ。言われてみりゃ若いなぁ」
「まぁ俺達よりちょっと年上だしな」
「アリっちゃありかもな」
するとタイケが
「おい、おい、違うでしょが!?」
「あとウエイくん」
何か話出しそうなタイケにウエイは
「なに?」
と聞いた。
タイケは話出した。
「このお方は、年下好きのロリコンですから!」「だから、夜の課外授業にはご興味無いかと」
と言うとウエイは
「あっ!」
と何か気付いたかの様に
「そうでございましたな!」
「これはこれは大変失礼致しました」
「副会長さんがあなた様にはおられましたな」
俺は飲んでいたドリンクを置いて
「はぁ?待て待て待て!」
こうなると止められない。
ウエイとタイケは
「いやいや、隠す事はないでございますよ」
「ロリータ伯爵、副会長様とは今どこまで進んでおられるのでございますか?」
俺は言った。
「なんだ!?そのロリータ伯爵って」
「言っとくがあいつとはどこにも進んどらん」
するとタイケが
「JKと夜のテスト勉強!的なキャッチは
どうですか?会長さん」
と言うとそれに続くように
「いやいや、白昼堂々と起立・礼!とかっ?」
「いや、なら制服快調に青春白書とか」
「それ!!サイコー!青は性だろ?」
「はぁ はぁっ うける」
「会長だけに快調って言う」
こんな話を大声で笑ながら、周りの目を気にせずさらに話した。
「ベタ、ベタだなっ」
「てか、うちらのバンドもアオハルから性春に
変えるか!?案外、バズるかもよ!?」
と俺をイジってきた。
俺は、笑い転げてるみんなに
「何が快調に性春だ!」
「バカだろ?ある訳ねぇだろ!?」
「言っておきますが、俺は将来この子と結婚すんだからよろしくっ!!」
と言って店の壁に貼ってあるポスターに
指さした。みんな指の先を見た。
タイケは
「こいつまだ言ってんぞ!マジやべぇよ」
「それこそワンチャンねぇーわっ」
「なぁ??」
と編集の手を止めてたイサカに言った。
するとイサカは
「もしかしたらワンチャンあるかもよ!」
すると
「そこは、あるんかいっ!!」
と、しっかり高校生をして盛り上がっていた。
するとナカヒロが窓の外を指差して
「おい、ちょっと、てか、あれゴウじゃねぇ?」
俺たちも窓の外を見て
「だなぁー。間違いない。あれはゴウだな!」
「あいつ、こんなとこで何やってんだ?」
俺はどうせまた喧嘩でもしてたんだろと
思っていた。
「ちょ、ちょっ、あいつ、女と歩いてないか?」
俺は驚きながら
「えっ!?どれ?どれ?」
と探すと、ウエイが
「だな。女といるな」
よく見てみた俺は
「女だな!!何故?女とゴウが・・・」
「あれ・・・」
「おいっ!てか、あれモトキタだわ!」
するとイサカが
「モトキタって、ユウの担任の?」
俺は
「そうそう、担任の・・・」
「間違いないっ。100%モトキタだわ」
「って、なぜ?ゴウとモトキタが?」
タイケがさっき見てた雑誌を指差して
「セイシュンっていいもんですね」
と微笑ましい顔で言ったが俺たちは
「ない、ない、ない」
と身振り手振りを合わせて言った。
俺は思った。
男ってなぜこう言う話が好きなんだ。
別にいいじゃねか?ほっといてやろうよ!
そうだよ!
別にゴウとモトキタが一緒にいてもいいじゃんか
でも、こう言うのんが好きなんだよな。
するとナカヒロが
「ちょっと後つける?」
と恐らく皆が言いたかった事を言った。
俺たち5人はとある店を出て、とある所へ向かうゴウとモトキタの後をつける事にした。
モトキタは、俺の担任になる前、
ゴウの2回目の1年の時の担任だ。
そもそも、最初の1年の時の担任はカミイって
言う、生活指導のセンコーだった。
カミイはゴウの事が恐らく嫌いで、いや完全に
嫌いで退学にさせる気満々だった。
ゴウ自身も正直辞める気満々だったが、
1年をダブった時の担任のモトキタがゴウを
進級させる為に気にかけていた。
「アイツら何話してる?」
俺は言った。
距離があるせいか2人が何を話していたのか
俺たちはわからなかった。
その頃2人は
「オカウエくん、2年どう?学校楽しい?」
とモトキタがゴウに聞いた。
ゴウは、
「まぁ、今はツレにも恵まれて何かと楽しいよ」
ゴウからそんな返しがきたモトキタは
「そっか、よかった」
と嬉しそうに答えた後に
「でも問題起こして退学にならないように!」
ゴウは、
「はい、はい」
と軽く流した後、話題を変えた。
「ところでユウはどうだ?馴染んでるか?」
それを聞いたモトキタは
「コニシくん?あの子は大丈夫よ!」
「みんなも私もコニシくんを頼りにしてるよ」
