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読書感想文『なんで家族を続けるの?』 感想①生物学的に?


読書感想文『なんで家族を続けるの?』 感想⓪きっかけ つづき

「まさにそれ」と思う箇所が多過ぎたのだが、
まずは本書を読もうとしたきっかけの命題:
家族は生物として種の保存のために続けるべきものなの?
に対して、ヒントをくれた言葉たちを整したい

まさにそれ①結婚制度と性行動は切り離して考える

  • 遺伝子レベルで貞淑型と不倫型は決まっていて、もともと一夫一婦制の結婚には向いていないタイプ(=不倫型)が人口の半数 (48頁)

まさにそれ②子育てと生殖行動を別に考える

  • アホウドリの3分の1はレズビアン。生殖活動だけオスとし、子育てはメス同士で行う(20頁)

  • 人間の身体が生殖に向いているのは二十代だが脳が子育てに適した状態になるのは四十代ぐらいだということを示すデータがある(98頁)

  • 米フィラデルフィアでは人口子宮でヒツジの赤ちゃんが発育しているという事例が既にある。いずれヒトの人工子宮も実用化され、テクノロジーを活用して母親がお腹を痛めない出産も実現する可能性がある(100頁)

まさにそれ③タブーの概念、社会通念は時代によって大きく変わる

  • 一夫一婦性の貞操観念も明治以降の西洋化で持ち込まれた150年程度の歴史(67頁)

  • 結婚制度は性、生殖、扶養、経済的生産、保護、教育、宗教、娯楽、社会的地位の付与等 複数の機能を持つが、それこそが社会の変化に沿って変容し続ける存在であることを裏打ちしている(162頁)

まさにそれ④ 結婚制度に疑問符あるけど あえて抗うのもね というスタンス

  • 今の社会通念に縛られて「普通の家族じゃない」ことに悩む必要なし
    さほど合理的な根拠のないものなのだから。(165頁)

  • 一緒にいて楽しい人と結ばれたいだけなら、結婚という法的根拠は不要。しかし社会通念に抗って糾弾の矢を浴びようとも思ってないだけ。(165-166頁)

まさにそれ まとめ

他にも頷くところは複数あったのだが 読み始めた動機に対する答えをくれた箇所に絞ると上記の4点になった。

結婚制度は性行動とも生殖活動とも切り離して考えてよい!
今の社会で生きてく上では便利な部分も多いから、抗う必要ない限り活用するスタンスでいこうと思う。


生殖活動について、ヒツジの人口子宮の例は特に新しい視点がひらけた気がする。

別にそれを推奨すべきだとか、生命の神秘を軽んじているという立場では決してないが
中野信子さんは本書の中で、理性に重きを置く私たち人間が、理性を働かなくさせるという有性生殖の仕組みを何万年も保っていることが不思議だと述べているが(99頁)、この背反こそが他の生物と人間との違いを生む部分。
そして理性偏重と種の保存を両立する唯一の手段がテクノロジーなのではないか。

少なくとも今の一夫一婦制度を前提とした結婚制度の中で
人間が個人の自由や尊厳を守りながら子孫繁栄も同時に成立させようとすると

  • 生物としては適齢期である20代に子供を産むことで育児に必要な脳は未発達な状態というミスマッチが起こり心的負荷が大きい。

  • 脳の状態が成熟した40代は、子育ては落ち着いて取り組めても身体への負担は大きい。

  • 家族によっては貞淑型同士のカップルとは限らないため、不倫問題までストレスとしてのしかかってくる。

などの問題が起こる可能性をはらんでおり、『子を産み育てる条件としては理想的とはいいにくい』(167頁)


人口子宮というのはラディカルに聞こえるが、
結婚制度の不具合という根底の問題をしっかりと捉えた上での解決策としては

  • 女性が出産適齢期を気にせず子を育てることができる

  • 生殖と子育てを分離できるから、生殖パートナーと別に、子育てには子育てに適したパートナーを選択できる

などのメリットがあるだろう


フランスのように婚外子が60%近く、結婚と生殖が必ずしも一致しないことが前提となるだけで、出生率が上がることはデータが証明している

人口減ストップに本気で取り組むなら、結婚制度を大前提として、その枠組みの中だけで打てる手当(婚活支援,不妊治療助成etc.)にとどまるよりは、はるかに的を得た策だと思った。

愛し合った二人が
性行為を行った結果
種の保存が実現する

という成立しない方程式をすてて
それぞれを別物として捉え、アプローチしていくという考え方。

300年後くらいの未来にもしタイムスリップできたら
こんな社会があたりまえになっているのかも。

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