読書日記235 【あの花が咲く丘で君とまた出会えたら】
汐見夏衛さんの作品。小説投稿サイト『野イチゴ』に投稿され、スターツ出版文庫にて出版されて70万部の売り上げがあるそうです。サイト自体が女性が主に投稿するサイトなのもあって小説が映画化されるまではよく知らなかった。
中学生の少女が1945年の6月にタイムリープしてしまう話で、場所の指定はないけれど特攻隊の話があるのと空襲があったとの話から総合すると現在の福岡市か?とは思ってしまう。特攻隊部隊は主に九州や台湾だったし、福岡の空襲が6月19日の深夜だったのを考察してみるとなんだけど、どこなのか?というのは特に書いてなかったように思う。
こういう作品で有名なのは『永遠の0』という百田尚樹さんの作品だけど、そこらへんに影響をうけていようがいまいが、素晴らしい作品でよくかけている。この作品を書いたときは無名の新人だったわけだから、このクオリティーは流石にすごいとうなってしまう。
女子中学生の加納百合は授業が面白くなく担任の先生に逆らってばかりいる。それをシングルマザーである百合の母に連絡されてしまい親子喧嘩となり家を飛び出してしまう。
街を徘徊していると、ひょんなことから戦争のときに使われていたとされる防空壕に入ってしまう。散策していると急に意識を失ってしまう。
目覚めるとそこは1945年の6月で、気を失った百合を助けてくれたのは特攻隊員の佐久間彰だった。
彰の助けもあってツルと呼ばれる「鶴屋食堂」を経営する女将のところにお世話になることになり、そこで働きながら戦時中の生活を過ごす。そこで彰は優しく妹のように百合を助ける。
友達になる魚屋の千代だったりが百合を励まし現代に帰りたい百合の精神的支えになる。
いろいろなことがありながら、戦争のときの偏見や暴力にあっていく百合、そしてそれを助けるツルや彰の周りの人たち、彰の入隊している特攻隊の小隊の仲間の話や空襲をうけるシーンなど戦争末期の本土の人々の苦悩を百合は目の当たりにする。そこで果たして百合はどう行動するのか?
戦争時の作品って昔は「戦争は悲惨でやってはいけないこと」という悲劇を主に描いていた作品が大半だったけど、戦争というものにどうやって人々が向かっていったか?みたいな作品をここ何年か見ることが多くなった。
ドラマ的には『さとうきび畑の唄』という明石家さんまの出演したスペシャルドラマだったかな?と個人的に思っている。
明石家さんま演じる男性は仲間の兵隊を守り、「戦争反対」を訴えて上官に射殺されてしまう。ここはスゴイ内容で今までこんなドラマは見たことがなかった。ただ、そのドラマ放映の後に、実はそうやって仲間を助けるために上官に逆らって命を亡くした兵士がたくさんいたことがわかって、その頃にちょっとした事件だったのを覚えている。
この小説も純粋に戦争なんか負けて終わればいいと百合は憲兵に叫んでしまうシーンなどがある。殴られてそれこそ殺されてしまうようなシーンで必死に助ける佐久間彰と食堂女将のツルの部分はよく書かれている。
恋愛的には最後にちょっとした仕掛け(トリック)があって、そこにすごく感動する。小説をサイトにコツコツと書いてそれが共感をよんで、本が出版される。『書く人』にとってはたまらないんだろうなと思った。