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知財日本一の企業は?

US知財No1は今でもIBMだとしたのですが、じゃあ日本だと何処なの?

という話題になり、そりゃ日系電機/電気メーカーでしょうと言われました。

基準によるけど単なる出願件数だと色々なところで既出なので面白くないし、(あと、ゴミを幾ら出しても今は知財活用も求められるので、余り重要じゃない。)

社内弁理士数だと日立製作所やパナソニック株式会社が多いけどそれがイコール知財じゃないですね。

お役所の諮問委員だとトヨタなど自動車や自動車部品メーカーが多い気がしますが

それより役員長澤さんのというよりは、丸島儀一元専務のイメージが強いキャノンかと言ってましたがどこなんでしょう。

そこで、今回の知財日本一では、知財活用に焦点をあてます。
ライセンスをどれだけ貰っているのかは公開していない企業も多いのでここでは訴訟で勝ち取った額など訴訟を見ていこうと思います。方向転換前のマイクロソフトとかエグいライセンス請求をしていたと聞いたことが有りますので訴額=では無いでしょうがここでは公開データなので許して。

いつもの通りで日本の裁判では億越えでさえへぇ高額で凄いって話なので、出羽守になりますがアメリカを対象にします。

って、もう答え合わせですが、ソフトバンクグループ一択だったので

これからその状況説明に終始することにします。

ソフトバンクグループの知財

下の図は知財権のなかでも特許の産まれる過程とその活用した流れになります。関わる会社や、電子化する例示の方向性、その大手企業の図です。

最後に日本一としたソフトバンク及びその関連企業を当てはめたときの名前になります。

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なお、ソフトバンク自体は開発していないけどビジョンファンドの群戦略で管理されたユニコーンはほとんどR&D ばかりしているので外部委託しているのと同じですよね。

特許訴訟での賠償金

ソフトバンクグループとしてですが

今年のアメリカ知財訴訟で最大の賠償金をだしました。歴代でも2位?の2,175Mドル2300億円です。過去も含め一位らしいのが

Indenix Pharmaceuticals LLCがGilead Sciences Inc.を訴えた地裁の判断2,540Mドル 2860億円でしたので、少なくとも二番目以下は確かです。これを思い出せずナンバー1だと勘違いしていました。

まあ、影で和解した闇のなかのケースや物価を考えると単純には行きませんが、額としたら過去5年でこれが一番です。上が2016年の判決なので。また今回もたぶん控訴審があるので確定ではないですが。ケース名は

VLSI Technology LLC v. Intel Corporation

案件番号6:21-cv-00057

提訴されてのがFiled: 04/11/2019

対象特許は3つです

US 8,156,357 B2 Voltage Based Memory Size Scaling In A Data Processing System 権利者VLSI Technology LLC 出願人Freescale Semiconducto.

US 7,523,373 B2 Minimum Memory Operating Voltage Technique権利者 VLSI Technology LLC 出願人Freescale Semiconducto.

US 7,725,759 B2  System And Method Of Managing Clock Speed In An Electronic Device 権利者VLSI Technology LLC 出願人SigmaTel Incorporated

内容は半導体製造、回路動作、プロセッサ機能、チップアーキテクチャの様々な側面に関連しています。

上の絵の右側から2つ目にある権利譲渡されたNPE としてフリースケール、NXP、シグマテル、またはVLSIテクノロジーに由来する大きなポートフォリオ6つの特許を有すると主張しています。

