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気分変調症という病気

※今回の記事中の参考文献

水島広子『対人関係療法でなおす 気分変調性障害 自分の「うつ」は性格の問題だと思っている人へ』
以下、特に注記なくページ数が書いてあったら、この本の当該ページからの引用であることを指す。

適応障害、抑うつ状態、気分変調症(=気分変調性障害)。
私がつけられてきた診断名の変遷だ。精神科の診断は一度ではどうにも難しい場合があるらしく、「鬱病だと思って抗うつ薬を処方していたら双極性障害(躁鬱)だったために病状が悪化した」なんてこともあるらしい。

私は仕事で何度か体調を崩しており、その度に違う診断名をつけられてきた。ただし、傷病手当金という制度においてはこれらは同一の病気として扱われるようである。
現在の診断は「気分変調症」ということになっており、この病名で精神障碍者手帳も取得した。しかし、この病気、マイナーすぎる。人に説明するときも、「慢性の鬱病」とか「鬱病の亜種」と私は言っている。なので情報も少ない。あまりに少ないので、自分の知っていること、読んで得た情報を書いてみよう……、誰かの助けになれば……、という気持ちで書いている。

鬱の症状が長年にわたってあり、その苦しさから逃れるためにいろいろな本を読んだ。本当にいろいろ読んだ。参考になるものもあれば、ならないものもあった。

その中で出会った一冊の本に、「えっ、どうしてこの本には私のことが書いてあるんだろう」と思わされた。

それが、上記の『対人関係療法でなおす 気分変調症障害』であった。

「●はじめに ――本書を読んでいただきたいのは、こんな方です
・自分は人間としてどこか欠けていると思う。
・ほかの人は苦しいことにもしっかり耐えているのに、自分は弱い人間だと思う。
・自分は何をやってもうまくいかない。
・自分は何か、なすべき努力を怠っているような気がする。
・人が「本当の自分」を知ってしまったら、きっと嫌いになるだろう。
・「〇〇したい」と言うのは、わがままなことだと思う。
・自分が何かを言って波風を立てるくらいなら、我慢したほうがずっとましだ。
・自分の人生がうまくいかないのは、自分が今までちゃんと生きてこなかったからだ。
・人生は苦しい試練の連続であり、それを楽しめるとはとても思えない。
・これから先の人生に希望があるとは思えない。
 もしも、あなたがほとんど毎日、右に挙げたように感じているのであれば、本書をぜひ読んでみてください。本書のテーマである「気分変調症障害」である可能性が高いからです。」

「本当に気分変調症障害を持つ人であれば、「自分の場合は病気ではなくて、本当に人間としての欠陥があるのだ」と感じてしまうのがふつうですから、「あなたは病気で、治療可能です」と言われることに懐疑的な人こそが、本書にふさわしい読者なのです。」(以上、p10-11)

えっ!?これは自分だ。まさしく自分のことだ、と思ってしまった。

というか、こういうことを考えていない人っているのか?なんて幸せなことだろうか、と思ってしまった。それは、人生の生きやすさがだいぶ違ってくるだろうと思った。羨ましい、と感じてしまった。

上記の本には、気分変調症は「『性格』とまちがわれやすい病気」「慢性のうつ病」とある。

「『慢性』というのは、『起承転結』のあるストーリーではなく、同じような状態が漫然と続いていることを言います。」(p21)

いわゆる「鬱病」は「急性のうつ病」であり、この本では「大うつ病」とも呼ばれている。

現在の気分変調症の診断基準は「鬱病よりも軽い」かのように定められている。が、実際の生活を見ると、気分変調症の人の方が対人関係困難・健康状態の悪化・社会機能や職業機能への悪影響が見られるという。そのことを踏まえて、「研究用の診断基準」が定められており、気分変調症がどのような病気か?を見るときにはこちらの方がより適切であると述べられている。以下の通りだ。

「憂うつな気分のときには、以下のうち三つ以上が存在すること。

・低い自尊心または自信、または自分が不適切であるという感じ
・悲観主義、絶望、または希望のなさ
・全般的な興味または喜びの喪失
・社会的引きこもり
・慢性の倦怠感または疲労感
・罪悪感、過去のことをくよくよ考える
・いらいらしているという主観的感覚、または過度の怒り
・低下した活動性、効率、または生産性
・集中力低下、記憶力低下、または決断困難に反映される思考困難」

私は6個当てはまる。(調子が悪いと7個)この内容も、「どうして自分のことが書いてあるんだ!?」と思った。これって、アダルトチルドレンの人だと重複して当てはまるところがあるんじゃないかと思った。そして、この気分変調症はしばしば「性格」「ものの見方」の問題とされてしまうという。しかし、著者は本書の中で繰り返し「気分変調症を病気として扱う」ことの重要さを説いている。病気として扱うことで、以下のことが言えるという。

(1) 病気は本人にとって望ましくない、苦しい状態である
(2) 病気になったことは本人のせいではない
(3) 病気の症状は本人のコントロール外
(4) 治療の対象になる

そして、気分変調症は「人格」ではなく「病気」として認識することそのものに治療効果があるとも言われている。

ここまで書いていて、私はそれでも自分の中にある問題をふとした時に「自分の人格の問題だ」ととらえてしまっていることがある。

気分が落ち込んでしまうと、自分の人格の不出来、過去の自分の過ごし方や行いを思い返して責めてしまうことがよくある。

その時に「病気だと言われてもなかなかそうは思えないのが気分変調性障害という病気であり、何度も何度も病気だという認識に立ち返り、確認していくことが、気分変調性障害の治療プロセスの中心になります」(p64)という文章を思い出せるように、まずはなりたい。

また、「気分変調性障害という病気が存在することは認めても、『自分だけはちがう』というふうに感じるのです。これは、気分変調性障害の診断をさらに確かなものにする根拠にすぎません。」「病気であるということを認めると、自分の無能や怠慢を正当化しているように感じるというのです。これも気分変調性障害の診断を補強する感じ方だと言えます」(p65)と繰り返し畳みかけられる。読んでいて少し苦笑いしてしまうほどに。

気分変調症の特徴として「自分をいじめるようなもののとらえ方をする」というものもあった。

これも、そうしていない人なんているのか?と思ってしまった。それが当たり前だろうと思っていた。だから、皆は自分よりすごいんだ、自分をいじめながらもきちんと働いたりしている……、もしくは、自分をいじめていない人は、ものすごくすごい人なのだ、と思っていた。

どうやら自分は「病気」らしい。この本を改めて読んでみて、ええっ!?そうなの!?とまた驚かされてしまった。

毎回「病気ではなく人格の問題」という認識になってしまっているから、読むたびに驚いてしまうのだ。うーん。なかなか難しい……。

普段文章を書いていてあまり疲れることはないのだが、今回はさすがに疲れてしまった。この辺にしておくことにする。

ぜひ読んでみてください。

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