子どもはどのように『落ち着き』をなくすのか?【前編】
これまで、『発達障害』を勉強しようと色々な本を読みました。そして、ツヤ子の勤務先(保育園)の子ども達の『落ち着きのなさ』は一見、『発達障害』のようですが、そうではないことがわかってきました。
『子どもの落ち着きのなさ』のまとめ
もう一度、保育園の子ども達に見られる、落ち着きのなさについてまとめます。
1.発達障害(←先天性の脳の特性)
・ 自閉傾向・自閉症
・多動性障害
・発達遅滞
2.愛着障害
・回避型
・アンビバレント型
・混乱型
3.赤ちゃん返り(←愛着障害のはじまり?)
4.発達障害もどき(←脳の発達順番の乱れ)
・睡眠不足
・デジタル機器の多用
どのように子どもは『落ち着き』をなくしていくのか?
乳児期から長時間保育園を利用して子育てをしていくと、どのように子どもが落ち着きがなくなっていくのか、ツヤ子の経験してきた事例を参考にしつつ、架空のAくん(男の子)の成長を考えて行きたいと思います。
0歳クラスのころ
4月生まれのAくん。
お口をポカーンと開けて、ボーッしている時がありますが、呼びかけには振り返り、喃語もあります。
指差しもみられ、大人の声かけにも適切に応答し、保育園生活は問題なく慣れ、過ごしていました。
食事の時、咀嚼を殆どせず、丸呑みするのが心配なところでした。
周りの人(大人でも子どもでも)の気分を敏感に察知する傾向があり、小さいながらも、気を使ってる感じがします。
ポカーンとしている彼を見て、発達障害を疑う保育士さんもいました。しかし、保育園生活に支障がないので、例え発達障害があったとしても、ツヤ子は今は問題ではないように感じていました。
ツヤ子が心配だったのは1歳児クラスに進級した時、新入園児が一気に10人ほど増え、賑やかになります。人の気分を敏感に察する彼が、その環境変化にストレスを感じないか?ということでした。
1歳児クラスの頃
進級するとすぐに、Aくんは2歳になり、そしてお兄さんになりました。
お母さんは産休に入り、1年間の育休を取ることになりました。
「おっぱいじゃないっ!」と突き放されるAくん
登園時、お母さんから大泣きして離れられなくなったAくん。
「おっぱい、おっぱい」とお母さんにしがみつき、泣きます。
お母さんも産後すぐで疲れがあったのでしょう。
「おっぱいじゃないっ!」といってAくんを突き放しました。
大泣きするAくん。
ツヤ子が抱っこしに行きました。
ツヤ子にしがみつきながらAくんは泣き続けました。
『お母さん、大変だと思うけど、Aくんもまだ2歳だから。きっと今、赤ちゃん返りしているのではないでしょうか…。まだまだAくんも赤ちゃんだと思いますよ。』とツヤ子は言いました。
『ああ、はい…。』と、お母さん。
そして、瞬く間にその場を去って行きました。
(ああ、嫌な予感…。お母さん、産後の鬱かなぁ…。お仕事は教育関係だしなぁ…。あたしなんかに声かけられるの鬱陶しいだろうしなぁ…。)と、Aくんを抱っこしながらツヤ子は思いました。
ボンヤリ過ごすAくん
泣き止んだAくんは遊ぶことをせず、ただぼーっと過ごすことが増えました。
以前は電車が好きなので、電車のおもちゃで遊んだり、ツヤ子の膝の上で『ガタンゴトン次は〜』なんて言いながら電車ごっこをして過ごしていました。
しかし、おもちゃにも、ごっこ遊びにも反応しなくなってしまいました…。
『はい、やる気なし〜』
日に日にAくんのボンヤリは酷くなりました。
たった2歳の子が、遊ばずじっとしているなんて、なんて不健康なんだろう…。とツヤ子は思いました。
ある日、朝の会で出席をとる時、返事をしないボンヤリのAくんに担任のB先生が
『はい、やる気なし〜』と言いました。
B先生は子育て経験もあり、勤続年数も10年以上のいわゆるベテランでした。
B先生の保育感は子どもを集団として動かすことが大切と考えているようでした。
Aくん以外にも一斉保育のリズムに乗れない子どもに対して抑圧的な対応をとり、集団をまとめるということを優先していました。
『集団生活だから仕方ない。合わせてもらわないと。親も預けるのなら、それなりに準備してほしいですよ。』が彼女の口癖でした。
『集団生活の規律を守るためなら、子どもに我慢させる』それがB先生の保育スタイルのようです。
Aくんの心は?
母親に「おっぱいじゃない!」と突き放され、
B先生に『やる気なし〜』と言われたAくん…。
人の気分に敏感なAくん。その心は今、どうなっているのだろう…。
ボンヤリしたくてしてるのではないのでは?
ボンヤリしないとやってけないのでは?