記事によると

陪審員は、'373特許に関して$1.5億の一時金損害賠償を発行し、'759特許に関して$675Mの一時金損害賠償を発行し、合計$2.2億で発行しました。

とりあえずドケットを見に行くと

US 8,156,357 B2

- 該当なし 途中で諦めドロップする。

US 7,523,373 B2

CL1,5,6,9,11 are favor of VLSI

全て侵害で下記の賠償額

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US 7,725,759 B2

CL14,17,18,24 are favor of Intel

ということで非侵害だが、次の質問、均等論で全てVLSI勝ちになり

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なり。デカイです。

他にもVLSIテクノロジーLLCとインテルの戦いは少なくとも3度提起されています。2017年10月、フォートレス・インベストメント・グループLLCの関連会社であるVLSIテクノロジーは、カリフォルニア州北部地区のインテルを8件の特許で訴え(5:17-cv-056571)、2018年6月に第2の訴訟をデラウェア州訴えました(1:18-cv-00966)。デラウェア州(1:19-cv-00426)も有るようです。

追記:上記の別特許、別訴訟ではインテルが勝訴したそうです。一勝一敗ですね。額がでかいのでインテル担当者としては気が気でないと思いますが。

今回のトライアル結果は6:21-cv-00057です。地裁のトライアルなので

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陪審員の書いた記載が数字の○だらけです。1個の特許だと医薬品の訴訟の方が他にも高い気もしますが、少なくとも地裁の判断としては近年の最高額です。

ソフトバンクは33億ドルで買収してるらしいので、これが認められてもまだまだ行くと思います。

アメリカでの訴訟件数もトップ

先週調べたらアメリカでの知財訴訟件数でもソフトバンクグループは318件訴えてトップを走っています。

2位のacacia-research-corporationが316件でデッドヒートしていました。老舗アカシアグループより多いってどういうことだ。

なお、ソフトバンクグループグループとは「Fortress Investment Group LLC」が主な会社です。アメリカは最近外国からの投資に敏感なのでグループに留まっています。

2017年12月27日にソフトバンクグループの傘下(子会社)となるが、対米外国投資委員会はソフトバンクグループの業務関与を制限しており所有にとどまっている

3位以降は半分近い差がつきintellectual-ventures-llc、xperi-holding-corporationの188件が続きます。

更に少ないので参考程度ですがソフトバンクグループとして?uniloc-corporation-pty-limitedも107件でランクインしています。

訴訟すると親会社の契約などで制約されたり、他の訴訟がしずらくなるため特許ごとに都度箱を作ることが多いです。今回あげた会社名も実際には別の法人として訴えており図にあるuniloc2017もソフトバンクグループとみなされています。


見慣れない会社名が重なりますがソフトバンクビションファンドではなく買収した企業の関連企業はアップルとインテルによって裁判所に反訴されています。
この提訴したときの被告名には

FORTRESS INVESTMENT GROUP LLC,FORTRESS CREDIT CO. LLC,

UNILOC 2017 LLC, UNILOC USA, INC., UNILOC LUXEMBOURG S.A.R.L.,
VLSI TECHNOLOGY LLC, INVT SPE LLC,

INVENTERGY GLOBAL, INC., and IXI IP, LLC,

が並びます。実際に権利を所有していないなどというのが訴因です。

訴訟のなかの訴状でも

Rather than promote the progress of science and useful arts, patent assertion entities (“PAEs”), including Defendants, that aggressively pursue meritless litigation have long been recognized to harm and deter innovation. For example, one study estimated that patent litigation brought by PAEs in the United States resulted in expenditures of $29 billion in 2011 for licensing fees, legal fees, and other costs of responding to PAE litigation.

と言ってます。10年前の古い記録ですがNPEは29B$稼いだって活況です。


ソフトバンクグループはアメリカでの訴訟件数でも昨年一年間でトップですが、最近も活発です。

ソフトバンクGrの関わる訴訟資料アップデート済みのケース、最近一週間のみ

· 22 Mar 2021

· Finjan LLC v. Sonicwall, Inc.

· VLSI Technology LLC v. Intel Corporation

· SEVEN Networks, LLC v. LG Electronics, Inc. et al

· Neo Wireless LLC v. Dell Technologies Inc. et al

· 20 Mar 2021

· Uniloc 2017 LLC v. Athenahealth, Inc.

· 19 Mar 2021

· Finjan LLC v. Palo Alto Networks, Inc.

