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好きな短歌発表ドラゴンになる

先月からちょこちょこ短歌を詠んでは発表するということを続けているのですが、もちろん人の詠んだ歌を摂取するのも好きなので、中でも特に好きなものをいくつか挙げます。とりあえず今から30分くらいで挙げられるだけ、口語調のものを中心に。きっと一首くらいは好きな歌が見つかるはず。

200円でおいしいものを手に入れろ 残暑のゆれるところをすすむ

永井祐『日本の中でたのしく暮らす』

こういう時は初手で最強のものを繰り出すに限る。
永井祐さんは1981年生まれの人で、いわゆる氷河期世代にあたる……ので、現代まで続く不況の閉塞感というか、二進も三進も行かないような雰囲気が反映された歌を多く詠んでいる。ただそこに滲むのは苛立ちや諦めではなく「自分なりに明るくやっていこう」という前向きなメッセージで、この歌もそれが込められていると思う。

200円という小学校のおやつ代にも満たない金額を握りしめて夏の名残が立ち込める街を行く主体。でもその限られた金額で「おいしいものを手にいれ」るミッションなのだ、と思うと少し街が色づく気がする……そんな感じ。似たようなことをオードリーの若林も言っていたので正しいと思う。

大みそかの渋谷のデニーズの席でずっとさわっている1万円

永井祐『日本の中でたのしく暮らす』

同じく永井裕の、同じ歌集に収録された歌。これも超好き。
大みそかの渋谷のデニーズで、おそらく主体は一人なのだが、上記のような読み解きの先にこの句を置くと都会性の孤独や寂しさというより、大みそかのような日でも1万円で何でも食べられる街の良さ……というか、捨てたもんでもなさを感じられる気がする。

いつまでも名字で呼んでいつまでも光がうすく漏れているドア

西村曜『コンビニに生まれかわってしまっても』

この句が収録されている章題は「駅前の喫茶店」。特別な間柄にはないが親しい友人同士で店を訪れた片割れが主体の歌が淡々と続く。ほんんど人生で最高の章なのだが、中でもこの句は好き。一対一で喫茶店に入れる距離でも名前で呼ぶほどには踏み込めない相手との時間。いいよね。次の歌も良いんだア……。

三センチグラスに残ったコーヒーであと三時間あなたといたい

西村曜『コンビニに生まれかわってしまっても』

アア〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

キラ、君のゐる戦場へ翔るとき永遠までに五分たりない

黒瀬珂瀾

これは歌集からではない。歌だけをポンと見て以来ずっと好きなもの。
最初の「キラ」はキラ・ヤマト。ガンダムSEEDシリーズの主人公……なんか怖いから言い方変えよう、主要登場人物の一人である。新しい映画、すごく面白かったらしいですね。これは出撃する際のアスランの気持ちを詠んだ歌らしい。
僕はまだSEEDシリーズは見られてないのだけれど、作品から読み取ったキャラの心情をそのまま歌にしちゃう心映えが気に入っていて、好きな歌を聞かれた時には必ず挙げるようにしている。なお好きな歌が聞かれたことはこれまでの人生で一度もないです。

焼けた板の上に開拓者が敷く カタパルト から飛び出したトゥース!

齋藤麟太郎『詠んだ短歌7』

これも歌集からではない。最近自分で詠んで好きな歌。
一つ前の歌を詠ませたような心に自分も従ってみようと思って、オードリーのオールナイトニッポンIN東京ドームで見た漫才を詠んでみた。漫才中にスタンドマイクを挟んで立つ若林と春日の位置関係も反映できており、なかなかいい感じで気に入っている。

以上。結局40分近くもかけてしまった。

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