【読書感想文】『今夜は眠れない』(宮部みゆき)を読んで(453文字)
なんてことない平穏な僕の家族に突然舞い込んだ五億円の大金、しかも博打好きの資産家から僕の母親への遺贈だって!?
主人公である僕がこの騒動に巻き込まれながら、人間として成長し、家族のあり方を考えていく物語。
軽快な語り口調で進んでいく物語は、刻々と場面を変えてスピーディに進行する。心の機微を丁寧に描きながら、一方で手に汗握るドキドキ感を演出する。
人はみな、人生の中で何度か大きな博打を打たなければならないときがある。この身を賭して、この先の人生に賭けてみる。勝っても負けても全て責任は自分にある。
当事者(過去の自分)にはたまったもんではないだろうが、後から思い返す人生の博打はそれはそれはドラマティックなものだろう。映画や小説でしか出会わないスリリングな展開を実体験として味わえるのだ。
本書を読んで思い出した過去の大博打はまたどこかで語るとして、改めて人生を面白いものだと認識させられた。オープンワールドで全て自由に操作できるRPG、天啓のように閃く好奇心や邪念に身を任せてみるのもまた人生である。