![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/128545091/rectangle_large_type_2_4085db203879dcc1696f0bf4028add0b.jpeg?width=1200)
『あの子もトランスジェンダーになった』刊行中止についての諸説
『あの子もトランスジェンダーになった SNSで伝染する性転換ブームの悲劇』が刊行中止になったことがニュースになった。
米国で2020年6月に発売されたシュライアー氏の原書に目を通したが、10代の少女に与える「トランスジェンダーイデオロギー」の影響に対し、実証的な取材が行き届いた本だった。私も著書で、原書のポイント紹介に数ページほど充てている。
その引用を見たKADOKAWAの担当編集者から数カ月ほど前に連絡があり、国内で翻訳本が刊行されれば、推薦することになっていた。評価すべき内容だからだ。
今月3日早朝、「なんとか出版できる」と連絡があった。安堵した矢先の5日夜に発売中止が決まった。出版中止を求める圧力めいた電話などで追い詰められていたようだった。
ただ、米国でも著者のシュライアー氏や出版社に対する「攻撃」はあったが、彼女らは反論し、耐えていた。KADOKAWAの担当編集者は努力しただろうが、その上層部が圧力に屈したのであれば、ふがいなく情けないし言語道断だ。
(中略)
日本社会はこうした事態には至っていない。トランスジェンダーイデオロギーが浸透する前に警鐘を鳴らす上でも出版すべき本だった。KADOKAWAは発売を告知していたのだから、急転直下取りやめとした理由をより丁寧に説明すべきだ。ぜひどこかほかの出版社で出してほしいと思う。
そもそもSNSでシュライアーさんの著書に批判的な投稿があるが、原作を読んだ上で批判している人はどれだけいるだろうか。原作の中身についての言及は目立たない。ほとんどの人が読んでいないのだろう。
この状況に驚きを禁じ得ない。みんなが読める状態にして、その後で反論すべきは反論すればいい。言説には言説で反論するのが成熟した社会だろう。出版社に抗議して委縮させるのは極めて卑怯な行為だ。
シュライアーさんの著書については心と体の性が一致しないトランスジェンダーの状況をとらえていると評価する声もある。英タイムズ紙や英エコノミスト誌の「年間ベストブック」に選出されるなど「賛」がある。日本ではヘイト本扱いでよいのか。
論争的な本だからこそ、両極の意見がある。議論が不要となれば、学問の存在意義すらなくなる。賛否両論の「否」だけをとらえて、左翼系の市民団体が街宣活動を行うような事態を許せば、今後出版社は委縮して論争的な書籍を扱いにくくもなる。
トランスジェンダーの問題を巡っては、懸念を発すれば、擁護する側から議論が封殺される傾向にある。トランスジェンダーを増やそうとして、何か知られたくない不都合な真実でもあるのだろうか。シュライアーさんの著書を通じ、当事者の情報公開を行えば、トランスになるにしても、より納得してなれるだろう。
KADOKAWAジェンダー本の刊行中止「抗議して委縮させるのは卑怯」武蔵大の千田有紀教授より
重要なのは、こうした人たちが「実際に何を言ったか/言おうとしているか」ではない。トランスジェンダーを傷つけることを言うかもしれないという可能性があるのだから、発言できないようにすべきであり、本も発売中止されなければならないというわけだ。
もちろん誰かを意図的に傷つけたりすることは許されないし、傷つける意図がなかったとしても、誰かを傷つけることは避けるべきだろう。しかし、他の国では翻訳されている本が出版されないということは、「知る権利」を侵しかねない。
「著者の思想がおかしい」「内容に誤りがある」ということであれば、出版停止を求めるのではなく、書籍を読んだうえで、真っ向からそうした議論をすべきではなかったのか。
「海外で話題のトランスジェンダー本が日本で発売中止」
社会学者が「とうとうそこまできたか」と思ったワケ より
※1/26 「区議・政党関係者による言及」を追記しました。
ある編集者とのやり取り
この件について記事を書くうえで、ある編集者とのやり取りを通してわたしの考えを述べておく。
「進行中の書籍のプロジェクトを頓挫させれば」?!
