佐藤可士和さんと改正意匠法
建築物、内装の意匠が初めて意匠登録されました (METI/経済産業省)が、佐藤可士和さん祭りなので少し古いけど取り上げます。
https://www.meti.go.jp/press/2020/11/20201102003/20201102003.html
初めての意匠登録事例
上記のホームページでは改正意匠法の建築物、内装の意匠でそれぞれ2つお役所ピックアップしているのですが、いずれも佐藤可士和さんがヒットしています。
① 意匠登録第1671773号「商業用建築物」(株式会社ファーストリテイリング)
ユニクロPARK 横浜ベイサイド店(株式会社ファーストリテイリング)
ユニクロと佐藤可士和さんはコラボしてお互いを高め合える間柄です。長年、世界一を狙っています。今回は間違いなく日本初?ですよね
②意匠登録第1671153号「回転寿司店の内装」(くら寿司株式会社)
(参考)くら寿司浅草ROX店(くら寿司株式会社提供)
内装について江戸文字をモチーフにし2020年オープンP56したものが登録になっています。くら寿司のロゴが変わった時の基幹店なので有名ですね。
改正意匠の状況
令和元年意匠法改正特設サイト | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)によると
新たな保護対象についての意匠登録出願件数(令和 3 年1 月4 日時点で取得可能なもののみ)
意匠登録出願件数 画像685 建築物 294 内装172
でした。
※ 上記の「画像」「建築物」「内装」は、統計取得の都合上、以下の定義に基づいて取得しています。(意匠法上の定義と完全に一致しているわけではありません。)
昨年の出願意匠は全体でも24,633件でしたので5%くらいの増加効果が有りました。やはりこの改正意匠が意匠微増の原因です。
では佐藤可士和さんの新制度の意匠登録についてもう少し見ていきます。
意匠登録1671153
回転寿司店の内装
くら寿司株式会社
こちらも新規性喪失の例外を申請し、新制度初日に出願しています。
「回転寿司店の内装」(くら寿司株式会社)
の意匠出願があり、創作者は佐藤可士和と有ります。
実際のお店は歌川広重の屋台をイメージされたそうで木目がキレイです。出店みたいな射的場もあるみたいです。
意匠登録1671773
商業用建築物
株式会社ファーストリテイリング
上の参考図からするとユニクロPARK横浜ベイサイドのようです。
滑り台やボルダリングの配置が特徴的です。本P16
特許庁公開データだと
(11)【登録番号】意匠登録第1671773号(D1671773)
(54)【意匠に係る物品】商業用建築物
(22)【出願日】令和2年4月1日(2020.4.1)
(72)【創作者】【氏名】佐藤 可士和
(72)【創作者】【氏名】藤本 壮介
(73)【意匠権者】株式会社ファーストリテイリング
(74)【代理人】田渕 周作
【新規性喪失の例外の表示】意匠法第4条第2項の適用申請が有りました。
(55)【意匠に係る物品の説明】本建築物は、その内部を、衣料品等を販売する店舗として、屋上から地上へと切り崩したような形状をなす屋外部を、遊戯スペースや休憩スペース等として用いるものである。
とありこれも新制度初日です。
(24)【登録日】令和2年10月15日(2020.10.15)
(52)【意匠分類】L3-2000
(51)【国際意匠分類】Loc(12)Cl.25-03
【Dターム】L3-2000VZB
(21)【出願番号】意願2020-6416(D2020-6416)
佐藤可士和さん
そもそもは元々美大から博報堂なのでクリエイターですよね。
今ではロゴからコンセプトのような上流、企業や大学の再定義まで幅広い仕事をされていますね。
「ふじみようちえん」のデザインから今回の建築、内装にも進出と有ります。手塚夫妻と東京·立川市にある円形の建築!なので近くに行ったら観てこようとメモ代わり。
さて知財担当らしく本当に経歴通りそうなのか調べてみます。
特許庁関連のHPであるJPPで「佐藤可士和」を検索すると意匠13、商標2がヒットしました。
商標をみると「佐藤 可士和」さんの名前を㈱サムライが出願しています。18年に区分18を追加している同一商標です。作られた数知れずの商標は各メーカーが出していますのでここには現れません。
意匠を見ると花王とスマホの二大出願の束です。
意匠登録1662110他全5件
包装用容器
花王株式会社
(22)【出願日】平成27年2月19日(2015.2.19)
【氏名】井田 厚
上の本のP78-81で監修したとあるトリガー式ボトルです。意匠の説明があり、
