アインシュタインタイル「SPECTRES」2枚合わせた「MYSTIC」を愛でる。とにかく愛でてみる。
前回の記事はこちら。
今までは、タイル1枚だけ愛でてきましたが、いよいよ複数枚を愛でていきます。
「MYSTIC」
「MYSTIC(ミスティック)」は「SPECTRES(スペクター)」を2枚組合わせた図形です。
論文「A chiral aperiodic monotile」の6ページにその図形があります。
上の図の、2色塗りの図形が「MYSTIC」です。
「SPECTRES」は鏡像防止としての辺を変形しています。
しかし、その前の状態――つまり、Tile(1,1)――のときにしかない特徴があります。
それが、線対称です。
タイルの裏返しを許すと組み合わせが2通りあります。
30°の魔法
「MYSTIC」は、「HAT」や「TURTLE」など2枚組み合わせても作れません。
日本テセレーションデザイン協会代表の荒木義明さんのツイートを引用します。
「30度傾くタイル」とあります。
これが「MYSTIC」のタイルの組み合わせ方なのです。
そこで、角度の異なるの2枚のタイルの組み合わせ方を、「HAT」と比較してみます。
時計回りに60度づつ回転させています。
左がTile(1,1)で、右が「HAT」です。
・回転させない場合:
平行方向に無限に組み合わせていきます。
・60度(逆の300度)回転の場合:
曲がりながら互い違いに組み合わせができます。
・120度(逆の240度)回転の場合:
1つずつの組み合わせはいけます。
上の図だと、一見3つ以上組み合わせられるように見えますが、実は同じ色のタイルは0度回転の組み合わせです(しかし、本来は0度・120度・240度(あるいは、0度・60度・120度)などの3枚セットで発揮されるので、今回は不向きなだけです)。
・180度回転の場合:
一応組み合わせることはできますが、これを元にしてのタイルの敷き詰めが見つかりません(あったら、教えて欲しいです、はい)。
そして、30度(−30度)回転での組み合わせは
となります。
「HAT」で同じことをやろうとすると、隙間ができるのです。
ほかの仲間のタイルも隙間ができます。
つまり、Tile(1,1)や「SPECTRES」にしかできない組み合わせなのです。
「MYSTIC」の意味は「魅惑的」ですが、実は「MAGICAL STICK(魔法の杖)」にかかっているかも知れません。
ちなみに、1枚毎に30度ずつ傾けたタイルを貼り続けると、12枚で最初のタイルとぴったり接し、環状の図形がつくれます。
左がTile(1,1)のタイル12枚の組み合わせです。
「MYSTIC」であらわすと6枚の組み合わせになります。
せっかくなので、「HAT」も30度傾けて同じように組み合わせてみます。
これはこれで、美しい。
四色必要
「MYSTIC」や「30度傾け」に関わる話題として、日本テセレーションデザイン協会代表の荒木義明さんの以下のツイートがあります。
辺で接する図形同士が同じ色にならないように複数の色で塗り分ける場合、
4色あれば可能です(いわゆる、四色問題)。
場合によっては3色など少ない色数でも可能ですが、Tile(1,1)や「SPECTRES」は不可能で、どうしても4色必要になります。
3色で塗り分けることのできない反例があるのが、その証明です。
赤のTile(1,1)には、7枚のTile(1,1)が接しています、真上に接しているTile(1,1)を緑に塗り、時計回りに青⇒緑⇒青⇒と塗り分けていきます。
すると、最後の7枚目は、接するTile(1,1)の図形は赤・青・緑なので、
どうしてもさらに1色ないと塗り分けることができません。
ということで、反例を使って証明しましたが………
ごめんなさい。
嘘をついていました。
何が嘘かというと、
丸をつけた2つのTile(1,1)。
ここ、実は2枚のタイルを裏返しした「MYSTIC」でした。
ということで、裏返しを戻します。
正しい反例は下の図になります。
ちなみに、それぞれのタイルの傾きは、
赤が0度、青が60度、黃が120度、時計回りで傾いています。
そして、緑が30度の傾きです。
「HAT」で同じような証明をしようとしても、30度傾きで接することができないので、無理です。
締め
ということで、「MYSTIC」を愛でてみました。
前回で「配置パターン」を愛でる予定と書きましたが、「MYSTIC」はその鍵を握る図形で、さらにそれにまつわる話題も見つかったので、変更しました。
ということで「配置パターン」は次回(かも)。
では。
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