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都会にしか住んだことがなかった私が、車必須の地方に引っ越しして思ったこと。

 私は、大阪生まれで、奈良育ちだ。

 母は京都の人間で、父は大阪の人間なので親戚関係の集まりがある時は、京都や大阪に行くことが多かった。

 高校を出てからは、大阪に4年住んで、東京で8年過ごした。

 つまり、生粋の都会っ子だ。奈良は田舎だよ、という人もいるかもしれない。
 実際に、私の両親は奈良のことをド田舎扱いしていたが、それは本当の地方を知らないからだと思う。
 そもそも、隣の県が大阪な時点で充分に都会だと思う。私が住んでいたところは、難波まで電車で30分という良い街だった。自宅から最寄り駅が徒歩20分以内に3駅もあり、駅前にはチェーン店だが、遅くまでやっている居酒屋だってあった。

 2年前、夫の会社を売却したことがきっかけで、夫の地元である岡山に引っ越しすることになった。
 そのまま東京に居ても良かったのだが、お互いの親族も遠く、仕事も無いのに、高額な家賃を払い続けるのは、ばからしいと私たちは思った。
 ちなみに、岡山に引っ越ししたことにより、家賃は東京に住んでた時に比べ、だいたい3分の1になった。

 私はオタクだし、イベントごとが大好きなパリピでもあるので、東京を離れることに何も抵抗がなかったわけではない。友達もそこそこいたし、好きなお店も色々あった。
 でも、子供が生まれてから、以前のように好きなように遊ぶことは出来なくなっていた。
 どうせたまにしか遊べないのなら、地方に住んで、時々新幹線で東京や大阪に行くぐらいで良いのかな、と思ったのも移動を決められた一つの大きな考えだったとは思う。

 しかし、残念ながら今はコロナで東京や大阪には遊びに行けない。コロナが収束に向かったら、また遊びに行きたいとは思っている。

 私たち家族はどこへ移動するのも自由だったので、もちろん他の土地も選択肢にあった。

 個人的には大阪が好きなので、大阪に引っ越ししたかったが、これは夫の反対に遭い、却下。

 夫は神戸が好きで、私も関西圏なら神戸もまぁ良いかなと思ったので、二人で二日かけて下見をしたが、交通の便が微妙だったのと、神戸のおハイソな高級住宅街は素敵なんだけど、なんだか肌に合わない気がして、私から『岡山にしよう』と切り出した。

 夫は、私に気を遣って、岡山という選択肢は自らそんなに推して喋らないようにしていたから、私が岡山にしよう、と言った時は驚いたそうだ。

 夫は地元の岡山にはたくさんの友人がいて、田舎が好きで、車生活が好きなのに対し、私には岡山には知り合いがおらず、都会が好きで、免許も無かった。
 つまり、夫からすると岡山は一番安心して住める土地だが、私にとっては違った。

 二人だったら、神戸も良かったかもしれない。街の雰囲気はとても好きだった。が、子供との生活や、ご近所付き合いを考えた時に、しんどいんじゃないのかな、と思ったのだ。
 それに、子供が居ると、やはり親元の方がなにかと便利なので、そういう下心もあった。

 本当はこういう場合、私の実家に頼るのが王道なのだろうと思うが、残念なことに、私の実家は頼れるような実家ではないので、その選択肢は最初から無かった。

 岡山の夫の実家との関係は良好で、盆と正月に帰ると、すすんで子供を何日も見てくれる人たちだった。
 夫自身も、子供の頃はそうしてかなりの時間を祖母に預けられて育った人で、夏休みなんかは、1ヶ月近く高知の祖母の家で過ごしていたらしい。
 ありがたいことに、そういう家なのだ。

 岡山に引っ越ししてきて、私は様々なカルチャーショックを受けた。まず大きなショックが、完全な車社会だということ。

 引っ越しするにあたり、一番の懸念はこれだった。
 『岡山は車が無いと厳しいよ』とは夫に言われてはいて、引っ越しにあたり免許を取得したが、正直ここまでだとは予想していなかった。