力強い佇まい 底面が3角形で上が円形というシンプルで力強いフォルムで男性用
シンプルですっきりとした男性らしいイメージを自然な“ハリ”のある三次元曲面で表現。
久しぶりに薬局に行ったら男性用化粧品が充実していてびっくりしました。制汗剤や消臭しか買ったこと無いですが、何か。
スマホ関係が6件
意匠登録1380784
携帯無線電話機
日本電気株式会社が3件
富士通、株式会社サムライ、NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社も各1件。
一件見ると【氏名】連名の末尾にお名前
大隅 瑞穂
森山 祐助
山崎 綾
對島 隆介
株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ
22)【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
iPhone の二年後、スマホの意匠です。このときはまだまだ現役だったんですよね。
残り2件が先ほどの建築と内装です。
まとめ
佐藤可士和さんのNHKの仕事の流儀を昔見て、奥様強いーって
また、ミニマリストのような整理されたオフィスが印象的でした。言葉は悪いですが偏執狂のあるくらいの、フォントへの取り組みは誤字脱字だらけの私には真似が出来ません。
本のなかにあるアイコニックブランディングで、紹介された企業が蔦屋、ユニクロ、楽天、セブンイレブン、日清、ホンダ、ヤンマー他、
意匠に載せた武田薬品の本社、キリンビールやNTTドコモの製品、それ以外の製品
上の意匠や商品ベースまで含めたら時価総額ベースで日本の1/4ぐらいは関わっていそうです。次の世代だと、うーん今しばらく時代が続きそうです。
個人的には、やはり2004年のステップワゴンでの「モノより思いで」って先見の明が有りますよね。タンタカタンタカという音楽と、子供の絵が思い出しました。
世間では未だにというかやっと「モノからコト」が大事とか言い出しているのに、先を進んでいます。
ちなみにステップワゴン自体はモノにシフトしたのか高くなって、この分野で日産に追い抜かれてましたね。コンセプトを継続するのは大変です。
それにしても特許庁が紹介する改正意匠の事例の半分を占めるのは凄いですよね。
これが佐藤可士和さんでなければ、官民のズブズブの関係?
菅総理の息子さんのように七万円っすかぁ?なんて軽口もたたけるのですが、これだけの大御所だとWin-Winの関係ですね。
建築の意匠に関連する他の建築士や企業は歯ぎしりしてるかもしれませんけど。
残念なのがコロナでせっかくの受賞?を見に行けないこと。はやく思いっきり外出したいです。
私?私は業務的に建築や内装には関わらず、建築士ではないので、あっそうレベルです。半年後に気づくような体たらくなのですが、この意匠の類似の範囲は気になります。
一例を上げると物品の説明の欄だけだと広いけど、どこまで攻めれるのかな?
【意匠に係る物品の説明】本建築物は、その内部を、衣料品等を販売する店舗として、屋上から地上へと切り崩したような形状をなす屋外部を、遊戯スペースや休憩スペース等として用いるものである。
さすがに意匠だから正面図との対比からはじまるはずたけど、これだけ大きな意匠だと微差はどの辺の大きさなのか興味はあります。でも裁判沙汰にはならんだろうなぁ。
つまり、同じ土地で似たような店舗を作ることはあり得ないので、似たような傾斜の土地で似たような店舗をという話だと思います。
その時、木の一本杉の位置や階段の位置は丘隆土で変わるはずなので、これが類似は分かります。
でも遊戯スペース全てアウトとか言われたら、それこそ山を切り開いた所に先行意匠は多くありそうですから酷です。このあたりの塩梅は難しいですね。
あと今、展覧会をやっているそうです。
90年代には、アートディレクターがクリエイティブディレクターの役割を担うケースが増えていきました。一方、欧米では1990年代にファッション業界で、服飾デザイナーがクリエイティブディレクターとなり、ブランドコンセプトの構築から、服のデザイン、店舗設計、広告までトータルに監修するケースが現われました。1994年にGUCCIのクリエイティブディレクターに就任したトム・フォードは、その最も早い例に数えられます。日本では2000年代から、広告の枠を越えて、企業や商品のブランディングに携わるクリエイティブディレクターが徐々に現れてきました
って書かれていてマルチな活躍は世界的な潮流なようです。
こんなふうに自分がロゴを書いた所で企画展を出来る人なんて他に居るのだろうか?