— Gwen🦫 (@000Gwen) December 4, 2023
自分の担当した『射精責任』はあんなに盛り上げてたのに、他人の仕事は頓挫させてもいいってことなんですかね…… https://t.co/RegFSU8BQ9
![](https://assets.st-note.com/img/1706059565288-7DJGZ92k4a.png?width=1200)
https://x.com/marumerumerume/status/1731706307856736573
添付していたスクリーンショット
①https://archive.li/AF9fp
②https://archive.li/hPQV2
自分の仕事は自分の仕事なんだから、当然盛り上げますよ。ただし社内でこのような本の企画が提出されていることを知ったら、私は全力で止めますし「頓挫」させることを目指します。私は平社員なのでそれが功を奏するとは限りませんが。一市民としてそのように行動します。 https://t.co/65CIKfO6Ua
— ふじさわ📚編集者 (@FUJISAWA0417) December 5, 2023
ふじさわさんは原書の IrreversibleDamegeを読んで内容を確認した上でおっしゃってるんですか?
— Gwen🦫 (@000Gwen) December 5, 2023
具体的な引用もなくヘイトと断ずるのであれば、「本を読まずに論じることが習慣化している人がこんなに多いんだ…というのは、ちょっとショックというか、かなしみもあります」がブーメランになるのでは? https://t.co/YltlfbCONo pic.twitter.com/b075dWQ8F8
![](https://assets.st-note.com/img/1706001139829-8CmgYfI1NN.png?width=1200)
https://archive.li/uMZWl
未成年に対するジェンダー肯定医療のデメリットについて考察する本をそこまで読ませまいとするのは何か隠蔽したいのですか?
— Gwen🦫 (@000Gwen) December 5, 2023
「本って取扱説明書付きで読むものではない」「社会調査なくして、社会課題の解決はありえない」という、かつてのご自分の発言をいま一度よくお読みになって下さい。 pic.twitter.com/aDXw77JByu
![](https://assets.st-note.com/img/1706001221183-7tFpBRcqAY.png?width=1200)
https://archive.li/8p8mH
![](https://assets.st-note.com/img/1706001240826-XQp15BAbSr.png?width=1200)
https://archive.is/aDWbI
なぜ私が嫌がらせ目的や話を聞く気がない人たちのために原書から該当箇所をスクショして反論のための論文を引用して…ということをやらなきゃいけないのでしょうか。本書の立場を支持するならご自身がまずその根拠を明らかにしてください。私からは『トランスジェンダー問題』という本をお勧めします。 https://t.co/7nVtkiA867
— ふじさわ📚編集者 (@FUJISAWA0417) December 5, 2023
ですから、読んでから判断するために必要な本への出版妨害をやめろと言ってるんですよ。
— Gwen🦫 (@000Gwen) December 5, 2023
そして当然のことですが、ある本を読んだからって100%同意するとは限りません。
『トランスジェンダー問題』では刑務所廃止論にも言及されていましたが、それも込みで支持してるんですか? https://t.co/K1Gsk7Oulu
わたしが問題視しているのは、「ヘイターか否か」の白黒思考と、自分の仕事だけは別だという独善的なダブルスタンダードと、具体的な批判を放棄したままヘイトとレッテルを貼る不誠実で怠惰な姿勢です。
— Gwen🦫 (@000Gwen) December 5, 2023
この対話の後、この編集者にはブロックされてしまった。
この本の原著は海外で話題になっていたので以前から気になっていて、翻訳版が出版されるのを楽しみにしていた。しかしその本が出版を目前にして目の前で取り上げられたということに、わたしは今でもとてもがっかりしている。
『あの子もトランスジェンダーになった』は、書誌情報が掲載されてから刊行中止の判断がされるまで3日も経っておらず、動きがとても速かったので、おおまかな流れを記録しておくことにする。
おおまかな流れ
KADOKAWA翻訳チームの告知
2023年12月3日の午前、KADOKAWA翻訳チームは以下のような告知を投稿した。(この投稿は削除されていたため、archiveからスクリーンショットを取得している)
![](https://assets.st-note.com/img/1705994922325-ALscKqlitf.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1705995184728-ft0oFMBi97.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1705995227177-4ZjADQmLch.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1705995272983-LrWeu6NuX0.png?width=1200)
これらの投稿に対して、出版関係者や大学関係者やLGBT活動家たちが、その本を「ヘイト本」と呼んだり、本の刊行に抗議する投稿をしていた。
刊行告知に対する作家や編集者たちの抗議
賛否両論の意見はこちらで確認できる。
【2/13 追記】上記togetterは削除されたため、魚拓のURLを添付する
(追記終わり)
そして「#KADOKAWAはヘイト本を出すな」や「#1206トランス差別KADOKAWA抗議」というハッシュタグが使われるようになった。
KADOKAWA本社前での抗議の呼びかけもあった。
![](https://assets.st-note.com/img/1705977799597-9BrAXocQlo.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1705977850156-AuKfHA36co.png?width=1200)
