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「寿司折に込められたこと」より
4年前に、Kindle出版に「青春の絆リニューアル版」を発表しました。その中の13章の一部から抜粋しました。
物事の覚え方は二つある。とにかく早く覚えて手直しながら覚えてゆく。もう一つは、じっくりと時間をかけて覚えてゆく方法。
時には、技先行で大切にすべきことを忘れ過ちさえもある。
築地宝寿司の親方の過ちを小久保先生が本人の力で修正させた。また、永遠の信頼関係が築きあがった。
(有料級サンプル全編を下記に添付)
築地宝寿司の親方は文芸部の先輩です。
「OBの一人として、話をしてよろしいでしょうか」と築地宝寿司の親方が言った。
「でしゃばったことばかりですみません。学生の時、先生にお世話になった話をさせて下さい。
わたしたちは、団塊ジュニアの世代です。その当時、新しい大学が出来た。第二次マンモス化が行われた時代です。大学のシステムも、どんどんIT化された時代です。
学生側にも、IT化が進んでいた。いわゆる「コピぺ」が蔓延しはじめた時代でした。
教師の中には、そのことを深追いせずに厳しく評価して終わる方も居られました。私は、パソコンが得意で、お礼を貰いながらレポートの代書をしました。
そのことが、小久保先生に知れました。先生は、学校を辞めることを勧めました。4年生の冬でした。
就職も決まっていました。また、過去のことも一言も触れませんでした。
『これから、どうゆう生き方をするのかを考えた方が良い。』といった。
また、『相談には、とことんのる』と言った。
1週間、悩んだ。
先生に会うことにした。頭は空っぽだった。ですから、先生に会うこと以外に、何も思い浮かばなかった。先生の研修室に伺った。
「どうだい、元気ですごしているか」と小久保先生が言った。
「はい、それが」
「それが」
「あのう」
「なんだ」
「反省しました」
「反省、当たり前だ。でも、反省しろとは言っていない。そこは、水に流せ。
流したあとで、君がどう生きるかの相談にのると言っただけだ。で、どうする」
「学校で学び残したことを悔いが残らぬように学びます」と言った。
先生はニコニコして『それが良い、卒論の採点は厳しいぞ』
世知に長け、よっぽど好い気で過ごした自分を棄て、一所懸命に生きる決意をした。
卒業論文を提出した。題名は『信仰について』です。私は、手書で提出しました。採点は、『秀』であった。嬉しかった。
皆さん、私が更正できたという話ではありません。勘違いしないで下さい。
小久保先生は、教え子を真正面から指導する方であるということを皆さんにお伝えしたかったのです。人生の師匠です」と話が終った。
「君の努力だよ。私は、お節介なだけだ」と小久保先生が照れた。
晩秋と学び舎に相応しい講話であった。自分の恥を持ち出し、小久保先生の魅力を話してくれた親方に感謝した。
かわせみ💎
Kindleでは、翡翠(かわせみ)です。
また、正編はKindle Unlimitedで読めます。