【読書記録】御伽の国のみくる
ごきげんよう。ゆきです。
育児に追われて読書記録がなかなか更新できない中、死んでも読み切らねばという思いで読了したのがこちら、『御伽の国のみくる』。取り急ぎ、こちらの感想を綴っていきます。
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表紙でわかる通り、これまで何度か私の記事に登場しているBiSHのモモコグミカンパニーさんの処女作。ついに小説家デビューということで、初版をゲットした。なんとこの初版、ハガキがついており、5月末までに感想を書いて投函するとモモコグミカンパニーさんご本人から返信が来るというプレミアっぷり。誰?この企画考えたの。お中元贈ります。
というわけで、死んでも読み切らねばというのはまさにこの特典のためだったのだが、寝る時間を惜しんででも読んでやるという強い想いとは裏腹に一瞬で読了した。ページを捲る手が止められなかったのだ。
アイドルと銘打ってデビューしたモモコさんが、アイドルになれなかった少女を描く。アイドルを目指していた事もないし、オーディションに落ちた事もないモモコさんが何故ここまでリアルな友美の人生を綴れるのか。ファンの欲目でも何でもなく、はちゃめちゃに文章が、物語が素晴らしくて舌を巻いた。
よくある『本好きな芸能人が作家デビューしてみた』感は全くなく、とても面白い純文学。駆け抜けるように読了したが、そこには友美の不器用さもどん臭さも絶望も希望も憎悪もぎっしりと詰まっていて、1人の人間の人生を追体験したくらいの満足感である。
ただつらつらと日々を記しているようで、終盤にかけて怒涛の展開が起き、手に滲む汗を感じながら本を閉じた。この本の全ての事象が(こうならなければいいな)という悪い予感の方へ悉く進んでいく。クズ男はクズを極め、性悪女は自分を貫き、味方であったはずの同僚は敵になり、誰もが羨むエリートは異常な性癖を晒す。もうやめてくれと言いたくなるような展開に友美がどう立ち向かうのか。一読の価値はある。
読みながら頭に浮かんでいたのは『推し、燃ゆ』と『蛇にピアス』。両者とも有名賞受賞作で、いずれも生きるのが不器用な1人の若い女性にスポットをあてた物語。ここに『御伽の国の〜』が並んでも引けを取らない、いや、むしろ私は圧倒的にそちらが好きだった。友美と同じような境遇の元クラスメイトがいるから、よりリアリティを感じられたのかもしれない。彼女が友美と同じ人生を歩まないよう祈るばかりである。
哀しくもBiSHは来年で解散を宣言している(余談だが陣痛時、子宮口3cm開いた段階で解散を知った私は分娩台で悲鳴を上げた)。解散後のメンバーの活動が気になるところだが、モモコさんにはぜひペンを握りしめていてもらいたい。常じゃなくてもいい。ただ、その時その時のモモコさんの言葉を私が受け止めていたいだけなのだ。1ファンとしてのワガママだが、もしもそれが叶ったら、解散だっていつかは受け止められる気がする。
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読了して今すぐ感じていることを言葉にして残しておきたいと思いながらも、他に読了済の本の感想も書けていないしなんなら先月分もまとめてないし……とうだうだ考えてしまったので、思い切って『御伽の〜』だけで1記事にしてしまいました。
本書、めちゃくちゃ面白かったのですが、好きになれる登場人物が1人もいないんですよ(しいて言うならメイドカフェの店長は良い人だった。サブ中のサブ)。人は好きになれないけど物語としては面白い。それも本書の凄さだなと思います。
ファンでなくともおすすめしたい1冊。モモコさんのエッセイも好きだけれど、小説も最高でした。選ぶ言葉が好きなんだろうな。そんな人のファンになれて幸せだな。
今回もお付き合いいただきありがとうございました。
またお会いしましょう。ゆきでした。
See you next note.