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「すべて真夜中の恋人たち」

「すべて真夜中の恋人たち」川上未映子

「真夜中は、なぜこんなにもきれいなんだろうと思う」。
わたしは、人と言葉を交わしたりすることにさえ自信がもてない。誰もいない部屋で校正の仕事をする、そんな日々のなかで三束さんにであった――。

芥川賞作家が描く究極の恋愛は、心迷うすべての人にかけがえのない光を教えてくれる。渾身の長編小説。

正直に言うと、登場人物の誰にも感情移入できなかったし、よくわからない部分もあった。けれど、読み進める度にどんどん惹き付けられて、物語の世界観に溺れるようだった。
読み終わったあとも、タイトルの意味や登場人物について考えを巡らせてしまう。物語自体がとくに好みだったわけではないのにこんなにも惹かれてしまうのは、川上さんの文体に魅力があるからかもしれない。さすが芥川賞作家だ。一言で綺麗とは言えない、なんか淀みのようなものも感じる、でも美しい世界観。中毒性のある文章だった。他の作品も読んでみたい。


ふれるというのは、むずかしい状態です。ふれているということは、これ以上は近づくことができない距離を同時に示していることにもなるから。

p320

この文が衝撃的だった。

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