 今住んでいるところは岡山市内で、岡山駅からも近い。新幹線が通っている駅の近くだから、電車はいくらなんでも10分に一回程度あるものだと思っていた。

 …が、実際は違った。最寄りの駅は、本数がある時で30分に1回、本数がない時は1時間に1回しか電車が通らないので、驚いた。しかも無人。駅のベンチには『死ね!うんこ!セックス!』のような下劣な落書きが所狭しとされている。昭和か。
 最寄りの駅から電車に乗ったことは何度かあるが、利用者に大人の日本人がほとんどいないのにも驚いた。いても、大きい旅行鞄やキャリーを持っている人しかいない。周りを見渡すとアジア系外国人、中高生と思わしき若者が多かった。ここでは、車に乗れる人はみんな車に乗るのだ。

 岡山駅前は色々あるから、引っ越す前はなんとなく、駅前楽しそうだなー、散策したいな―、なんて思っていたが、駅前の駐車場は駐車場代が高い上、車が多く、道が狭い。なんやかんやで車を停めるハードルが高すぎて、結局イオンや、周辺の百貨店ぐらいにしかほとんど言っていない。

 車は目的地に行くには大変便利だが、周辺の散策には向いてないな、とつくづく思う。
 地方でイオンが流行る理由について、前は単純に周りに店が無いとかそういう単純な理由だと思っていたが、車中心の地方だと、『散策がしやすい』ということもあるのではないのだろうか。
 それに、イオンの駐車場代は周辺のパーキングの値段に比べて非常に安い。この辺だとイオンに用事がなくても、駐車場だけ使うという話もよく聞く。

駅前、所謂ネットの揶揄で『大都会』と言われる一部分を除くと、岡山のほとんどの店舗が、車に適したように作られているように感じている。どの店も大きく、駐車場も広ければ、道路も広い。
 自転車でもじゅうぶん暮らせるとは思うが、何でも揃うショッピングモール的なものが少ないのが難点だ。専門店の大きいやつが、間隔を空けて、ドン!ドン!と建っているので、どうしても移動距離が長くなる。

 地方都市ということで、実家がある奈良と同じように考えていたが、それは全くの間違いだった。地元を離れて初めて分かる地元の便利さ。

 奈良は、電車を使う人が多く、車が無くても充分暮らせる土地だ。とはいえ、車はあれば便利なので、一家に一台という家庭が多かったと思う。
 岡山では、一人一台無いと、どこへ行くのもかなり不便だ。

 地方の人は当然の如く都会は『違うもの』だと意識しているとは思うが、都会の人間は意外と、地方を知らない。いまいち想像がつかないのだ。

 実家が農家の方が多いので、野菜をよく頂くのも岡山の特徴なんじゃないかと思う
 本当に、色んなところから色んなものを頂く。

 一度、夫実家の方でとれた柿を人が集まるところで配ろうとした時に、そこにいた5人ぐらいの人たちが皆『家に木があって腐るほどあるから良いよ!』と言っていて、驚いた。
 とにかく、食べることにはあまり困らない土地だと思う。たまたまかもしれないが、都会に住むよりそういう機会に恵まれる確率は高いのではないだろうか。
 周りにそういう人がいなかったとしても、スーパーで岡山県産の不揃い品が、東京だと信じられないと思うぐらい安い値段で投げ売りされていることも多い。

 車社会と電車社会、どちらがいいか。
 どちらも良し悪しはあるが、私は子供がいるというのもあって、なんだかんだで車生活の方が良いなと思う。

 電車の中で子連れだからと、周りに過剰に気を遣ったりすることも無くなったし、買い物の時には重さを気にせず、買えるようになった。

 私は東京で働いていた時に、通勤ラッシュの電車の中でよく女の人に殴られたり、蹴られたりしていたのだが、そういうよく分かんない嫌な目に遭うことも無くなったのも良かった。
 車移動もあおり運転など、嫌なことに遭うことはあるが、電車移動に比べてそういった機会は極めて少ないように感じる。

 運転をしていると、安全上どうしても『ヒヤッ』とすることもある。だが、それを差し置いても、まるで移動する自分の部屋のような空間である車は、周りに知らない人がたくさんいる状況より、明らかにストレスが少ない。
 自分のお気に入りの小さいぬいぐるみを置き、自分の好きな音楽をいつでもそこそこ大きい音量で聴け、時に誰に気を遣うこともなく、歌うことだって平気で出来るような空間はとても素晴らしいものだ。

 こんなに素晴らしい車という乗り物だが、運動不足になりがちなのは大きな欠点かもしれない。運動、もっとしないとなぁ。、

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