【週末投稿】つれづれ有用植物#252(アオイ科アオギリ属:アオギリ)
中国南部や東南アジアが原産と言われ、暖かい地域の沿岸地に生えます。
日本へは極めて古くに渡来し、沖縄、伊豆半島や紀伊半島、四国、九州の沿岸地に野生化しているそうです。今では、多くが街路樹や庭木などにして植えられています。
和名の由来は、キリ科のキリ(桐)が「白桐」と呼ぶのに対して、
幹肌が青緑色で、大きな葉がつく様子がキリに似ることから名付けられました。
落葉広葉樹で樹高は 10 ~ 20m になり、幹は直立します。幹や枝の樹皮は若いころは緑色で滑らかなのが特徴ですが、生長と共に灰褐色を帯びて縦に浅い筋が入るようになります。
花期は初夏から夏(5 ~ 7月)で、枝先に黄白色の雄花と赤色の雌花が混じり、5弁の小花を群生させます。
果実は秋(9 - 10月ころ)に熟して、それぞれ1片の長さが 7 ~ 10cm ほどある舟の形のような裂片になります。その葉状の舟形片の縁辺に、まだ緑色のエンドウマメ(グリーンピース)くらいの小球状の種子を1 - 5個ほど付けます。種子は球形で径 4 ~ 6mmくらい。のちに黄褐色から茶色に変化します。
さやが割れて縁に丸い種子を付けた実を見ることができます。
船形の葉のような果実の裂片ごと風で運ばれることから、「空飛ぶボート」などと呼ばれているそうです。
アオギリが庭木や街路樹によく使われるのは、その耐火性にあります。
過去の震災においても火災の延焼を食い止めた例もたくさん有った様です。
■30秒植物紹介【青桐(アオギリ)の実】
樹木医の植物紹介 様
樹皮の繊維は強健で戦争中は樹皮繊維で麻の代用として縄やムシロをつくったり、樹皮の搾り汁を抜け毛予防に用いたそうです。
真っすぐな幹は建材などに用いられ、材は軽く柔らかいため楽器や下駄などに利用されました。
種子は古くは食用にされました。タンパク質や脂肪を多く含むため、種子を炒ってそのままおやつとして食べたり、カフェインを含むので太平洋戦争中は炒ってコーヒーの代用品にしたそうです。また梧桐子(ごどうし)と呼ばれる生薬として用いられ、胃痛、下痢の薬効作用があるそうです。
■アオギリコーヒーに初挑戦!(1分弱)
ミューズの里 TV 様
葉は浮腫、高血圧、コレステロールの低下などの民間薬として用いられています。初夏に採って洗い、陰干ししたものを 10 ~ 15g を水 500cc で煎じ、服用する用法が知られています。
広島の「被爆青桐」が有名です。
爆心地から約1.3km 地点は爆心地方向にさえぎるものがなかったことから、アオギリは熱線と爆風をまともに受け、枝葉は全てなくなり、幹は爆心側の半分が焼けたそうです。枯れ木同然だったこの木は、翌年の春になって芽吹き、その後中国郵政局の建替えに伴い、平和記念公園に移植されました。
そんな植物の生命力が、被爆と敗戦の混乱の中で虚脱状態にあった人々に生きる勇気を与えました。以下は「アオギリの語り部」被爆者の故 沼田鈴子さんに関する記事です。
■“アオギリの語り部” 沼田鈴子さん 遺品が紡ぐ思いと願い(8分弱)
RCC NEWS DIG Powered by JNN 様
本タイトルのヘッド写真は「被爆アオギリ」の実生苗である「2世」株です。
■参考
映画『アオギリにたくして』日本全国自主上映募集中〜!
広島公式観光サイト 被爆したアオギリ