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GW読書感想文②池袋ウエストゲートパークシリーズ~裏世界への危険な憧れ~

(表紙の画像はhttps://toptrip.jp/ikebukuro-west-gate-park/#i-5より引用)

こんにちは。ちゃんでらです。前回の内容を振りかえったらかなり誤字が多くでビビりました。割とそそっかしい方なので、確認してから出す癖をつけるようにしたいです。

1.池袋ウエストゲートパークとは?


「ミステリーの『今』を読みたければ、池袋を読め」(池袋ウエストゲートパーク 裏表紙の解説より)

 今回は2回目として、私が大学時代から愛読している「池袋ウエストゲートパークシリーズ(以下、I.W.G.P)」についての感想を書いていきます。この小説は一作目が1998年に出版されて以降、2020年現在も続編が作られている、ミステリー短編小説シリーズです。作品は外伝含め17作、累計発行部数は420万部越えの作品で、2000年にはTOKIOの長瀬智也主演でドラマ化もされたので、知っている方も多いのではないでしょうか。作者は石田衣良さんで、2003年には「4TEEN フォーティーン」という小説で直木賞を受賞するほどの有名な作家さんです。その石田さんのデビュー作でもあるのがこの「I.W.G.P」シリーズというわけです。

 このお話は池袋の西口公園周辺を舞台に、トラブルシューターとして活躍するの「マコト」が、池袋を取り仕切るストリートギャング「Gボーイズ」を率いる「タカシ」といった仲間たちと共に池袋に発生する様々な問題を解決する内容となっています。マコトのもとに転がり込んでくるトラブルは、不良同士の小競り合いからネットトラブルや薬物問題、さらにはヘイトスピーチやブラックバイトなど、裏社会特有の物から世相を反映したものまで、多種多様に分かれています。従ってこのお話は

・ミステリーが好き

・探偵ものなど、人の依頼を解決する系のお話が好き

・裏社会を描いたお話が好き

・都会感を感じさせるお話が好き

といった方にはお勧めできると思います。余談ですが、池袋西口公園(タイトル画像)を中心に物語が展開されることから「池袋ウエストゲートパーク」というタイトルなんですよね。読む前は「なんでこのタイトル?」と思いましたが、シンプルで覚えやすいですよね。

2.作品を通しての感想

⑴マコトの目に映るのは「日本の問題」である。

 このお話は徹底して社会の裏側・暗部の生々しさがありありと描かれています。労働問題・性犯罪・ネット犯罪など、現代日本の抱える闇の部分によって苦しむ人々が、マコトの元に転がり込んできます。不良同士の縄張り争いで荒れていく街並みに悲しむ者や、劣悪な環境で体を壊しながら、誰のせいにもせず黙々と働く者、集団自殺を唆す悪人に対して立ち向かう者・・・。そういった目をそむけたくなる現実から逃げず、戦う人々の執念や思いがこの作品から伝わると感じました。

 せわしなく生きていると、余裕がなくなってどうしても自己中心的になりがちです。でもそんな時こそ深呼吸して、自分の身の回りで何が起こっているか観察し考えること、それに対して何ができるのか考え、手の届く範囲で行動してみることが必要だと思いました。

⑵「問題発生→解決」までが、短くまとめられており、読みやすい。

 この本は1冊につき4つの短編が収録されています。そのため1つのお話は大体短い物だと50Pくらいで終わるので、本を読むのが苦手な人でも、1時間あればすぐ読めると思います。またお話はマコトの視点で語られるのですが、その中での皮肉な言い回しや、達観したような表現が読んでいて楽しいです。

 そしてどのお話も確実に悪が成敗されて終了するのでスカッとした気分になれます。最後はマコトやタカシが悪い奴を完膚なきまでに叩きのめすことが多いのですが、この2人(特にタカシ)がケンカにめっぽう強く、読んでいて若干相手が可哀そうになるくらいボコボコにされています。そんな感じで、短くサクッとスカッとするお話が読みたい人にはお勧めできます。

⑶マコトとタカシのキャラや関係性が共感でき、愛おしい。

 前述のように、このお話はトラブルシューターのマコトの元に飛び込んでくる依頼を、様々な仲間たちと解決していくお話です。マコトは実家の八百屋を手伝いながらトラブルを請け負うわけですが、ほとんど無料でその依頼を引き受けたり、依頼人のために自ら裏社会に飛び込むなど、人情味あふれる熱い人間として描かれています。その一方で女性にモテず、クラシックや読書を嗜むなどの文化的な趣味もあり、バラエティに富んだ人間性をしています。人情味あふれるタカシとは真逆の性格をしているのが親友のタカシです。そのカリスマ性と冷徹さ、類まれなる運動能力で周りから一目置かれ、Gボーイズを束ねる池袋の「王」です。そんな対照的な2人ですが、有事の際にはお互いを頼ったり、軽口を叩きあうほどの仲です。そんな二人のやりとりもおすすめの要素です。

3.おすすめの作品

 ここでは読んでいて個人的に「I.W.G.P」シリーズの魅力が詰まっていると思う作品を2つ紹介します。

⑴サンシャイン通り内戦(シビルウォー)

 第一巻「池袋ウエストゲートパーク」の最後に収録されている作品です。タカシ率いるGボーイズの勢力を奪おうと池袋に進出してきた「レッドエンジェルス」との抗争を描いた作品です。池袋の若者を取り巻く緊急事態に対して、マコトはジャーナリストの加奈と共に事件を追っていくが、2人は愛し合っていく・・・といったお話になっています。レッドエンジェルスのリーダー、京一との鮮烈な邂逅や加奈の過去など、見所がたくさんあるお話です。

⑵水の中の目

 この作品は「少年計数機 池袋ウエストゲートパークⅡ」の最後に収録されている作品です。大人のパーティーという非合法の風俗を襲撃している連中の捜査を依頼されたマコトは、数年前に起こった凄惨な女子高生監禁事件の被害者遺族である弟のアツシや肉屋のミナガワと一緒に事件を追っていくが、事件の首謀者が監禁事件の加害者グループであることが発覚する。しかし調査の中でマコトの仲間たちが次々襲われ、窮地に立たされることになってしまう・・・、というお話です。

 この話は全編通して結構重たく、読んでいてきついと感じる人も多いと思います。特にラスト、意外な展開が2回も待ち受けています。私は読んだ後にどうしようもない虚しさを覚えました。かなり異色ですが、個人的に忘れられないという意味でご紹介しました。

4.最後に

 いかがでしたでしょうか。社会の裏側や現実を、わかりやすい形で描く「I.W.G.P」シリーズは、ミステリーやストリート系、人情系の小説が好きな方には非常にピッタリだと思います。何より、私はこの本を読んで池袋に対する思い入れが深くなりました(笑)。

 今年の7月にはアニメ化もするそうなので、興味のある方は是非読んでみてください!ここまで読んでくださった方々、本当にありがとうございました!

 




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