あなたは何も悪くない
冷凍うどんを食べました。ですが彼は変わってしまったのですか?
コシ…?小麦…?という感じ。これは一体何を食べているんだっけ?という感じ。古くなった輪ゴムを伸ばしたらプチプチ切れてしまうあの感じ。うどん…だよね食べているのは…という感じ。
片親で育った中学時代、19時をすぎて帰宅しても家は真っ暗なままでした。手探りで電気をつける。誰もいないのにただいまを言ってみて、着替え、雨戸を閉める。そこから5合のご飯を焚き、明日のブラウスがないと洗濯を回し、コップが足りなくて皿洗いをするのがルーティーンでした。親がお米を買い忘れ、わずかに残っていた冷凍うどんに卵をのせて釜玉にして食べることがよくありました。
受験期、寝る以外は学校と塾にいるような生活をしていました。家事はできなくなり、真っ暗な家に帰宅して着替える。腹ごしらえ、ラッキーだったらコーンフレークか菓子パン、通常は冷凍パスタかうどん、最悪は冷凍ご飯と納豆(当時ご飯が好きではなかった)。冷凍うどんの比率が高かった。パンは夜までもたない。卵がなければ醤油だけ、あればめんつゆをたんまりかけてかきこんで家を出る。レンジでチンするだけ、それも数十秒、急いでお腹を満たすにはそれで十分でした。
とにかく、私にとってめちゃくちゃソウルフードだったわけです。
冷凍うどんはあったかくて美味しくて簡単で、
それでいてお腹を満たしてくれるスーパーフードだと思っていたのです。
それが、絶望的に美味しくなかった。メーカーが良くなかったのか?それとも私の舌が変わってしまったのか?どちらにせよショックであることに変わりはありません。が、とにかく思い描いていた味と違っていました。
食べたのは釜玉でダイレクトにうどんを感じていました。言わば逃げ場がないわけです。卵と醤油、それ以外はうどんしか感じられない。うどんにとって勝負なメニュー。それなのに、それが古びた輪ゴムなんです。信じられません。人生長い目で見て100年とか言いますけど、実質80年くらいじゃないですか。満足に、自分の思い通りに食事を取れるのは自立してから定年超えたあたりまでだと思うんです。大体50年くらいですかね、365×50×3(食)、いや3食取らない日も多いのでそれ以下です。約54,000食。人生で好みの食事を取れるのは54,000回だけ。たったの54,000回です。それの1回がとんでもなくまずかったら、悲しくないですか?私は悲しいです。ダイエットとか言ってご飯を食べない人いますけど、食べた方がいいです。人生の食事回数は限られています。味覚があるならそれをたくさん使った方がいい。美味しいという感覚を最大限に感じた方がいい。カップ麺やファストフードでもなんでもいいけど、欲しているものをその時に食べてきちんと満たされた方がいい、食事を楽しむために努力は怠ってはダメだと思いました。
すみません、話が逸れました。とにかく、思い出の味が大人になって最悪な思い出に塗り替えられてしまった最近の出来事でした。冷凍うどん自体は素敵な商品です、多分メーカーによっては美味しいものもあると思うし、私が食べたものでも美味しいと感じる人はもちろんいると思います。でももう今の私は冷凍うどんさんを受け入れられない体になってしまったのでした。冷凍うどんメーカーさん、ごめんなさい。そして昔は大変お世話になりました。またどこかでお会いしましょう。
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