【1/26 追記】区議・政党関係者による言及
現職の区議や政党関係者のなかには、具体的な説明もなく「疑似科学」「トランス差別に加担する」「ヘイト本」「トンデモ本」と決めつけて批判したり、ハッシュタグを用いて出版に抗議している人もいた。
小池めぐみさん(杉並区議会議員・日本共産党)
![](https://assets.st-note.com/img/1706235332817-b7yU1C1w8T.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1706233753055-gm3oDQ7W7J.png?width=1200)
https://archive.li/MmPih
大貫はなこさん(台東区議会議員)
![](https://assets.st-note.com/img/1706235421061-cglnwD3dxc.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1706233914001-8HnGfp7tCE.png?width=1200)
https://archive.li/rOj8L
片岡ちとせさん(葛飾区議会議員・日本共産党)
![](https://assets.st-note.com/img/1706236312124-S8aSSSK5gz.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1706234030149-cNqKY6jj2V.png?width=1200)
https://archive.li/pdAhk
村田しゅんいちさん(衆院選福岡1区予定候補・社民党)
![](https://assets.st-note.com/img/1706236395636-EMfUUlxmoq.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1706234153677-CBqrOgchtZ.png?width=1200)
https://archive.li/JX46P
みなと隆介さん(大阪市淀川区・日本共産党)
![](https://assets.st-note.com/img/1706237075749-sa4pcVqnSQ.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1706234485258-EEuE2a2DfD.png?width=1200)
https://archive.li/8z3Ri
②https://twitter.com/doubleanti/status/1732005180588322990
https://archive.li/PcHv6
日本共産党 世田谷青年支部さん
![](https://assets.st-note.com/img/1706234624128-frndrKvYhX.png)
#1206トランス差別KADOKAWA抗議
米国で書店組合が「販売した事自体が誤りだった」と認めたほどのトランス差別的な本をなぜ角川が訳して販売するのか!?
至急企画を潰すべきです!
https://archive.is/oARYk より
日本共産党世田谷青年支部は、批判を受けた後に、投稿を削除して謝罪していたが、謝罪においても「角川がトランス差別的な本を出版しようとした」と断言しており、特に疑問を感じていないようだった。
![](https://assets.st-note.com/img/1706234963033-iULKJEUVJn.png?width=1200)
https://archive.is/Maj1m
②https://twitter.com/jcp_seta_youth/status/1732962872509227267
https://archive.is/9WtTV
個人的には、現職の区議や政党関係者がまだ出版前の本に対して、内容について具体的な指摘もなく「疑似科学」「ヘイト本」「トランス差別に加担する本」「トンデモ本」「トランス差別本」と断定していたことは、公人の振る舞いとして疑問がある。
それに加えて、後に削除されたものの「至急企画を潰すべきです!」という発言もあったことで、反対の論陣に対しては言論の自由を毀損しても構わないかのような一部左派の強固な姿勢が露になったようで恐ろしく感じた。
こういった意見を書くと極右/ネトウヨなどと批判されるが、わたしは左派を自認している。
わたしが右傾化したのではない。一部の左派リベラルが極左になっているのではないだろうか。(孫正義の「髪の毛が後退しているのではない。 私が前進しているのである」的な)
(1/26の追記ここまで)
「#KADOKAWAはヘイト本を出すな」というハッシュタグは実際にトレンド入りもしていた。それほど話題になっていたということだろう。
![](https://assets.st-note.com/img/1705977969842-4DGzPyvqob.png?width=1200)
刊行中止の発表
12月5日の午後あたりから、それまで予約購入できていた『あの子もトランスジェンダーになった』がオンラインショップで品切れになりはじめた。
その後、KADOKAWA翻訳チームが刊行中止を発表した。
学芸ノンフィクション編集部よりお詫びとお知らせhttps://t.co/DsewsyHD4J
— KADOKAWA翻訳チーム (@kadokawahonyaku) December 5, 2023
上記の件に伴い、当アカウントによる該当書籍に関連した一連のポストおよび皆様からいただいたコメントに対する「いいね」につきましては、本日20:30以降、随時取り消させていただきます。
それから間もなく、日本語翻訳版刊行中止の報が原作の著者にまで届き、言及されていた。
Kadokawa, my Japanese publisher, are very nice people. But by caving to an activist-led campaign against IRREVERSIBLE DAMAGE, they embolden the forces of censorship.
