専門職を軽んじる国、日本

※この記事は、2019年6月9日に編集され下書きに保存されたままになっていた #熟成下書き を、句読点や多少の言い回しの整理のみ行い、文章の加筆はしないまま公開するものです。

図書館のアルバイト募集ということで、こんな求人が出たようです。

業務内容：図書館業務全般の補助（主に図書目録作成業務の補助）
待遇等：時給９９０円
応募条件：司書有資格を有すること。パソコンソフト（MS－Word、Excel等）の基本操作ができること(http://www.jla.or.jp/job/tabid/650/Default.aspx?itemid=4720  2019年6月9日閲覧)

Twitterで話題になっていたことで知った求人ですが、正直呆れました。

時給が安すぎる。

学生アルバイトの募集のような時給ですが、募集しているのは明らかに学生ではありません。
司書資格を有する者って条件がついているから。

その司書ってやつ、専門職ですよ？
国家資格ですよ？
つまり司書って、誰でもできる職じゃないんですよ？

そこまで分かっていて求人を出しているのでしょうか……

私は司書の仕事をしたことはないので、司書の仕事がどれだけハードものなのかを身をもって知っているわけではありません。
が、司書資格は持っています。

大学で授業を履修して、どれだけ高度な知識や仕事が要求されるのかということについてはそれ相応に知っています。

本の管理はもちろんのこと、本に限らず必要な情報を整理したり取り出したりということが要求される仕事です。
情報の整理の仕方や取り出す方法について、熟知をしているわけです。
必要とあらば年何百万円とか1回の検索で何万円とかの費用を要するデータベースも使いこなします。

つまり、それだけのことができるようになるための経験を積んでいるということです。
(授業の実習でも、失敗の許されない検索にヒヤヒヤしながら挑む場面がたくさんありました。)

だから言えます。
そんな安い時給で請け負える仕事ではないはずだと。

安すぎる専門職は、司書だけではない

おそらく少なからぬ方々が感じていることと思いますが、日本って専門職のことを軽く考えすぎじゃないですか？

私には、自分が知る範囲だけでも「あの職もこの職も優遇されなさすぎじゃない？」と感じる職がたくさんあります。

司書の話の流れでいうと、まず「教員」ですね。
公立の学校の教員なら公務員だし安定してるし云々とよく言われますが、働く量と給料とを考えると、おかしいんです。

残業は実質、月100時間越え
給料を時給換算すると、時給約300円
それでもあなたは教員を目指しますか？

大学1年生のときに、教職課程の先生から、最初の最初の授業で突きつけられたことばです。

この数字については、働き方改革も進んでいますし、キャリアや仕事への時間のかけ方によっても違うこととは思います。

しかし、土日も部活動のために出勤することがあったり、学校にいる間もいない間も何らかの仕事をしていたりと、とにかく不健全な働き方をしているのが教員です。

それでも、子どもたちのため、より良い教育のためにと「やりがい」を原動力に働いている先生が多いわけです。
教育現場は、そうした先生方のおかげで何とかもっています。

でもやっぱりおかしいですよね。
教員の仕事だって、あくまでビジネスマンや飲食店経営などと同じ、ひとつの仕事ですもん。まして、立派な専門職です。

それ相応の対価が支払われなくては。
もしくは対価に見合う分の仕事量にしてくれなければ。

対価を「やりがい」で支払われるわけにはいきません。

あと、バス運転士も教員と同じく、安い給料で「やりがい搾取」されている職ですね。

路線バスなら「地域を支えるなくてはならない仕事」「地域の人の笑顔のために」みたいなものがやりがいとなりますかね。
元々バスの車両が好きな人だと、好きな車両を割り当ててもらうことを条件として増務に応えていることもあるそうです。

でもバスも大型二種免許ってやつが必要な、専門職です。
そして、文字通り、一度に何十人もの人の命を預かるような超リスキーな職です。

安い給料で長時間使い倒していいんですか？？

専門職を軽んじるということは……

早い話、労力に対して低賃金しか出てこない仕事は、やりたい人がいなくなりますよね。

司書はまだ資格保有者に対して実際になれる人が3%しかいない職ですから、先に挙げた求人にはキャリアアップのために応募したい人が少なからずいると思います。
(だからこそああいう求人が出てしまうのでしょう)

でも、司書もそのような人がいなくなったら、教員やバス運転士のように人手不足に見舞われていくだけ。

さて、実際すでに人手不足に見舞われている教員やバス運転士職ですが、さすがに教育や公共交通機関が機能しなくなっては困るので、国も何とかしようとはしています。

何をしているかというと、教員免許も大型二種免許も、資格レベルを易しくして取得できる人を増やそうとしています。

いや、生活の質が保証されない職だから人手不足になっていくんだよ？ 生活の質改善にひとつも役に立たない策を取ってどうするの。

むしろ教員や運転士の質が落ちていくだけじゃないですか。
子どもの未来とか、人の命とか預けるんですよ？ そういう人達の専門性を下げていくなんて、怖い怖い。

そんなことやってたら、日本滅びるよ？

そう、企業単位とか業界単位で勝手に何とかすればいい問題じゃないんだってことです。

せめて皆さんはリスペクトしてくださいね。

たまにリスペクト出来もしない“名ばかり専門職”な人もいるけどそんなの一部だから。