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腕を大きく振って。
今日は八月二十日、子どもの頃は長い長いと思って遊び惚けていた夏休みの終わりがジワリと近づいてくるような気がして焦ったものである。
私が子どもの頃の夏休みの行事と言えばラジオ体操である。
目覚ましを五時半にかけて寝ていた。
兄と弟を起こすのが私の役目だったのだが、兄が朝が壊滅的に弱かったので毎朝起こすのが本当に面倒だった。
もう置いていくからねと言ってそのままほったらかしにして弟の手を引いてラジオ体操会場である近所の公園まで歩いて行くこともよくあった。
六時前に公園に着くと一番乗りの事もあったが大抵は誰か友達が先に来ていた。
友達と集まると当然遊びが始まる。
ブランコを繋いであるチェーンの限界まで漕いだり、滑り台を逆走したりと好き放題していると大きな黒いラジカセを持った保護者の人がやってくる。
さすがに野放図に遊ぶわけにもいかないので大人しく昨日見たテレビの話などをしているとラジオから番組の開始を告げる歌が流れ始める。
その曲が聴こえると公園の広場にバラバラとみんなで距離を取って整列する。
六年生がみんなの前に立ってラジオ体操のお手本をするのが決まりだった。
ラジオから元気な声のおじさんが始まりの挨拶をしているといつの間にか兄が来ており、今日もギリギリだなぁと思ったものである。
それからラジオから流れる曲に合わせて体操をした。
学校でもしょっちゅうやっているし毎日の事なので体操の順番は完全に覚えていた。
ラジオ体操は本気でやると結構な運動量で軽く汗をかいたものである。
第一体操が終わると軽く首をほぐす運動があってその後に第二体操が始まった。
第二体操はややトリッキーでまじめにやらないと今自分が何をしているのか分からなくなる。
まあ、監視がいるわけでもないのである程度いい加減にやっていたように思う。
体操が終わると六年生の所に行ってラジオ体操カードにハンコを押してもらった。
地域によっては皆勤賞だとノートや鉛筆のような文房具がもらえたようだが私の所では何のご褒美もなかった。
夏休みが明けて学校に登校した時に宿題と一緒に提出して先生におっ、休まずによく出ているなと褒められるだけであまりモチベーションは上がらなかった。
ラジオ体操が終わると一時間くらい友達と公園で遊んでからお腹がペコペコになったら解散である。
早朝から身体を動かしているので朝ごはんがおいしくていつもご飯をお代わりしてモリモリ食べた。
それから勉強をするふりをして時間を潰して外出していい時間になったらそれっとばかりに家を飛び出していた。
そんな感じで夏の朝は規則正しく過ごしていた。
今は近所の公園でラジオ体操の音を聞く機会も減った。
最近では早朝から子どもの声やラジオの音がうるさいと騒音問題があるそうである。
また保護者が監督するのも共働きの多い最近の家庭事情では難しいという問題もあるそうだ。
これも一つの時代の流れなんだなぁと思うと自分が歳を取ったなと感じる。
朝から身体を動かすのは良い事なのでこれからも細々でもいいからラジオ体操放送は続いてほしいなと思う。
久しぶりにやってみようかな。
身体が覚えているかしら。
そんな事を考えながら昨日の晩御飯の話をちょこっと。
昨日は私の誕生日だったので妻がご飯を作ってくれた。
何を作るのかナイショという事だったでお先にお風呂にゆっくり入った。
風呂上りに水を飲もうと台所に行ったら頭に手ぬぐいを巻いた妻がフウフウ言いながらコンロと格闘していた。
こだわっているのか結構長い時間台所にこもっていた。
何か手伝おうかと思ったがそれも違うかと考えておとなしくしていた。
一時間くらい待っているとお待ちどう様と言って妻が料理を運んできた。
昨日の献立はポークソテーとキノコのマリネ、海藻サラダ、厚揚げの煮物、コンソメスープとかなりの豪華版。
さぁまずは頂きますをしましょうというので手を合わせるとすかさずビールが出てきた。
おっとこれはこれはとわざとらしいことを言いながらプルタブをツプシュッと起こしてグラスにタンテントンと注ぐ。
では乾杯と言うと、お誕生日おめでとう!と祝われた。
ありがとうと答えてまずはビールをウビッ。
身体に染みるうまさがたまらない。
ではサラダからいただきます。
海藻サラダの素を使ったそうで青じそドレッシングが爽やかで食事の始まりにはちょうど良かった。
久しぶりにレタスをたくさん食べられたので満足。
次に厚揚げの煮物を。
餡掛けにしてあるのでアツアツで食べ応えが十分だった。
これはつまみに丁度いいよと言うとよかったと嬉しそうだった。
二本目のビールをあけてお次はキノコのマリネを食べる。
シメジを湯通ししてオリーブオイルと塩、砂糖、酢、ニンニクで和えたシンプルな一品。
あっさりしていつつもニンニクの風味が効いており後を引く味だった。
イケルイケルと言いながらパクリ。
ではメインのポークソテーを食べよう。
ソースが黒っぽいので何を使ったのだろうと思って口に運ぶと磯の風味がした。
ああ、これはあれだ…海苔の佃煮と言うと正解と言われた。
海苔の風味が豚肉とマッチしておりなかなか斬新な味だった。
もちろん美味しい。
三本目のビールをゴブゴブ飲みながらナイフを動かした。
それからたくさんおしゃべりをしながらゆっくりと食事を楽しんだ。
お酒は四本でお腹いっぱいになったので打ち止め。
ご馳走様、美味しかったよというと良かったぁととても嬉しそうだった。
片づけもお任せだったので昨日は本当にラクチンだった。
食休みをしていると何とケーキまで出てきた。
妻の淹れるかなり美味しいコーヒーと一緒に食べたら大満腹で動けなくなった。
いやぁ昨日はお祝いの一日だったなぁ。
誕生日って良いものですね。
十一月に妻の誕生日が来るので盛大に祝いたい。
めでたい事は目いっぱい楽しみたいですよね。