— Abigail Shrier (@AbigailShrier) December 5, 2023
America has much to learn from Japan, but we can teach them how to deal with censorious cry-bullies. https://t.co/ReogpOaQtD
私の日本の出版社である角川はとてもいい人たちだ。しかし『IRREVERSIBLE DAMAGE』に対する活動家主導のキャンペーンに屈することで、彼らは検閲の力を強めている。
アメリカは日本から学ぶべきことが多いが、検閲的な泣き虫いじめっこへの対処方法を日本に教えることはできます。
出版抗議・刊行中止に対するさまざまな意見
わたしは出版に抗議していた出版関係者やアカデミシャンやアライたちがどんな発言をしていたかの記録もとっている。しかし、それらを全てnoteの記事にするとあまりにも散漫になるし、スクリーンショットの羅列が膨大な量になってしまうので、どういう形で記録を残そうか考えあぐねていた。
今回は「出版に対する抗議をどのような主張で擁護していたか」を中心にして観察した結果に絞ってまとめたいと思う。
というのも、実際に「#KADOKAWAはヘイト本を出すな」「#1206トランス差別KADOKAWA抗議」というハッシュタグを使って抗議していた出版関係者やアカデミシャンやアライと、本が刊行中止になったことに言及する左派リベラルの人たちは、大部分では重なっているものの、なんだか後者(主に左派リベラルの人たち)が前者(ハッシュタグやデモで抗議した人たち)の振る舞いを歯切れ悪くもかばっているかのように見えたからだ。
※わたしがここに掲載するのは全て発信時、公開投稿になっていたものばかりである。スクリーンショットにはURLやarchiveを併記した。
キャンセルされたほうがむしろオイシイ説
![](https://assets.st-note.com/img/1705980592180-fv761sx87A.png?width=1200)
https://archive.li/smFqC
![](https://assets.st-note.com/img/1705980610556-8JIWOqRrVK.png?width=1200)
②https://archive.li/QH1JP
このお二人の「キャンセルされたほうがむしろオイシイ」みたいな理屈が意味不明なんだけど 「検閲された口を封じられたっていう主張それ自体が、検閲された口を封じられたはずの側がより力を獲得する、そういう目的のためにされている。」ってコト?!さすがにアクロバティックすぎません?
![](https://assets.st-note.com/img/1706004236989-QDVGm3Znpq.png?width=1200)
https://note.com/philo_radi/n/ne2da785c938c より
該当部分のスクリーンショット
ゲラを送ったのはステマ説
これはステルスマーケティングでは? もしも実現していたら景品表示法違反に当たるケースも出たのではと思わざるをえません。
— Shohei H🏳️🌈🏳️⚧️🍉原口昇平 (@ShoheiHaraguchi) December 7, 2023
書籍担当者はもっと広範囲のインフルエンサーに声をかけていたはず。
第三者委員会を設置し、出版取りやめ発表までの全経緯をしっかり調査・公表してもらいたいです。 https://t.co/cUTg28LS8W
えっとさ、本当にこれは、やり方があまりにも汚いよ。
— Shohei H🏳️🌈🏳️⚧️🍉原口昇平 (@ShoheiHaraguchi) December 7, 2023
竹内久美子さんは「背後にいるのはあの勢力」などと言い、まるで何らかの黒幕がお金や権力を使って人を食い物にしながら法に食い込んでいるかのように暗示している。
版元が実はカネとコネでインフルエンサーマーケティングしようとしてたわけ?
この思い込みがすでにデマにやられている。性別違和がある子を支援する保護者や医療者が、「ホルモン治療や外科手術をしたいと言う」「未成年」に、「治療のデメリットや後遺症も伝え、時間をかけて真剣に考えさせ」ず、「トランスの良い面しか見せず都合悪い事例は封じて隠」している、わけないでしょ https://t.co/6AMr4dohPO
— Shohei H🏳️🌈🏳️⚧️🍉原口昇平 (@ShoheiHaraguchi) December 7, 2023
これは単なる献本ではありません。三枝さんの記述をそのまま引用するなら 「発売になった暁には妨害が予想されるので、SNSで助太刀してほしい」という依頼です。問題はこのとき対価となる利益や便宜の提供可能性が示されたかどうかですが、この三人の中には自著を角川書店から出している人がいます…… https://t.co/93ouqSM28A
— Shohei H🏳️🌈🏳️⚧️🍉原口昇平 (@ShoheiHaraguchi) December 8, 2023
他の人も指摘してるけど、これ、今年の10月から始まったステマ規制にひっかかってしまうから、慌ててKADOKAWAが商品(本)を引っ込めたのでは?https://t.co/LwLTeSrJIW https://t.co/Ev2dXCOP2u
— Hironobu SUZUKI (@HironobuSUZUKI) December 7, 2023
これな。 pic.twitter.com/LTMN2LHoe3
— Hironobu SUZUKI (@HironobuSUZUKI) December 7, 2023
インフルエンサーに依頼… pic.twitter.com/hRu7Hoyptf
— Hironobu SUZUKI (@HironobuSUZUKI) December 7, 2023
たぶんこれを知ったKADOKAWA社内のコンプラ責任者は「なんてことをしてくれてんだ…」と頭抱えたろうな。
— Hironobu SUZUKI (@HironobuSUZUKI) December 7, 2023
わたしは出版業界の人間じゃないんで分からないんですけど「ゲラ送付」「献本」はステマなんですか……?