それを聞いたゴウは
「そっか、それは良かったよ」
「それにしてもあいつが会長だもんな?笑うわ」
「クラスも終わったな」
と言ったゴウに対してモトキタは
「どうして?」
「コニシくんにはぴったりだと思うけどね」
「この前も、クラスメイトを学校に来る様に
説得してくれたんだよ」
と言うとゴウは
「あぁ〜っ、アレな」
と、どうやら覚えていたようだ。
そしてモトキタは
「ねぇ、オカウエくんコニシくんと幼馴染み
なんだよね?」
ゴウは
「ですねー、アイツとは結構長いなぁ」
「小学校からの付き合いだからな」
と言うと
「へぇーそうなんだ。長いねぇ」
「コニシくんは普段はあんな感じだけど、いざと
なった時はもの凄く頼りになるよ」
「オカウエくんもそう思ってるからコニシくんとこんなにも一緒にいるんでしょ?」
と言った。
ゴウは少し間をあけて
「ユウがなぁ〜?まぁ〜それもそうかもな」
と共通の話をしながら歩いていた。
俺たちは遠くから、たまに聞こえる笑い声くらいしか拾えなかった。
モトキタは目の前のマンションに指をさして
「あっ、家そこだから」
と2人はマンションに入っていった。
俺たちはマンション前の駐車場でゴウが出て
くるのを待つ事にした。
ナカヒロが
「入ったな!?2人楽しそうだったな!」
「これは、確定でしょ?」
ウエイが
「確定っしょっ!!」
するとタイケが
「あっ、いい事思いついたぞっ!」
俺たちは聞いた。
「おっ、なんだ?いい事って?」
タイケは、
「ユウ、ムービー撮って脅せって!」
「進級させろって」
俺は
「はぁ!?なんじゃそれ!?」
他の奴等は
「すげぇー!それいいなぁ!!」
「ついでに飛び級で卒業させろで
いいんじゃないか?」
とか言って盛り上がっていた。
てか、実際生徒が教師の家へ行くってだけで
もの凄いスクープになるこのご時世だが
俺たちは別にそこまで思わなかった。
もし、2人がそう言う関係だとしてもいいと
思うし、その方がちょっと面白いし。
小1時間程度かな、部屋の扉が開いた。
「先生、わりぃな!」
イサカが
「しぃーっ、出てきた」
と言った。
モトキタは
「どういたしまして、もうケンカだめだよ」
「じゃーまた明日学校でね」
ゴウは
「押忍っ!」
と言って廊下を歩き出した。
すると、ゴウは立ち止まりこう言った。
「あっ、あとユウを頼むわなっ!」
モトキタは
「押忍っ!頼まれた」
と言って手を振り玄関の扉を閉めた。
俺は
「なんか、最後いい雰囲気だったなぁ」
タイケが
「最後何言ってたんだ?」
イサカが
「何かを、【頼んだっ】って言ってたような」
ナカヒロが
「それって、このことは内緒って事だろっ!」
まさか俺の事を頼んでるとは知らずに
「捕まえて、全部聞くぜっ」
と言った。
マンションからゴウが出てきた。
俺たちは、いっせいにゴウの元へ向かった。
ウエイがムービーをとりながら
ナカヒロが写メを撮り
俺は、プリントを丸めてマイクの様にして
「オカウエさん!」
「オカウエゴウさんですよね?」
と聞いた。
ゴウは
「ビックリしたっ!お前らどうして?」
「てか、いつから?」
俺は
「オカウエさん、こんなところで何をしてたの
ですか?」
ゴウは
「何を?って!てか、いつから?」
「ってか、久しぶりだな」
と俺以外の奴らに挨拶した。
俺はことの成り行きを話した。
するとゴウも事の成り行きを話した。
「しょーもなっ!!」
「本当か?何にもなしか?」
俺たちは言った。
ゴウは
「ってか、お前らこそ、コソコソ勝手に着いて
きやがってよ」
「しょーもなっ!ってなんだよ」
タイケが言った。
「あぁ〜しょうもなっ。話聞いてマキに電話で
話しよって思ってたのに」
俺は言った。
「ササマキにはやめとけ!」
「一瞬で拡散されて、ゴウもモトキタも学校に
居れなくなる」
ウエイは
「だな!もの凄くデカい話になるな」
「ササマキの拡散力は半端ないからな」
ゴウもそれには納得していた。
するとゴウは、
「でも、そうでもないかもよ」
「案外退屈しのぎにはなるかもよ」
と言って
「お前ら時間あるだろ?そこで少し話そうぜ」
「こうやってみんなと話すのは久々だしな」
と言ってゴウはスマホを取り出しテマエかシマキかわからないが電話をかけた。
「わりぃ!ちょっとユウ達とバッタり会って
ちょっと話してから向かうわ」
俺たちは近くの公園で話をする事にした。
俺は思った。
話の内容なんて何でもいい。
ただ、久しぶりにみんなで話せるなら。
3限目Bへつづく