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お気に入りは大体"業務用"

業務用の製品が好きです。
シンプル、割安、丈夫、便利…
大体みんなこんなイメージだと思います。
デメリットは「オシャレではない」くらいでしょうか。

でも私は、業務用製品こそ美しいと思うのです。





私が受験した大学は、入試項目に木炭デッサンがありました。
4時間で石膏像のデッサンを描くのです。

その入試対策の為、私は一時期画塾に通っていました。
先生は美大出身で本業はフリーのデザイナー。
副業で大学受験対策の画塾講師をしていました。

東村アキコ先生の「かくかくしかじか」というエッセイ漫画がありますが、画塾のイメージはアレに少し似ています。


絵を描いて大学に入ろうなんて考える高校生は総じて「自分は人より絵が上手い」という自負がありますが、受験デッサンは話が違います。
漫画同様、先生はデッサンの基礎も知らずなんとなく絵を描くのが好きで学びにきた高校生を容赦なく指導してくれました。


下手くそ
どこ見て描いてんの
お前らレベルにスランプなんぞない
おこがましいこと言ってないで手を動かせ
悩んでる暇あるならとにかく描け
下手くそ
ちゃんと見ろ
形狂ってる、全部消せ
(↑2時間半かけて描いたやつ)
下手くそ


絵がそこそこ描ける子って実は作品に対するプライドが高い子が多いのです。
4時間かけて描いたものを下手くそと酷評され泣いてる子もいました。
芸術って体育会系なんだと初めて知りました。

つらいなら辞めてしまえ
自分より上手いやつなんか死ぬほどいる
それでも描きたいなら描け
描かずにいられないやつが絵で食っていける
とにかく描け、手を動かせ

そんな雰囲気でした。なかなか厳しい。


先生は仕事の話もたまにしてくれました。
その話の中で

 美しくて便利なものはない
 本当に便利なものは全て美しい
 理にかなったつくりは美しい形になる


と話してくれました。

空間も建物も道具も何であろうと使う人、場所、目的を計算し尽くされて作られたデザインは必ず美しく仕上がる
例えばハサミの形がずっと変わらないのは切る道具としてのデザインが完成しきっているからだ
だから工業製品は美しいものが多い

これが妙に腑に落ちるというかストンと頭に入ってきたので、事あるごとに思い出してしまいます。


何かを買う時、選ぶ時。
新居の間取りを考える時もどこかで意識していました。
この間取りは本当に"美しい"だろうか。

使う人のことを考えているだろうか。
使う目的に合っているだろうか。

頭の片隅で少しだけ考えています。
そう意識していると、道具に関しては業務用品がハズレないことが多いです。

中でも特に台所用品は、業務用を最初に調べます。
業務用がどれくらいの値段と大きさと形なのか、それが模範解答というか最適解だと思ってしまうのです。



そうして私はル・クルーゼかストウブが欲しくて楽天を開いたはずなのに、業務用のアルミ鍋をポチってしまいました。



このアルミ鍋、めちゃくちゃ厨房の賄い感が出てるんですが、実物はマジで飲食店のバイトの記憶を蘇らせてくれます。
豚汁やカレーを作ったら炊き出し感がすごい。

でも汚れは割と簡単に落ちるし、ガンガンぶつけても(ぶつけんな)割れないし、多少傷が入っても屁でもないし、なんなら凹んでも大丈夫です。使えます。

こいつを手放す時がくるのは何十年後なんだろう。むしろ来るのか…?


私の理想のキッチンは飲食店の厨房です。
マイホームに業務用キッチン入れたかったなぁ。




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