Aくんを見るとツヤ子は心が痛みました…。
2歳クラスの頃
お母さんの育休が明け、0歳クラスに弟くんが入園しました。
2歳児クラスの主担任のE先生は、物事をはっきり言うタイプの方でした。行事に熱心で、そこでの子どもの出来具合が、保育士の力量の見せ場と思っているようでした。
パニック泣きが始まった
お母さんが職場復帰をすると、送迎はお父さんになりました。
お父さんと別れる時、Aくんは激しく泣きはじめました。
『おっぱい〜、おっぱい〜』と叫びながら、体をよじらせ、抱っこを拒み、顔を真っ赤にして、ワンワンと泣きました。
時には体を激しく動かしすぎて、床や壁に頭や体がぶつかってしまい、打撲する、ということがありました。
そんな彼を『じゃあね〜』と、保育士さんに渡し、お父さんも瞬く間に去っていきました…。
暴力行為が増えていく
泣きじゃくるAくんを副担任のC先生とD先生はなだめました。
パンチをくらおうと、噛みつかれようと、懸命に彼と向き合いました。
泣き止んだかと思うと、今度はおもちゃを投げたり、クラスのお友だちをぎゅ〜と抱きしめようとしたり、そうかと思うと突き飛ばしたり…。
時には『きゃあ〜』と奇声を発しながら教室を全力疾走しました。
とにかく気持ちが落ち着かない、そんな行動が繰り返されていきました。
他の子ども達の安全も考えなくてはならない…。
Aくんの行動は本人だけでなく、他の子ども達の安全を脅かすことがありました。
少ない職員で、Aくんの気持ちに寄り添いつつも、他の子ども達の安全を守らななくてはなりません。
非常に厳しい保育現場となっていきました…。
Aくんの行動は何が原因と考えるか?
この違いによって保育士さんの対応は大きく2分していきました。
赤ちゃん返りや親子関係が上手くいっていない
と、考えた保育士さんはC先生やD先生のように泣きじゃくるAくんをなだめ、暴力行為が始まると抱きしめ、気分の高ぶりがおさまるのを待ちました。
原因は関係ない、悪いことをしたら、注意されるべき
と、考える保育士さんは暴力行為をしたAくんを廊下へ連れ出し、『だめでしょ!』と、注意が始まります。
そして、暴力行為を事前に止めるため、更に強い抑圧的対応をとります。
主担任のE先生はこのタイプでした。
E先生はAくんを制御するために、更に厳しい抑圧的対応を始めました。
人を見て態度を変え始めたAくん
Aくんは次第に、抑圧的な対応の主担任E先生のいる時間は、教室のすみっコで小さくなって座っているようになりました。
E先生はそんな様子のAくん見て、自分の指導が彼に伝わり、暴力行為をしなくなったと考えているようでした。
E先生がいなくなると、Aくんは何かの重しが外れたかのように、副担任の先生達に『先生〜!おっぱい!おっぱい!ギャハハ』と大きな声で叫び、抱っこを求め、そうかと思うと教室内をぐるぐる走り回りました。
興奮が止まらないAくん
ツヤ子と副担任の先生と相談し、パーテーションで小さい空間を作り、刺激を減らしてみることにしました。他の子ども達の様子は目に入り難いが、先生達の顔は常に見えるように配慮しました。
そして、彼の好きなおもちゃや本を準備し、『Aくんのお部屋だよ』と言って入ってもらいました。
落ち着きを取り戻したAくん
『Aくんの部屋』に入ることで少しずつ落ち着きを取り戻しました。
しかし、ちょっとした音や、他のお友だちの声に興奮が収まり切りませんでした。
少ない職員での対応の限界
Aくんのために、静かな場所を作ってあげたいところでしたが、教室内にそのような場所を作るのはパーテーションで区切るのが限界でした。
そして、Aくんの興奮はクラス全体に及びます。
彼の興奮に引っ張られ、他の子ども達も興奮する、という現象も見られ始めました。
職員1人がAくんに対応し、残り2人の職員でクラス全体の興奮を鎮めなくてはならないという非常に難しい状況になりました。
Aくんの興奮がクラス全体を興奮させ、クラス全体の興奮が更にAくんを興奮させる…というスパイラルが起こるのです…。
これが毎日繰り広げられます…。
大人も子どももクタクタです…。
主担任と保護者との亀裂
物事をはっきり話すタイプのE先生。
Aくんの行動に対して、『発達障害』なのではと保護者に面談で話したようでした。すぐにでも療育に行くべきだといった態度だったようです。
『うちのコは障害児じゃない!』と親御さんは言い、話し合いは決裂します。
根本的な解決はなく、進級していく…。
0歳クラスの時、とても穏やかだったAくん。彼を変えてしまったのは何でしょう?
根本的な解決策は見出されないまま日々は過ぎ、いよいよAくんは幼児クラスへ進級となりました。
続きはまたの機会に…。
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