あなたの美しい精神を守りたいと思う
理不尽に甘受したら、終了
あなたの純粋な衝動は一瞬で弾かれる。これを「理不尽」という。学校、会社、そして社会全体のためを思ったピュアな情熱は、冷徹にはね返される。必ずしも正論が通じるわけでないことを知る。本来尊ぶべき言動が所属するコミュニティのルールから外れていれば、直ちに排除される。当人にとってみれば、実にショッキングなことだ。
優しい人生の先輩たちはこう慰めてくれる。
「これが社会だから」と。
初めはそのアドバイスに違和感を覚えるが、とめどない理不尽の侵入を体内に許していくうちに、すっぽりと許容するようになっていく。
「周りもそうしているのだから、自分もそうした方が楽なんじゃないか。それが協調性や社会性かもしれない。」
そうして虚構を真理のように自分の精神に浸透させていく。
あなたの美しく崇高だった精神の川はゆっくりと着実に汚染されていく。気づけば、不気味な漆黒の液体で満たされてしまったようだ。
公害をまき散らすモラリスト
理不尽という汚染物質を製造するのはモラリストである。彼らはモラルを何より大事にする。彼らのアイデンティティーはルールに従順であることのみで保たれる。しかし、
モラルとは何だ?ルールとは何だ?
極めてあやふやで簡単に揺らぐ基準に宗教的な信仰心を抱く。周囲の言動に過敏になり、「自分がどう思うか」でなく、「周りがどう動いているか」を行動の主軸とする。そのためはみ出す者には容赦なく糾弾する。彼らのアイデンティティーが侵されるので、そこに投入するエネルギーはとてつもない。彼らの精神の川は一面真っ黒であった。
黒いルサンチマンに抗う人こそ真の強者
モラリストたちは「自らの精神と激しく向き合い、苦悩し、自己を創り出すこと」を放棄している。自分たちの中だけで留まってくれたらいい。しかし、彼らは周囲に多大なる影響を与えてしまう。近くの美しい川を理不尽の有害物質で汚染しようとする。その行動の源泉には「美しい川に対するルサンチマン」が影響している。自分よりも他の人の美しさが目につき、美しくなることをすでに諦めているから、せめて自分と同じ黒色に塗り潰そうとするのだ。そのための強力な方法が「モラルという枠組みに他者を押し込めること」である。自分の根源的な欲求に従い、それを少しずつ実現している人に対して、彼らは強いルサンチマンを抱く。
ニーチェは「人々は弱者を正当化しようとしている」と言ったが、ここでの弱者とは「モラリストと理不尽に抵抗できない人たち」であろう。
美しい異端はモラリストたちのルサンチマンの集合体を真正面から食らい、暗黒落ちしてしまう。どんな色でも少しの黒は塗りつぶすことができるほど他色への影響力は凄まじい。
その黒いルサンチマンに抗い、自分の美しい色を保持できる人こそ、真の強者である。
時にあなたは猛烈に怒れるか?
どのようにモラリストと付き合っていくべきか。
条件付きでやり過ごすしかない。その条件とはあなたのアイデンティティーに関わること。あなたの川を汚そうとするならば徹底的に戦い、怒るべきだ。専守防衛で臨み、それ以外のことはやりすごす。間違っても他者の本質を変えようと思ってはならない。大きな反撃をくらうだろう。
ルーク・スカイウォーカーは父であるベイダー卿をダークサイドから救おうとするが、銀河帝国の支配と恐怖の体現者であるダースベーダーは非情にも息子の片腕を切り落とした。かつての心を完全に失われてしまったかに思えたが、最後にはルークとの邂逅により、シスを裏切ってルークを助けた。これはジョージルーカスの作ったフィクションであり、現実は片腕を切り落とされるだけだ。
ただアイデンティティーを侵された場合は徹底して戦わなければならない。
中学校2年の時、普段関わりのなかった不良のAと同じクラスになった。そしてAは私にちょっかいをかけるようになった。運動も勉強もそれなりにできた私が鼻についたのだろう。夕方の放課後の渡り廊下。Aは私の野球のグローブを雑に扱い、私の学生服に唾をかけた。そのとき私の中の何かが弾けた。次の瞬間Aはうずくまって倒れ、私の拳には血がついていた。大切なものを汚されたことに怒りを覚えたが、それ以上に唾をかけられたが私のアイデンティティーがひどく傷ついたと思い、爆発してしまった。
基本的にそれ以外のことはやりすごせばいい。
会社員のとき、生産性を高めるために無駄なことを削ろうと同僚に提案した。私のロジックに抜け漏れがないか、相手の納得する順序で話せているかに注意した。しかし同僚は「ルールだから変えられない」という。
「そのルールがあることでどう会社の利益に貢献しているのか?ムダなことを省けば、その分優先度の高い仕事に時間とお金を割ける。そして会社の売り上げが上がれば、あなたの賞与も上がる。ルールを守ることを目的とせず、環境に応じて柔軟に変えればいいのではないか。」
「長年社内でこのルールを守ってきた。そのルールを変えると嫌な人もいる」
「ルールだから」「変えるとイヤな人がいる」というのは私の提案に適切に返答しておらず、思考停止に陥っている。ただこの体験は別に私の領域を侵すものではなかった。粛々とやり過ごせばいいのだ。
自分の衝動のみに従う
亡くなった私の祖母はいつも言っていた。
「出る杭は打たれる。普通が1番。」
これは周りの調子に合わせて自分を位置づけるという意味である。同時に自分の根源的な欲求や衝動を押し殺せともいえる。祖母は間違いなく私のことを思って、そう言ってくれたはずである。しかし、大好きだった祖母からの言葉も真理ではなかった。
先日本屋で「天才を殺す凡人」という題が目に入った。
ここでの天才は美しい精神を持った異端の人。凡人は弱者を正当化するモラリスト。私たち天才は大多数の凡人のルサンチマンで殺されないよう、生き抜く必要がある。
私はその本を1ページも読んでいなかった。
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