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ただしく消化器を使える自分の姿が想像できない

住んでいるマンションの消火訓練に参加した。

1カ月ほど前からエレベーターと掲示板にお知らせの貼り紙があり、火災報知器の検査があること、そのあと消火器の使い方をレクチャーする消火訓練がある旨が書かれていた。

てっきり強制参加だと思い緊張感を持って当日を迎えたら、火災報知器の検査のときに「自由参加ですが良ければご参加ください」と業者の人に言われる。「えっそうなの」と思いつつも参加することにした。

遠くで警報の音が聞こえたのを合図に、非常階段を下りる。全然自分たち以外に降りている人の気配を感じない。「まさかわたしたちだけなのだろうか」と地上に出ると、あとから2人ほどやってきた。

説明を受けた後、粉末の代わりに水が入ったデモンストレーション用の消火器で、実際に動作を確認する。火元(に見立てたモニュメント)から離れた場所で安全ピンを抜き、動かない方のレバーを使って消火器を持ち上げ、ホースを構える。レバーをぐっと押す。水が細く長く、勢いを持って出てきた。

業者の人によると、人は火災が起き、いざ消火器を使う場面に出くわすと、たいていパニックか、変にハイな状態になってしまうそうだ。そうなると火元から十分離れずに消火器を使い始めたり、ホースを構えずにレバーを押して、真下に噴射してしまう、といったことがよくあるという。

「炎は、みなさんが思う以上にしぶとく再燃もします。よく”生きてるみたい”と表現されますが、炎に”トドメが刺せない”、と感じたらすぐに逃げてください」。努めて穏やかな口調で言われたこの話がずいぶん印象に残っている。

知らなかったのが、消火器から噴射された粉末は、掃除機で吸ってはいけないこと。なんなら、自己判断で掃除はせずに業者に依頼するものだそうだ。細かい粒子はフィルターをあっさり通過し、掃除機本体の故障に繋がるという。

話を聞くこと、体験することを選択して良かったと思う。ただ、いざ有事にでくわしたとき、自分が落ち着いて消火器を構える姿がどうにも想像できないでいる。

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のん
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