ショートショート(11話目)シェアリング彼氏
「映画でもいこっか」
翔琉(かける)はアイスコーヒーを飲みながらそう言った。
日曜日、いつものスターバックスで待ち合わせて、いつものように映画館にいく。
スターバックスも、映画館も、もう飽きた。
2年前、顔がタイプだったから、私は翔琉と付き合いはじめた。
美人は3日で飽きるという諺(ことわざ)があるが、イケメンだって2年もしたら飽きる。
翔琉に不満はないけど、新しい刺激が欲しい。
〜〜〜
翌朝、スマホにメールが届いた。
メールには「シェアリング彼氏のご案内」と書かれていた。
ルームシェアやカーシェアは聞いたことがあるが、いまや彼氏までシェアする時代らしい。
私はメールに添付されていたURLボタンを押し、シェアリング彼氏のサービスに登録した。
登録するとすぐに私にマッチした男性がピックアップされた。
(どれどれ)
あ、この人イケメン。
この人は趣味が料理だって。
それにしても、このサイト、いい男が多すぎじゃない。
ん?この男性、彼女が5人いますだって。
なにこれ?
彼氏シェアリングに登録している男性って、もしかしてみんな彼女持ちなの?
まあ、いい男は買い手も多いってことね。
面白そう。
わたしも彼氏たくさん作っちゃお。
私は次々と気になる男性に対してアプローチした。
すると、すぐに返信が返ってきた。
『ご連絡ありがとうございます。良かったら今度渋谷でデートしませんか?』
彼の名前は裕樹(ゆうき)といった。
わたしは彼と会うことにした。
〜〜〜
裕樹(ゆうき)は想像以上のイケメンだった。
プロフィール欄には彼女が5人いると書いてあったが、納得だった。
裕樹が指定した渋谷のレストランはとてもオシャレで、窓から見える景色も最高だった。
やっぱりモテる男は違う。
レストランで食事をしたあと、私と裕樹は明治神宮を歩いた。
それから、原宿でクレープを食べた。
とても新鮮だった。
私は彼氏シェアリングにハマっていった。
〜〜〜
今週は昌弘(まさひろ)とデート。
来週は達也(たつや)とデート。
再来週は優作(ゆうさく)とデート。
週末の予定はシェアリングされた彼氏で埋まっていく。
彼氏は一人までなんて、誰が決めたの?
私はなにも悪いことはしていない。
そうやって、私は毎週違う男性と遊んだ。
~~~
半年後、シェアリング彼女という新サービスができた。
それ以来、どんなにメッセージを送っても、返信が来なくなった。
市場(しじょう)は残酷だ。
価値がなくなれば、すぐに捨てられる。
モノも人間も同じだ。
私は翔琉にメッセージをした。
『今週の日曜、久しぶりに映画でもいかない?』
翔琉からの返信はすぐにきた。
『ごめん。今週の日曜はシェアリング彼女の子とデートすることになってるんだよね。』
翔琉の市場価値は、私よりも高いらしい。
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