抗議者たちは国家権力ではないので焚書/検閲/言論弾圧にはあたらない説
![](https://assets.st-note.com/img/1705982118803-M1RjVk4AE4.png?width=1200)
https://archive.li/PJYOq
「焚書」は国家によって行われれば大問題ですが、市民が差別を煽動する言論に抗議するのは自由ですよ。 https://t.co/A42TprL8sl
— ふじさわ📚編集者 (@FUJISAWA0417) December 5, 2023
KADOKAWAの例の本の発売中止の件について、焚書だの言論統制だの言う声があるけど、全然違う。本来は政治権力による思想・言論統制策の事を指すので、差別される側からの反発により世論が動いた今回の流れには当てはまらない。
— 小野美由紀 (@MIYUKI__ONO) December 7, 2023
私は、単純にタイトルも副題も差別・中傷的で刊行に値しないと思う。
権力を持たぬ一般市民の批判や抗議は権利であり、それに応じようと屈しようと民主主義の範囲内での話。それを焚書だとか弾圧だとかよく言うわ。
— mold (@lautrea) December 5, 2023
「焚書」や「検閲」というのは、基本的に権力が強制的におこなうもので、一般市民や被差別当事者が差別・偏見を助長しようとする内容に反対するというのは、それにあたらないばかりか、むしろ表現の自由に保障された批判、論評行為だと考えられる。それを書評家が問題視するのは不見識きわまりない。
— 小野寺系 / Kei Onodera (@kmovie) December 8, 2023
差別を許せない市民からの「批判が殺到した」ことで刊行中止となったのであって、権力による「検閲」とは何の関係もないですね。 https://t.co/ZS2TfkdbBa
— 影書房 (@kageshobo) December 7, 2023
「検閲」も「言論弾圧」も、政府などの権力側が権力を行使して行うものであり(企業上層部によるものは「社内検閲」)、市民からの批判によって特定の出版企画が撤回されるのは「検閲」でも「言論弾圧」でもありません。
— 山崎 雅弘 (@mas__yamazaki) December 7, 2023
しかし統一教会系の世界日報がこの著者サイドですか。https://t.co/A6dHTnRTxB
#言論弾圧 がトレンドに上がっていたから何事かと思ったら……。
— 服部弘一郎 (HATTORI Kouichirou) (@eigakawaraban) December 5, 2023
弾圧というのは「上から下」に行うもので、出版に対する弾圧というのは権力による出版妨害を指す。民間からの抗議によって出版社が本の刊行を取り下げることは、一般的には弾圧とは言わないでしょうね……。
憲法の名宛人は国家なので、21条に規定される表現の自由、検閲の禁止は国家権力に対するもの。そんな珍説というか謬説は何百万回も言われていない。ありうるとすればおまえのようなアホが何百万回も同じ間違いを犯しているだけ。残念やったなアホで笑 https://t.co/yhig2lDVt6
— Fumio Namba (@nanbafumio2) December 8, 2023
![](https://assets.st-note.com/img/1705982425653-gKQKOA6mED.png)
https://archive.is/6y4O6
![](https://assets.st-note.com/img/1705982736659-E4cQBMCHD9.png)
https://archive.is/iTeOa
![](https://assets.st-note.com/img/1705990538957-EXjzuVOWAQ.png?width=1200)
②https://archive.li/O7OMo
③https://archive.li/5D9GL
④https://archive.li/QSEgk
⑤https://archive.li/qMlvT
⑥https://archive.li/JGJv0
たしかに刊行中止は「焚書」には当たらないのかもしれない。
「焚書」するには、まずは 本 が 出 版 さ れ な け れ ば な ら な い のだから。まだこの世に存在しない本は燃やすことすらできない。
出版中止の判断をしたのはあくまでもKADOKAWAなので出版の自由が損なわれたわけではない説
批判を受けて中止をする判断をしたのはKADOKAWAであって、出版の自由が損なわれたわけではありません。
— 小野寺系 / Kei Onodera (@kmovie) December 9, 2023
