テリヤキは江戸の昔から。
先日から続いている近所のアパートの新築工事だが今日も今日とて朝の八時から元気よく騒音が聞こえてきた。
以前に書いたことだが職人さんの中にやたら気の短い人がいて常に怒鳴っているがこれにもだいぶ慣れてきた。
今はちょうど十時の休憩なのか工事の音は止んでいるが短気の職人さんの声はビンビンに響いてくる。
そうか、このおじさんは地声が大きいのだなと気が付いた次第である。
そんな工事の騒音をかき消さんばかりの大音声だがついさっきも「よいよ、このぽんすうがー!」と苛立つ声が響いてきた。
おお、ずいぶん久しぶりにぽんすうを聞いたなと思って工事現場の方を思わず見てしまった。
ぽんすうというのは私の地元の方言でマイルドに翻訳するとおバカさんとかお間抜けさんという意味で日常使いする言葉ではない。
子どもの頃はいたずらをして父に叱られる時によいよお前はぽんすうじゃのうと言われるとああ、これは激怒しているなとわかって身が縮んだものである。
私はあまり悪さをしてこなかった方なので怒られるときは父も力が入るのか顔を真っ赤んにして怒っていた。
一度弟がまだ小さかった時に庭に生えていた雑草を適当に摘んでそれをすり鉢で摺り下ろして水道水と混ぜて、メロンジュースだと言って飲ませた時にはまあ叱られた。
その時も散々ぽんすうと罵られたなぁと騒音おじさんの暴言で苦い記憶が蘇ってほんのり苦い気持ちになった。
懐かしの方言とともにあまり人を罵倒するのは良くないよなと思った。
あまりにも耳に触るのでお昼からは出かけることにしたい。
ついでに晩御飯の買い物をしようと思いながら昨日の献立は何だったっけと思いだすことしばし。
そうか鶏の照り焼きと梅オムレツだったなと思い当たった。
作り方はいたって簡単だがせっかくなので少々ご披露したい。
鶏むね肉をスライスして塩コショウをして片栗粉をまぶしておく。
醤油、砂糖、みりん、塩、酒で照り焼きの調味料を作る。
フライパンに油を敷いてそこに鶏肉を並べる。
両面がこんがりするまで弱火でじっくり焼く。
火が通ったらそこに合わせ調味料を回しいれる。
ジュワーッと何とも食欲をそそる音がするので火加減を強めてタレを鶏肉に絡めていく。
少し煮詰めて鶏肉が照り照りしてきたら出来上がり。
付け合わせのキャベツの千切りと一緒にお皿に盛る。
それから副菜を手早く作る。
まずは卵三個を割る。
そこに叩いた梅干しを一個加えてシソの千切りも入れる。
味付けは梅昆布茶を使う。
これをよく混ぜたら温めたフライパンにバターをドカンと溶かして一気に焼いていく。
オムレツを作るコツは思い切りと手首のスナップである。
火加減は終始強火、流しいれた卵を炒めながら全体が半熟になったらトントンとフライパンの柄を叩いて成形していく。
見事に紡錘形になったら梅オムレツの完成。
よし、こんなもんかなと言いながら居間にご飯を運ぶ。
料理を作るまでは休肝日にするのだと決意していたが照り焼きの香ばしい香りをかいだらその思いがガラガラと瓦解した。
まあ明日からね…と言い訳しながら日本酒をぬる燗につける。
ではいただきますと猪口に口を付けてチュッとお酒を飲む。
くふぅ、美味いっ!と思わず声が漏れる。
喉の奥がじんわりと温かくなって胃のあたりまでホカホカしてくる。
口開けは大抵ビールだけどたまには日本酒スタートも悪くないなぁと思ってオムレツに箸を伸ばす。
パクッと食べると卵のまろやかさと梅の酸っぱさの競演が嬉しい。
シソの葉もさっぱりした食感に一役買っている。
味付けは潔く昆布茶だけだが梅干しの塩気もあるのでいい感じだった。
このオムレツのネタ元は天才少年料理人が数多のライバルと料理対決をするマンガからきており、フランスの巨匠と戦った時に披露したものである。
このマンガは荒唐無稽なアイデアも多いが秀逸な料理も登場するので子どもの頃は貪るように読んだ。
昨日食べた梅オムレツは大当たりでかなり美味しかった。
いやぁ陽ちゃんやるじゃんと思いながらメインの照り焼きを食べる。
ハムッと食べると照り焼きダレの甘じょっぱい味に鶏肉が包まれておりかなり食べ応えがある。
少し濃い味になってしまったが食べた後にお酒で追いかけると悪くなかった。
付け合わせのキャベツをタレに絡めながら食べると口直しにちょうどいい。
うん、照り焼きは簡単だけどごちそう感があっていいねと思いながらモグモグ。
途中でお酒を追加してじっくりと楽しんだ。
きれいに食べきった後のお腹の具合は八分目と言ったところ。
まあ、この位がちょうどいいよねと思いながらご馳走様。
照り焼きと梅オムレツとしょっぱいものの組み合わせでのどが渇いたので口直しにアイスを食べてしまった。
いやぁ、結局がっつりカロリーを摂ってしまったと思ったが満足したのでよしとする。
ふぅ、満足度の高いご飯でした。
さぁて今日は何を食べようかな。
最近海のものを食べていないので魚かな。
この何を食べようか考えている時間が本当に好き。
ああ、食いしん坊の血が騒ぐ。
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