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ピラミッドの基盤|note900本目

「うみべのストーブ 大白小蟹短編集」の中に収録されている、「海の底から」と言う短編漫画が好きだ。社会人になって、「書く」ことから遠ざかってしまった桃という女性の話。

学生の頃に小説を書いていた桃は、就職して「書く」ことから遠ざかっていた。親友2人はそれぞれ「書く」ことで生計を立て、結果も出している。桃は書かない状態でも幸せでいる自分が悔しいと思っていた。その話を聞いた彼女の恋人は、こんなことを言う。「じゃあ書けばいいんじゃない。書けない自分のことが認められていないんでしょう。それってつまり、桃は書きたいって思ってるんじゃない」。

対して桃が「でも書きたいことがない、感性が枯れてしまった」と吐露したとき、恋人は「枯れたんじゃなくて、生活の基盤を築くために頑張っているからじゃない?」と返す。そしてこう続ける。

働き始めてようやく仕事に慣れてきて 家賃払って ご飯作って 奨学金返して
桃がいまやっているのは ピラミッドの下の方の土台をつくることなんじゃないかな
きっと桃にとって小説を書くことは あのピラミッドの上の方にあることで  だから ピラミッドが積み上がってきたら また書けるようになるかもよ

『海の底から』(大白小蟹)

桃の恋人はわたしのことも代弁してくれた。わたしは桃と同じ。

漫画を読んで、心底思った。

✏️

今日で、毎日更新を続けてきたnoteが900本になった。

正直に最近の所感を書くと、noteを書くことより、日々の生活——仕事や家事の方が、ずっとわたしの中の優先順位は高い。すこやかな生活の基盤を築いておくことが、今は何よりも大事。ここ1年ほどで気づいたことだけれど。さっきもこのnoteを打つ前に、先にジャンボパックの豚バラを150グラムずつ小分けし冷凍することを優先した。書いてからでもできるのに。

900本も書けば、そりゃ色々ある。心から「書き留めておきたい」とキーボードを無我夢中で書き込んでいく日。「なんとか、このことを書きたい」と苦しみながら書く日。「もう、今日はこれでいいよ」と、ため息をつきながら惰性で無理やり書き終わらせる日。最後のパターンが一番多いと思う。

そんなふうに書き続けておいて、ずっと自分が「何を」書きたいかわからない、と思っている節があった(「書きたい」ははっきりとあったんだけど)。

いまは、これまでの投稿をベースにしたZINEを作ろうとしている。実際イベント申し込みをして(締め切りを作って)、印刷会社と打ち合わせを始めて、誘ってもらったZINE制作講座に行って、これまで書いてきたnoteを読み返し始めた。

仕事をして、家賃を払って、洗濯機を回して、献立を考えて、目玉焼きを焼いて、そしてnoteを書き続けて。

きっとそうやって自分(とパートナー)の力で生活をするようになってから、自分の中にある行動・欲求のピラミッドの下の方、土台がしっかりと出来上がったんだろう。そこからどんどことピラミッドが積み上がってきたから、「書きたい」「作ってみたい」と思えたのかもしれない。

900本書いた。約3年経った。この先の終着駅は正直まだ全然見えないし、予想もできない。だけどまだ、とりあえず書き続けてみようとは思う。

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のん
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