今日は楽しい♪
三月三日はひな祭り、いわゆる桃の節句である。
私は男ばかりの三人兄弟なのでこのイベントにはあまり縁がなかった。
それでも小学生の頃は幼馴染の女の子の家にお呼ばれしていた。
男勝りで普段は活発な子が着物を着て恥ずかしそうにしている姿は新鮮で何だか見ていてドキドキしたものである。
その子の家は昔ながらの豪農でとにかく広い家に住んでいた。
一人娘だったのでとても大切にされており、ひな祭りの日はお母さんがとても張り切っていた。
土間から続く立派な玄関を入るとそこには豪華七段飾りのひな人形があって普段そんなものを見ることが無いのであまりに立派さにとにかくほへ~とあほのような声しかでなかった。
いつもはゲームのコントローラーを奪い合ってけんかするが、この日ばかりは幼馴染はとてもしおらしかった。
着物が汚れるから外で遊ぶこともダメで何をしていたかというとトランプでババ抜きや七並べをしたり、カルタをしたりと実に穏やかな遊びに興じていた。
それなりに白熱してくると彼女がいつものようにだんだん乱暴な口をきき始めるのがおかしかった。
そうやって遊んでいると彼女のお母さんがおやつを用意してくれた。
雛あられや菱餅と白酒代わりのカルピスという豪華版だった。
菱餅は普段食べる機会が無いので見るのも珍しく、食べてみるとほんのり甘い餅で癖になりそうな味だった。
普段はかなり薄く作られていそうなカルピスもこの日ばかりはかなり濃くてお母さんのテンションが上がっているのを感じた。
散々楽しんで家に帰るとひな祭りとは全く無縁で晩御飯も通常運転だと、
あ~あ自分に女の兄妹がいればなぁと思ったものである。
大人になってからは姪っ子が産まれてからひな祭りをするようになった。
毎年実家に親戚が集まって盛大に祝ったものである。
日ごろまず飲まない白酒も縁起ものだと言ってカパカパ飲んでいた。
あのみりんの風味が効いた独特の甘さも今となっては懐かしい。
もう姪っ子も大きくなったのでお祝いはしなくなった。
身近に小さな子もいないのでひな祭りとは縁が遠くなるのかなと思うとちょっぴりさみしい。
そんなことを考えながら昨日の夕飯の事を少し。
寒の戻りか肌寒くお昼にはあられが降るような不安定な天気だったので温かい食事にしたかった。
そうなると一番手軽で経済的なのは鍋である。
うん、そうしようと方針が決まったので買い物をして帰宅。
昨日の鍋の主役は鶏のぶつ切り。
近所のスーパーで地物の鶏肉を取り扱っているのでよく買う。
入れる野菜は白菜とエノキ、ニンジンといたってシンプル。
後は豆腐を用意した。
それから大根の根元部分をひたすら摺り下ろしておく。
副菜は効率よく残りの大根を使う。
皮を剥いて千切りにして水に晒す。
ピンとなったら水を切ってボウルにあける。
そこにホタテの缶詰を加えてマヨネーズとレモンで味を付ける。
仕上げに黒コショウを振って大根とホタテのサラダの出来上がり。
鍋の用意を始めてからここまであっと言う間の早業である。
さぁてでは始めましょうかと居間に鍋と材料を運ぶ。
鍋に昆布を敷いて沸騰直前まで温める。
その間に何はともあれまずは晩酌。
昨日のお酒は日本酒、ぬる燗につけてクウッと飲むと喉がクッとなって温かい液体が胃のあたりにじんわりと伝わる。
クフゥ、日本酒スタートも潔くていいなと思いながらサラダをつまむ。
大根のショリショリした歯ごたえとホタテの貝柱の旨味がギュッとしてなかなか粋な味である。
仕上げに振った黒コショウが全体の味を引き締めておりちょっとしたポイントだなと思った。
そうこうするうちに鍋が沸きだしたので昆布を取り出してそこに鶏肉を投入。
野菜もドサドサと入れて煮えるまで気長に待つ。
お酒のお代わりをしたりサラダを食べていたらそのうちに鍋がクツクツと鳴りだす。
そこに大根おろしをドサッと大量に乗せて雪見鍋の完成である。
大根おろしを絡めながらポン酢で鶏肉を食べるとあっさりとした味わいでしみじみ美味いと思った。
野菜と大根おろしの相性も良くて何気ない鍋が豪華になった気がした。
お肉を追加しながらモリモリと食べて締めにうどんを入れて鶏の出汁と大根の旨味が出たつゆを最後まで堪能した。
食べ終えると身体がポカポカになっており部屋も鍋の熱気で暖まって何とも言えない良い気持ちになった。
まだもう少し鍋を楽しめる時期だなぁと思いながら片づけをした。
さぁて今日は何を食べようかな。
久しぶりに菱餅を買ってみようかな。
明かりをつけましょぼんぼりに~。
お祭りの日はテンションが上がるなぁ。
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