自由を奪えるほどの強制的圧力をかけられる「私的権力」とは何なのでしょう。 https://t.co/ntKjqdFvHt
批判者たちにそんな強制力はないんだから、出そうと思ったら出す自由は普通にあったんですけど。 https://t.co/xtTQhBr7YD
— 小野寺系 / Kei Onodera (@kmovie) December 9, 2023
「刊行できなくなった」というのが事実誤認です。批判を受けて出版社が検討をおこない、当該書籍の出版を取りやめる判断をしたということです。出版をする選択肢も当然あり得ました。 https://t.co/lE5HrObmiT
— 小野寺系 / Kei Onodera (@kmovie) December 9, 2023
本を出版するという未来の読者との約束を「キャンセル」したのはKADOKAWA
![](https://assets.st-note.com/img/1705982967211-iM2mDaSvw8.png?width=1200)
②https://archive.li/DLTDg
③https://archive.li/OcvKc
出版を取りやめる自由もある
![](https://assets.st-note.com/img/1705983000330-oYRCiYzrw8.png?width=1200)
https://archive.li/uT9Ib
②https://twitter.com/lchannel_/status/1732386193260552638
https://archive.li/1YAZ1
![](https://assets.st-note.com/img/1705983952300-v7froWptzv.png)
https://archive.is/QGwiZ
津田大介さんの意見
反LGBT的な言説を流布してるインフルエンサーにゲラを先に見せる「売り方」が悪かった
![](https://assets.st-note.com/img/1705981676798-0OOJSRkOtX.png)
https://archive.li/lWUAS
キャンセルカルチャーの話とは切り離して考えたほうがいい
![](https://assets.st-note.com/img/1705996535088-MPcp5xg7b9.png?width=1200)
https://archive.li/mvheH
![](https://assets.st-note.com/img/1705996574667-wYL5bzbh6m.png?width=1200)
https://archive.li/72FZx
②https://x.com/tsuda/status/1732036805644767598
https://archive.li/VGY7W
つーかこの件でKADOKAWAも翻訳権手放さざるを得なくなるだろうし、これだけ話題になった書籍なんだからそれこそ嫌韓嫌中ヘイト本出してる出版社が手をあげるでしょう。講談社とか小学館とか大手だってそういう曰く付きの本は散々出してきたわけでね。そんなのありもしない「圧力」で潰せるわけがない。
— 津田大介 (@tsuda) December 5, 2023
ステルスな世論工作
KADOKAWAのゲラ送付の件、担当編集者(あるいは営業担当?)と、中止の判断を行った現場責任者(経営幹部)が実名で詳細な経緯説明をするべき案件でしょう。それが文化に携わる業者としての最低限の責任では。送付先リストから見える意図が明確でSNSを使ったステルスな世論工作と大差ないですよこれ。
— 津田大介 (@tsuda) December 8, 2023
事前に有識者にゲラ送付して推薦してもらう行為は出版界では定着しているものでそれ自身は何ら問題はない。今回は①海外で内容面で多く批判にさらされた本を②それを支持する極端な政治イデオロギーのインフルエンサーたちに集中して送ったことの
— 津田大介 (@tsuda) December 8, 2023
出版社としての狙いと同義的責任が問われるわけです。
![](https://assets.st-note.com/img/1705988565036-YdL0dhFPF9.png?width=1200)
https://archive.li/j6xq6
前述しましたが僕は原則的にこの本は出版されるべきだったと思う立場ですが、その場合も①書名は直訳にする、②ツイートやSNSマーケでやらかしたことの説明責任を果たす③海外での批判的反響も取り上げた中立的な解説文を最後に入れる、という諸条件は満たす必要はあると思っています。
— 津田大介 (@tsuda) December 8, 2023
刊行中止になった幻の『あの子もトランスジェンダーになった』は「表現の不自由展」に展示されますか?
