アメリカン・ミュージック・ヒストリー第7章(1960年代全般・・・その5)
(4) ソウルミュージックの台頭
ソウルミュージックは、40年代、50年代のリズムアンドブルースを受け継ぎ、その名のとおり教会の思想や魂が強く影響した音楽と言われています。背景には、キング牧師の人種差別撤廃運動や公民権運動の高まりがあったことは言うまでもないと思いますが、黒人であることの誇りや自己肯定(ブラック・イズ・ビューティフル)意識が反映された音楽と言えそうですね。
最初にソウル時代の扉を開いたといわれているレイ・チャールズ、サム・クック、アリサ・フランクリン、そしてファンクの始祖ジェイムス・ブラウンは、忘れることはできません。もう一つ画期的だったのは、黒人が立ち入ることが困難だったカントリー分野にレイ・チャールズが挑み「愛さずにいられない」が、全米ポップチャート1位そしてアルバムも大ヒットし、以降黒人のカントリー曲へのアプローチが珍しくなくなりました。
こうしてみると、50年代に白人のエルヴィスが、黒人のようなリズム&ブルースを歌い(映画等で、黒人サイドからエルヴィスは、黒人のリズム&ブルースを盗みロックン・ロールとして白人の音楽にしたと、良く非難されるシーンが出てきます)、60年代は、閉鎖的だったカントリー界も長髪のロッカー(カントリー・ロック)や逆に黒人がカントリーを歌うことを受け入れ始めるようになった訳ですね。
*ノーザン・ソウル
ソウルミュージックの特徴を大きく分けると、ライト・ソウルとも呼ばれるノーザン・ソウルとディープ・ソウル或いはヘヴィー・ソウルのサザン・ソウルに分けられると思いますが、この時代を代表するノーザン・ソウルと言えばデトロイトの「モータウン」ですね。
スモーキー・ロビンソン、フォートップス、マーサ&ヴァンデルス、ダイアナ・ロス&スプリームス、テンプテイションズ、スティーヴィー・ワンダー、マーヴィン・ゲイ、グラディス・ナイト等で、ソウルの枠を超えたアメリカン・ポップスを代表するアーティストでもあります。
そして他にも、カーティス・メイフィールドを中心としたコーラスグループのインプレッションズやデルズが活躍したシカゴや70年代に活況を呈するフィラデルフィアも重要な拠点となっていきました。
*サザン・ソウル
一方、南部ではメンフィスの「スタックス」で、ニューヨークのアトランティックとも提携し、オーティス・レディング、サム&デイヴ、ウィルソン・ピケット等を輩出し、アラバマのマスル・ショールズを拠点とするフェイムには、アリサ・フランクリン、ソロモン・バーグ等が次々に録音に訪れました。こうしたアーティストからみてみると、サザン・ソウルは、より一層ゴスペルやブルースの要素が色濃く反映されていますね。
*ファンク
ファンクは、1960年代半ばくらいまでには、アフリカ特有の土着的なリズムをソウルに取り入れたジェイムス・ブラウンとニューオリンズに拠点を置いたアラン・トゥーサンやミーターズらの手によって原型ができたと言われています。
その後、そのリズムをバンドサウンドにしたスライ&ファミリー・ストーンの登場は、黒人、白人、女性が共存した画期的な存在となり、アース・ウインド&ファイアーは、ファンクを身近なものにしました。
その影響はジャズにも飛び火しマイルス・デイビスが「ビッチェズ・ブリュー」を発表しクロスオーヴァーに発展していきました。こうした流れに乗り、60年代後半にジョージ・クリントンが、ファンカデリック(ファンクとサイケデリックの合成語)とパーラメントという2つのバンドを結成しました。また、70年代に入ると、白人ファンクバンドが登場し、ワイルド・チェリーやアヴェレイジ・ホワイト・バンドが全米NO1ヒットを生み出していくことになります。
今回もたくさんありすぎて紹介しきれません、特に、スティーヴィー・ワンダー、マーヴィン・ゲイ、グラディス・ナイト、アース・ウインド&ファイアー等は、70年代で紹介した方が良さそうなので悪しからず。