· DIVX, LLC v. Hulu, LLC

· INVT SPE LLC v. ZTE CORPORATION et al

· DivX, LLC v. LG Electronics Inc. et al

· VoiceAge EVS LLC v. Apple Inc.

· VoiceAge EVS LLC v. Lenovo Holding Company, Inc. et al

· 18 Mar 2021

· Finjan, LLC v. Qualys Inc.

· Finjan LLC v. Rapid7, Inc. et al

· DIVX, LLC v. Hulu, LLC

· Uniloc 2017 LLC v. Infor, Inc.

記載の左側の会社がソフトバンクグループとみなされている原告です。右側の被告はやはりICTやソフトウェア関連の大企業が多いですね。

さて、ソフトバンクグループ概観なので他の知財活動もさらっとみておきます。

ソフトバンクの日本出願代理人

日本の特許出願についてソフトバンクで検索すると2712件なので件数は少なめです。

2010年以降に絞って1144件なので代理人を名寄せします。

トップは龍華国際が342件以下、

黒田国際特許事務所 黒田 壽250、中村 弘通217

TMI総合法律事務所 稲葉 良幸181、内藤 和彦158、大貫 敏史158、江口 昭彦158

青和特許法律事務所 青木 篤136、南山 知広123、鶴田 準一106、三浦 剛73、中澤 言一45

白坂が60件

60件以上の代理人は以上になります。名前の後ろがソフトバンクの出願の代理人欄に名前のある件数です。業務法人以外は代理人欄に複数名の連名が多いので実際の出願件数とはアンマッチです。

当たり前ですが大手が多いですね。

開発段階

ビジョンファンドの群戦略で管理された海外のユニコーンはほとんど開発ばかりしているので外部委託しているのと同じですよね。

また開発の前段階でもユニコーンに資本提供しています。

特許分析を手掛けるシンガポールの新興ソフトウエア企業パットスナップは、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2などが参加した最近の資金調達ラウンドで企業評価額が10億ドル(約1090億円)を超えた。
  パットスナップの発表文によると、3億ドルのシリーズE資金調達にはこのほか、テンセント・ホールディングス(騰訊)の投資ファンドや既存出資者のセコイア・チャイナ、順為資本、バーテックス・ベンチャーズが参加。今回調達した資金は製品開発や販売拠点の拡大に使う意向だという。

不勉強で知らないですが、開発初期には特許分析して業界動向を調べることも多くその関連企業のようです。

まとめ

再掲になりますが知財日本一のソフトバンクグループの主な知財関連企業です。

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表の右側の権利活用してなんぼという基準で比較したとき、日本一としました。ICTを利用した知財活動やその主な企業はまた別の機会に述べます。

訴額だとアメリカ合衆国でも過去数年では一位、というか世界一ですよね。2.2億ドル日本円で約2300億円デカイです。

ちなみに日本の高額裁判だと

アルゼ VS  サミー 平成11(ワ)23945 が74億円

東ソー  VS ミヨシ油脂 平成 22(ネ)10091 が17億円
イシダ  VS 大和製衡 平成 19(ワ)2076 が15億円

辺りが有名です。

また権利行使を裁判までしていると限定したらここでも300オーバーなので一年間日曜日以外毎日訴状を提出した計算になります。このコロナのなか活発です。日本の一年間の知財訴訟より下手したら多いかも。

日本国内でほとんど比較していませんが、知財の本場アメリカ合衆国でトップなら、比較するまでもなくソフトバンクグループが知財日本一ということです。

NPEを使ってということで忌避する人もいるかもしれませんが、釣り堀にこれだけのお金が落ちているなら、餌を買うのは商売人なら当たり前です。知財担当としては仕事が増えますが、日の当たる場所を用意されたと意気に感じるしかありません。

半導体関連はarmの設計図を使っているので目利きが見れば摘発も容易、訴訟も多発しています。もとarm所有、現エヌビディアの株式保有のソフトバンクグループがこの分野で活発なのも分かりますね。

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