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テキスト考4 文学全集の使い方
数年をかけて文学全集を少しずつ読んでいるのは、一つは教養の一環であるが、名文を読んで文章力を上げたいということも理由の一つである。しかし、文章力は上がった気がしない。文学作品の文体は、素人が簡単にまねできるものではないし、作品全体としての名文であり、作品性を排した名文は存在しえないのではないかと思う。
実際のところ、気取った名文を敢えて書く必要などはないのだろう。自分のための文章であれば、メモのように思い出すきっかけ程度に理解可能であれば、事は足りる。他人のための文章であれば、その他人と自分の関係性や相手の理解力に合わせた文章になるので、なかなか自由に文章をつづれるものではない。
書くという行為と、書かれた結果としてのテキスト・データ。多くのテキストをインターネットを通して読むことができるようになったが、どのように書かれたテキストなのか、しばしば想像が及ばない。書くこと、表現することが手軽に、気軽になったが、人間の浅薄な面をテキストから読んでしまうリスクは、避けることは難しいだろう。
文学全集を読み通しても文章力は上がらないだろうが、文章の目利きはできるようになるものと信じたい。テキスト・データの海を溺れずに泳ぐために必要なのは、テキスト・マイニングやアルゴリズムを使いこなすスキルか、古典的な勘に基づく読解力だろうか。