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しなやかでチャーミングであること。

一流の人って、しなやかでチャーミングな人のことじゃないか?

1ヵ月ほど前、iPhoneのメモにそんなことを書いていた。何を見て、聞いて、読んで、そう思ったのかはよく覚えていない。ただおそらく、自分がずっと携わっていたいなあと思える場所で、「一流」として活躍している人たちの話を聞くことができる機会があったから、そこから浮かんだメモだったのかもしれない。

メモを読み返して、思う。たしかに、自分が憧れを抱く人たちはみな、どこかしなやかさで、チャーミングな面を持っていた。それはたとえば、新しいものを拒まずおもしろがったり、自分の経験を惜しみなく伝えてくれたり、「すごい」と思ったら惜しみない拍手を送れる。そういう、気持ちよさがある。

そしてわたしは、そんな人たちを前にすると、不勉強な自分が恥ずかしく、たまらなく逃げ出したくなるような気持ちと、ずっとそばにいて話を聞いていたいと思う好奇心がせめぎ合う。心臓がきゅうっと軋むような、そんな不思議な心地になる。

JINS PARKの『「才能だけでは押し切れない」、「ずっと現場」。佐久間宣行が“生き方”を教わったシェフの哲学』は、読むとそんな心地になる。36年にわたり、日本のトップを走りつづけるフレンチレストラン「コート・ドール」のオーナーシェフ・斉須 政雄さんと、テレビプロデューサー・佐久間 宣行さんの対談記事です。

(斉須さんの著書『調理場という戦場』が今日届きました!)

佐久間 上に立つ人の姿でいうと、本(※)には「(最高の料理人は)ふだんから普通のように振る舞っているから、見つめる人にしか本当のすごさはわからない」と書かれていましたね。

斉須 そう、普通の人。「すごさ」を誇示したりしない、普通に生きている人なんです。ちょっと地味に見えるくらいなんだけど、忍耐力があって、決断力もあって……「すごい」ってこういうことなんだと、フランスで学びました。
※=『調理場という戦場』

「すごい(=一流)」人って、普通に生きている人。「すごさ」を誇示しない人。はあーーー……、と思わず感嘆のため息が漏れる。

斉須 僕はね、(腕組みして)こういう人にはなれない。いつも見習いのころの自分がいるんです。18歳で上野駅に出てきたときの自分、フランスで右往左往している自分が。だからずーっと怖いです。若い人に対しても、「置いてかれてたまるか」みたいな気持ちですよ。

すごい、人っていうのは、いまの自分と地続きになっているであろう「あの時の自分」の引き出しがものすごく多いんだろうな。その引き出しの数で「普通」を保っているに違いない……。

あの時の自分だったら? ってたくさん考えられる人が、しなやかでチャーミングな「一流」の人なんだろうなあ。かっこいい。憧れてきた人たちの正体が、改めてわかったような気がしました。

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のん
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