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【週末投稿】つれづれ有用植物#47(アオイ科トロロアオイ属:トロロアオイ)

オクラに似た花を咲かせる、トロロアオイ。
この植物の根から採れる粘液を「ネリ」と呼び、カマボコやソバのつなぎに利用したり、和紙を作るうえで、重要な粘着剤だ。

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和紙作成に関しては、コウゾ、ミツマタなどの樹皮繊維を均一に分散させるための添加剤として利用されています。

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8月から9月に開花し、花の色は淡黄からやや白に近く、濃紫色の模様を花びら中心に付けるのが特徴です。花は綿花に似た形状をしており、花弁は5つあります。花の大きさは10から20センチで、同属のオクラの倍近いです。
朝に咲いて夕方にしぼみ、夜になると地面に落ちます。花びらは横の方向を向いて咲くため、側近盞花(そっきんさんか)とも呼ばれます。

コウゾ

【和紙の原料の一つ、コウゾ】

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【和紙の原料、コウゾ皮の加工例】

実は、昨年に衝撃的なニュースが飛び込んできた。

参考:「手すき業界に大打撃。トロロアオイ農家が生産中止へ」
朝日新聞DIGITAL 2019年6月9日 16時30分

トロロアオイの生産は機械化が難しく、手間費がが掛かり、農家の高齢化もあって、採算が合わないとの事であった。

抽出したネリは保存がきかず、腐りやすいため近年までは、冬の気温が低い時期に紙漉きが行われていました。
しかし現在では、機械抄き和紙や手すき和紙でも、古来の方法でネリを使用しているところは少なくなり、ポリアクリルアミドなどの化学薬品を合成ネリとして使用しているところが増えています。

古来の製法にこだわる事と、代替薬品を使う事のメリット・デメリットを考えると、難しい問題ですね。

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【トロロアオイ】

オクラと異なり、実は不味で食用に適しませんが、紙漉きのためにトロロアオイを栽培する地域では、ネリには不要な花を食用に供することもあります。
エディブル・フラワーとして家庭菜園などで栽培されることもあり、花弁を生のままサラダにしたり、天婦羅、湯がいて三杯酢などで酢の物として食べると美味しいです。特有のぬめりがあり美味であるが、一日花であるため市場にはほとんど流通しません。

一般園芸家の趣味として、トロロアオイが細々と存続される事が、今後の道なのかなと思いました。皆様はどのようにお考えになりますでしょうか?



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