竜神のこと
私は、子どもの頃から、守り神と、守り神に対峙する邪悪な存在が時々見える。父と母には何も見えないので話が通じなかった。父方の祖母ははっきり見えた。祖母という理解者がいたので、私は、辛い子ども時代を耐えることができた。
私に見えるものを紹介しよう。
災害復旧に携わる人たちには、見るからに強そうな竜神がついて、黒い大きな化け物から守っている。竜神は化け物を噛みちぎっている。化け物は黒い霧になって消えていく。そして、霧は、人間の中に吸収されていく。その先どうなっているのかはわからない。
川には水難事故が多発するエリアがある。そういうところには不気味な化け物がいる。どうしてなのかはわからない。
祖母はもっといろいろなものが見えた。竜神を指導する存在がいると教えてくれたことがある。愛にあふれた光り輝く存在だという。
私はあるとき、
「おばあちゃん、この世界は一体どういう仕組みになっているの、階級制なの、だとしたら何のための階級制なの」
と祖母に聞いたことがある。わしにもわからん、と祖母は言った。好きに生きたらええけ。
祖母は晩年認知症になり、私の母が祖母をいじめながら介護した。私は母が祖母にひどい言葉を言っていじめていたことを知っているが、祖母は母を許していると思う。