極右/保守/宗教右派/統一教会案件だ……!(キュピーン)
きたー
— みつを_Mitsuwo🇵🇸🇺🇦🇯🇵 (@ura5ch3wo) December 7, 2023
アビゲイル・シュラアー
反トランス
KADOKAWA
new!→旧統一教会 https://t.co/vBRolhOqeH pic.twitter.com/rliE1oKhpJ
例の本、統一教会案件でもあった。
— 星 暁雄 (ITと人権) (@AkioHoshi) December 9, 2023
極右やカルトとトランス差別は、つながっている。
まともな人や会社は、うかつに手を出す前によく調べた方がいいです。 https://t.co/ToXOSckzp8
『あの子もトランスジェンダーになった』発売中止騒動を考える:ロマン優光連載269 https://t.co/woJKlC2XZP
— プンクボイZZ aka ロマン優光 (@punkuboizz) December 8, 2023
この『あの子もトランスジェンダーになった SNSで伝染する性転換ブームの悲劇』。この本の原書は「Regnery Publishing」という出版社から発売されている。長い伝統を持つ、保守的な思想を支持する出版社だ。
自著の序文で文鮮明と統一教会への信仰を宣言する熱心な統一教会の信者であるジャナサン・ウェルズによる反進化論本。トランプ支持者であり、20年の米大統領選挙の結果に不正があった疑いがあると主張した共和党のジョシュ・ホーリー上院議員の本。元ワシントンタイムズ(統一教会系の出版社で記事の内容の真実性や人種偏見などの偏向がよく問題とされる)記者による文鮮明脱税事件の擁護本。反共主義者、キリスト教右派や白人至上主義者の著作。どこか特定の「保守」派閥や団体とベッタリというわけでもなく、共通する保守的な価値観があれば何でも連帯するような姿勢で、アメリカを腐敗させる「左翼」的なものと戦うという信念のもと、こうした傾向の本を長年に渡って出版してきた老舗の保守系出版社である。
炎上して話題になりそうだったら何でもいいみたいなタイプの出版社とは違うのだ。執筆意図に関する著者自身の主張はさておき、出版社的には反トランス的な狙いがあって発売した疑いは濃厚だし、読者にはそのように「使う」ものが多い本なのは確かだ。
言論の自由というのは人権の尊重より上には来ない説
そう、KADOKAWAが謝って出版をやめればそれで終わり、という問題ではない。言論の自由というのは人権の尊重より上には来ないんだと、みんなで再認識するきっかけになればいいと思う。 https://t.co/2g1iltToap
— 泌尿器科医こばとも (@urokobatomo) December 5, 2023
「KADOKAWAは結果まで責任取れよ」
![](https://assets.st-note.com/img/1705992077931-p0djnLturn.png?width=1200)
https://archive.li/oC0lf
KADOKAWAの内部で、しんどい思いをしている人も多いと思います。会社として掲げている理念も、出版を作る人間としてのプライドも、あると思います。力になれることがあったら声かけてください。小さい社内の勉強会でもなんでも。謝るだけでなく、繰り返さないために。https://t.co/rnISSnsZxq
— 高井ゆと里@『トランスジェンダー入門』発売🎉 (@Yutorispielraum) December 5, 2023
KADOKAWAが翻訳権を捨てたとしても、すぐに右翼の差別扇動出版社が出すでしょう。だから出版業界全体の問題として、ちゃんと考えてほしいと思います。
— 高井ゆと里@『トランスジェンダー入門』発売🎉 (@Yutorispielraum) December 5, 2023
ヘイト本が「売れる」のは、トランスジェンダーに限った話ではありません。いわゆる「中韓ヘイト」を野放しにし、大手すら乗っかってきたのが今です。今回の「翻訳チーム」の憎悪扇動には、端的に恐怖を感じました。二度と繰り返してはならないし、問題はトランスヘイトだけでないことを再確認したい。
— 高井ゆと里@『トランスジェンダー入門』発売🎉 (@Yutorispielraum) December 5, 2023
そんな本よりもまず『トランスジェンダー入門/問題』を読みましょう
出版されないと議論のしようがないという人はまず、ショーン・フェイ『トランスジェンダー問題』(明石書店)などを読んでみてはどうだろうか。そうすればたぶん、例の本の出版に反対する声がなぜでてくるのか、かなりわかると思う。そのうえで表現、出版の自由を改めて検討してもよいのでは。
— Shotaro TSUDA (@brighthelmer) December 8, 2023
念の為に書いておくと、フェイの本を読んだからといって、例の本の出版に必ず反対するようになるわけではないと思う。ただ、その判断がきわめて難しい問題をはらんでいるということは理解しておくべきではなかろうか。
