『君たちはどう生きるか』はアカデミー賞を受賞できるか?
AMPAS(エムパス:Academy of Motion Picture Arts and Sciences)は、第96回アカデミー賞における10部門のショートリストを発表しました。
なんと邦画は3作品がリスト入りを果たしています!おめでとうございます!
ショートリストとは?
アカデミー賞は、2023年内に公開された映画のうち、一定の条件を満たしたものについて、まず部門ごとに各部門の会員がその候補作品(候補者)を決定しますが、一部の部門はノミネーション発表前に「候補の候補」を決めます。
これが「ショートリスト」です。
今回のアカデミー賞でショートリストが発表されたのは以下の部門です。
メイクアップ&ヘアスタイリング賞
視覚効果賞
音響賞
作曲賞
主題歌賞
国際映画賞
ドキュメンタリー映画賞
短編ドキュメンタリー映画賞
短編映画賞
短編アニメーション映画賞
今回はそれぞれ10〜15の作品が選出されていますが、このうち『君たちはどう生きるか』が作曲賞に選ばれたのは予想できたものの、嬉しいサプライズでした。
アニメーション映画賞で最大のライバルである『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』も候補入りしていますが、「アニメーション映画賞」が長編アニメが対象となっているのに対して、作曲賞は他の共通部門と同じ数が対象ですから、素晴らしいことです。
前哨戦の様子
ここで『君たちはどう生きるか』の受賞可能性から見てみましょう。
まずは本命の『アニメーション映画賞』です。
アニメーション映画賞
ここで前哨戦候補数ランキングを見てみましょう。
『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』26候補
『君たちはどう生きるか』21候補
『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』15候補
『マイ・エレメント』11候補
『ロボット・ドリームズ』9候補
『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』には及ばないものの、『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』には大差をつけています。
この結果から見る限り、アカデミー賞での候補入りから漏れることはなさそうです。
では、現時点での受賞数はどうでしょうか。
『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』13勝
『君たちはどう生きるか』5勝
『ロボット・ドリームズ』1勝
これも『スパイダーマン〜』の圧勝ですが、重要な賞(サテライト賞、アニー賞など)の発表はされておらず、いずれも批評家賞です。
『君生き』は今月公開されたばかりですし、まだ観ていない批評家も多いと思われるので、この時点で5勝もしているというのはむしろ良い傾向だと思います。
オスカーを手にするには、スポーツと同じで投票終了時にどれだけピークを持ってくるかということが重要です。
ですので、年末公開ということはむしろ良いことなのです。
『ゴジラ -1.0』の勢いがあるのもセット売りできますので、配給会社が違うもののプロモーションはやりやすいはずです。
加えて『スパイダーマン〜』は続編な上に、ストーリーが完結していません。
『千と千尋の神隠し』から20年以上経ち、巨匠宮崎駿に受賞させようという空気になる可能性は多分にあると思います。
ということで「アニメーション映画賞」での受賞可能性は大いにあり!です。
作曲賞
では作曲賞の前哨戦のノミネートランキングも見てみましょう。
『オッペンハイマー』18候補
『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』14候補
『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』11候補
『哀れなるものたち』9候補
『The Zone of Interest』6候補
『バービー』4候補
『雪山の絆』3候補
『君たちはどう生きるか』3候補
【ショートリスト漏れ】『ザ・キラー』2候補
トップ9(10位以下はノミネート数が1なので除外)を見てみると、デヴィッド・フィンチャーの『ザ・キラー』を除き、すべてショートリスト入りしています。
この感じだと受賞はおろか、候補入りも難しそうです。
ですが、受賞数を見てみるとどうでしょうか。
『オッペンハイマー』10勝
『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』3勝
『君たちはどう生きるか』1勝
【ショートリスト漏れ】『ライ・レーン』/『The Zone of Interest』/【ショートリスト漏れ】『Club Zero』1勝
なんと「君生き」は、ロサンゼルス批評家協会賞で受賞を果たしているのです!
これもスポーツと同じで、受賞と候補はメダルを獲る/獲らないの違いのように雲泥の差です。
前哨戦(主に批評家賞)は、公開が早い映画が有利ですから、ここに割って入ったのはすごいことです。
それを考えると「君生き」の作曲賞候補はまだ可能性があると思います。
一方、受賞となるとどうでしょうか。
正直なところ、受賞については『オッペンハイマー』の音楽が大絶賛されており、担当したルドウィグ・ゴランソンは作曲賞を受賞済み。
それも5年前のことですから、再受賞の可能性は非常に高いと言っていいでしょう。(技術部門は多数受賞が多いです)
また『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』を担当したのは、レジェンド、ロビー・ロバートソンです。(坂本龍一のアルバムなどにも参加しています)
残念ながら今年の8月に亡くなられてますが、一方のルドウィグ・ゴランソンは39歳とめっちゃ若い。
この点を考慮するとロビー・ロバートソンの受賞可能性が正直高いと自分は見ています。
グラミー賞の映画関連部門の受賞結果でどちらが受賞するかが決まると思われます。
日本人としては久石さんが「自分の名前はクインシー・ジョーンズをもじったものだ」とスピーチする姿を見たいものですが、宮崎監督も映画制作を続けられるようなので、まずは候補入りを願いたいところです。
本日の一曲
『魔女の宅急便』で屈指の人気曲『海の見える街』。ジャズ界で人気で、もはやスタンダードにすらなってる気がする。
いろいろなアレンジがある中で、自分が好きなアレンジがコチラ。
これを聴くとピアノが弾きたくなります。