読書日記61
君と暮らせば
八木沢里志さんの作品で実は読むまで知らない作家だった。文書が読みやすくほのぼのした内容ですごく読みやすい。主人公の相田ユカリは中学3年生で血のつながらない兄の陽一がいる。親同士の再婚で兄弟になって陽一が大学生の時に両親が交通事故で亡くなるという不運にみまわれる。その時陽一が「ユカリは兄妹だから一緒に暮らす」と兄が大学を辞めて就職し一緒に暮らし始める。
のんびりで恋人もできない兄を心配しながら、炊事・家事全般をするユカリと陽一の前に白黒模様の頭部分が八の字模様になっている(ハチワレ柄)の猫があらわれる。兄の陽一が「その猫は種田さんちの猫だ」というので白黒猫は「種田さん」に反応するようになる。陽一の勘違いで種田さんちの猫でなくノラ猫だとわかるが「種田さん」にしか反応しないので「種田さん」という名前の猫になるというオチをつけながら猫との暮らしがはじまる。
兄に同級生の長谷川さんの姉を紹介したり、恋人がちらつくとユカリがやきもちをやいたりしてほのぼのと物語が紡がれていく。こういう小説が読めるときってなんか海辺で散歩している気分になる。沢山よむと確かに飽きるんだけどほのぼのって悪くないと思える作品って面白い。小学生のムサシとの出会いや学校の鹿野先生と陽一が同級生とかそういった話が淡々と流れた後に兄妹で住めなくなる危機がおとずれる。
兄と妹の本当の気持ちが忙しさで繋がらなくなっていく。陽一とユカリの本音が錯綜しながら、本当の兄妹ってなんなのかという深い神髄のようなものまで考えさせられる深い作品にもなってる。最後の本音のぶつかり合いがある時は何故かほっとしてしまう。
本の中の時間はゆったり流れている。設定が東京に近い地方都市の物語になっていてそれに拍車をかけている。ユカリは外見が綺麗な女の子になっていたり陽一も背の高いいいお兄さんになっている。読みながらそりゃないわと思うしもう少女漫画の世界になってしまっている。そうおもいながら読み続けるとユカリのファンになっている。少女のかたくなさがとても気持ちよく自分の中に受け入れられていく。ちょっと箸休めのように読むならいい作品になってると思う。
昔、あだち充さんの漫画で「みゆき」という作品があった。血のつながらない兄妹の話で妹の名前が「みゆき」兄の釣り合わないぐらい可愛い彼女も「みゆき」となって二人の「みゆき」に翻弄される兄の物語なんだけど、恋の行方はちょっとおかしなことにはなっている。
アニメにもなって主題歌の「想い出がいっぱい」はいい曲で僕らのころの卒業ソングにもなっていた。
テト(猫)が本を読んでいると僕の背中に寄りかかって寝息をたてる。なんかいい雰囲気があるこの頃テトが静かなので本を読む時間が増えている。読んだ本はできるだけ読書日記に書きたいなと思うようになっている。