— Shotaro TSUDA (@brighthelmer) December 8, 2023
「LGBTのこと理解したい」と願うなら、『トランスジェンダー入門』や『トランスジェンダー問題』を読めばいい。極右のレイシスト/セクシストを巻き込んでトランスに対する嫌悪や差別を煽動しようと企画してたカドカワを擁護する論陣を張っておきながら「良き隣人」もクソもない。もう無理。
— ゲンヤ (@GenyaFukunaga) December 9, 2023
思想の違いはあれど、「マイノリティに対する差別や偏見の解消」を目指して共に働いてた人たちが、「表現の自由」の擁護を標榜してカドカワの出版をサポートする側に立ってるの、どう考えても口先だけで「理解」を唱えながら足元で人権や尊厳を踏みにじってくるようにしか見えない。心底失望した。
— ゲンヤ (@GenyaFukunaga) December 9, 2023
『トランスジェンダー問題』『トランスジェンダー入門』『反トランス差別ブックレット』『フェミニズムってなんですか』『ウィッピングガール』、ジュディス・バトラー、フーコー以外のオススメを教えてほしい。
性別移行を後悔して、何が悪いんだ
![](https://assets.st-note.com/img/1705989477094-8pZYFfi3Pc.png?width=1200)
②https://archive.is/F7D0S
③https://archive.is/0RRP0
④https://archive.is/zopxq
⑤https://archive.is/YYc0A
おわりに
わたしはトランスジェンダーの権利擁護を熱心にする人たちの動きをSNSで観察しており、出版に関する騒動はこれまでに何度かあった。
以下のようにnoteで記録してもいる。
『TERFと呼ばれる私達』では、企画段階でまだ誰も内容を確認することができないにもかかわらず、出版前の本のクラウドファンディングが中止になった。
今回のKADOKAWA『あの子もトランスジェンダーになった』のような、出版物に対する抗議やキャンセルは初めてではないし、むしろ今までのこういった動きがエスカレートした結果だとわたしは考えている。
英語力マウントなのか、英語で原著を読めばいいという意見も多数見られた。しかし、それは翻訳という仕事の意義を軽視し全否定している。
それに日本語の翻訳版では、発達障害専門の精神科医師の岩波明氏による監修があるはずだった。
KADOKAWA本社前での抗議の呼びかけをしていたかぱぱんさんはこのように発言していた。
原著で読めるエリートにはデマとヘイトで溢れる本を「出すな」と私ら民草より先に言って欲しいですよ。なんのための知識と学問なの。 https://t.co/8TOoT9jKX1
— かぱぱん (@kapapanpan) December 7, 2023
エリート階級によるパターナリスティックな干渉に盲従することを是とする宣言のようで、あまりにも権威主義だと思う。
一般市民にも翻訳版を読んで知る権利はあるのに、インテリたちが勝手に内容を判断してゲートキーピングをするのは、一般市民を見下す大衆蔑視であり傲慢ではないのか?
ユン・チアン『ワイルド・スワン』にこんな一節があった。
毛沢東は、口先では「造反」を呼びかけておきながら、実際に人民が真実を知りたがったり懐疑的なものの見方をしたりすることを喜ばなかった。懐疑的な見方を身につけることは、私にとって啓蒙への第一歩であった。
懐疑的な見方をするには、片方の意見だけではなくて、反対意見も含めてさまざまな視点から考える必要がある。
性の多様性をうたう人たちが、意見の多様性を認めずに、出版すらも認めないというのはどんな皮肉なのだろう。
抗議者たちが自分で読みもしない本に「ヘイト本」だとレッテルを貼って、具体的な指摘もなく差別だと吹き上がり、ハッシュタグをトレンド入りさせ、KADOKAWA本社前のデモを企画するなどの圧力をかけておきながら、いざ刊行中止になったらさまざまな言い訳をして、あくまでも決断を下したのは出版社などと無責任にしらばっくれていた様子に、わたしは心底あきれている。
自分らのしたアクションが出版中止という形で実を結んだのだから、堂々と胸をはって誇ればいいものを。
もし「出版自体に抗議はしたものの、出版中止になるなんてたぶん誰も思ってなかった」ならば、抗議者たちにとっての社会運動とは、ただのガス抜きや憂さ晴らしに過ぎなくて、実現までは求めていないと認識してもよいのだろうか。
抗議者のなかには出版関係者やアカデミシャンもいたが、その人たちは足元に火が迫るまで、自分たちがいったい何をしていたのか理解できないのだろうかと、想像力の乏しさを残念に思う。
いいなと思ったら応援しよう!
![Gwen](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/84846057/profile_e88c8387fd6f5c2aa90b3e3d1e5483b5.jpg?width=600&crop=1:1,smart)