このつながりを断ち切れぬ者は一生の覚悟を決めよ ”森見登美彦”
タイトルは森見さんのブログをもじらせてもらいました。
さて、このnoteの柱が始まります…。ついに第一回更新です。その意気だけはよし。
森見さんに関しては、押しも押されぬ人気作家なので書く必要もないのかもしれませんが、私が語りたいんです。
基本的なアピールポイントは3つ
・メディアミックスに堪え得る世界感、キャラクターたち
・共通していると思うのは『つながりを描く』こと
・実在の地名(主に京都)、アイテムから得られる親近感
エンターテイメントの寵児
”ペンギン・ハイウェイ” ”夜は短し歩けよ乙女” "四畳半神話体系" "有頂天家族"
以上のタイトルを聞いて具体的なビジュアルが浮かぶ方も多いのではないでしょうか。
これらは森見文学の中でも、メディアミックスでアニメ化されたタイトルです。その出来栄えは折り紙つき。原作を読了している者には、良書の地平を広げる幸せなひと時を、未読の者には、ちょっと奇妙なつながりを見る ”おもちろい" 世界観に没入させてくれます。
お腐れ大学生は、襟を正して ”乙女” "四畳半" を読み心の救済に励むべし。
4作品の魅力は、何と言っても素直じゃないひねくれた者たちのかわいさです。
”賢さを自覚しててもお姉さんへの好意は隠せないアオヤマ君”
"外堀を埋めつくしても石橋を叩き壊すほどに慎重を重ねすぎる先輩"
"妖怪のような悪友(むしろ妖怪)と理知で阿呆にも理解がある後輩に囲まれていてもバラ色の学生生活を希求する私"
”毛玉ふぜいには感謝はありえない唯我独尊、傲岸不遜(だが、ぽんこつ)天狗の赤玉先生"
素直になりきれない者たちの胸中を、独特の文体で吐き出しているのにちっとも読みづらくない。むしろ小気味いい、にくめない。
なんでしょう、メディアミックス作品だけあってキャラも立っててエンターテイメントとして完成されてるんですよね。
そのモノローグ、独白は声に出したくなるほどです。
映像作品はちょっとしたマニアなら、毎回こんな豪華な製作陣なかなか囲えないぞと思うくらいに業界のトップランナーだらけです。
つながりを描く
私が思うに森見さんの作品に共通するのは、さまざまな形のつながりを描いていること。
つながりと言っても多くあります。家族愛・悪縁などの人物同士のつながり、ものと人物とのつながり、世界観のつながり、実在のアイテムを作中に出し現実とのつながり。
そのつながりこそが、森見文学に共通する、作品を綺羅星のごとく輝かせる要素なのです。
だからこそ、前述のコミカルでマイルドな作品だけでなく ”夜行” "きつねのはなし" "宵山万華鏡" といった作品にも、にぶく妖艶な輝きが秘められているのだと思います。
軽快な若さを描く作品も、妖しく私たちの背後に潜む作品もどちらを読んでも偏ることなく支持ができるのは森見さんの辣腕の賜物ではないでしょうか。
京都を回り回る
作品の多くには京都の実在の地域や建物が出てきます。京都在住の人を羨ましく思うほどに登場人物が街を右往左往、東方西走する様は、読んでて痛快です。
特に顕著なのは "新釈 走れメロス" ですね。文字通り現代の京都にメロスが現れ、洛中を駆け回るような作品です。
現実とリンクすると聖地巡礼もできますし、生活の背後にこんな話が実在したら…と妄想が働いてしまいますよね
最後に
共通事項があるというのはとても大きいことだと思います。シリーズものだったり、クロスオーバーしている作品は心が高鳴りますよね。しかし、同じ作者の作品には何かしらその方の "色" や "匂い" があると思います。
NHKのプロフェッショナルで市川海老蔵さんが『「成田屋のにおい」を大事にしたい』というようなコメントをして、それがいたく腑に落ち、いい言葉で選ばれし人に使える言葉と思いましたが、それに似た "色" や "匂い" を感じ取り自ら嗜好を持つことが本を楽しむコツなのかもしれません。
今後も、こんな所が特徴だと書き出して書いていきますので、興味のなかった方も最初を読んで気になったら、ぜひ検索して読んでみてください。
個別の書籍の感想については気まぐれに書くかもしれません。
では、また次回!
次回はマンガ家の福地翼さんの予定です。