読書日記77
純喫茶トルンカ しあわせの香り
八木沢里志さんの作品。純喫茶トルンカの続編でこの喫茶店に集まる人たちの物語になっている。喫茶店というと先輩の両親が経営する喫茶店兼食堂みたいな感じのお店があった。マスターである先輩の父親はたまにお邪魔する僕らに「男がな~一番大事なのはち〇ち〇の大きさだ。小さいやつは人生の楽しみの半分と失っているんだぞ!」と真顔でいうおかしな人だった。(ちょっとお下品ですいません)
冒頭はお客として長いこと通う老婦人の話。谷中銀座商店街を折れて細い路地の一番奥にある「純喫茶トルンカ」そこに20年間通う千代子ばあちゃん。マスターとその娘で高校生の雫(シズク)とも顔なじみになっている。雫の姉である菫(スミレ)は高校生のときに亡くなっていた。母親は海外で働いている。
八千子おばあちゃんは生涯で一番の恋が実は旦那さんではない。戦争中に実家の酒屋で配達をするお屋敷の三男坊の健彦に憧れてしまった。お屋敷には音楽が何時も流れていてショパンの「エオリアン・ハープ」が流れていた。5歳頃から慕う武彦が戦争に行ってから事態は変わってしまう。戦争から帰った武彦はおかしくなってしまっていた。親に見合いをさせられ結婚が決まってしまった八千代は武彦に会いに行く。
その時に八千代は気付いてしまう。武彦が好きだったことに、この人がずっとずっと好きだったことに結婚が決まった日に気づいてしまう。「おめでとう」武彦に言われる。八千代は泣きながらその儚い思いを反芻していた。それが人生の終わりに奇跡がトルンカで起こる。映画の撮影現場としてトルンカが使われるとことなり、八千代がエキストラに選ばれる。そこから運命の歯車がまわる。
次の作品はシズクの幼馴染の亡くなったスミレが憧れだった浩太が主人公。スミレが亡くなる前に「シズクを頼む」と言われて空威張りで面倒見のいいふりをしている。バレーボールのエースをしているが先輩のいじめで部活に出るのが嫌になっている。映画の撮影がトルンカで始まったときに、映画のヒロインである田所ルミがスミレに見えてしまう幻をみる。興味もないのにルミを追いかけ始める。
ヌード撮影もある映画のヒロインなのでか?活発な性格のルミは寄ってくる浩太をからかいながらデートをしたりする。スミレにこれからこのいじめをどうしていけばいいか?を聞きたい浩太。スミレはもういない。苛立ちを隠せないまま気持ちが高ぶって浩太は「スミ姉教えてくれよ」と、ルミの前で泣きだしてしまう。優しく抱きしめるルミ。子どもの時からムードメーカーで何時も笑顔で元気いっぱいの浩太の胸にたまったやるせなさをルミ(スミレ)が洗い流してくれる。そこから物語は違う方向に流れていく。
最後は店の常連の一人絢子でイラストレーターをしている。母が亡くなり一人暮らしをしている。イラストの仕事の無理な注文にイライラしていると昔の彼氏の宇津井に偶然出会う。鬱になって仕事も無職になっていると聞き、トルンカがバイトの修一が就職で辞めることをしっていた絢子がトルンカのバイトを紹介する。
アパートも引っ越して絢子の住む一軒家に「住めば」と誘う。変な同居生活は始める。宇津井とは学生時代に知り合ってそして別れていた。彼も絵を描いていた。そこでイラストが好きで描いていた自分を取り戻す絢子。そして長い付き合いの宇津井やトルンカのメンバーに家族を感じていく。そこから絢子の新しい物語が始まっていく。
過ごしやすい喫茶店で読書をしていると、すごく読書が進む。昔に国立市に住んでいた頃に西国立に凄く居心地の良い喫茶店があった。東京女子体育大学が近くにあるからか食事もボリュームがあり、よくジャージ姿の女性がワイワイと食べていた。混んでいて相席とかになると活発な女性が多く、「何読んでるんですか?」とよく聞かれた。
その頃は京極夏彦さんの京極堂シリーズにハマっていてよく読んでいた。新書にカバーを自作してかけていたので、外国の男性に「Bible?(聖書?)」と言われたこともあった。おそろしく分厚い本だった。森博嗣・宮部みゆき・大沢在昌・村上春樹・村上龍などを読んでいたなと思いだした。その頃は仕事が忙しくて本が休みぐらいしか読めなかった。本を買って置いて休みになると散歩がてらに歩いて喫茶店に行って読書を楽しんだ。いい想い出だなと今でも思う。