スマイルカーブとサッカーの戦術
今週も冨山和彦さんのコーポレート·トランスフォーメーションの第二章からサッカーの戦術進化と対比して見ていきます。
パソコンまでの経過
冨山和彦さんのおっしゃるように戦後長らくIBMは天下でした。
新人で入った会社でも、その当時の長老のような人にコンピューターは「IBMを入れてたら問題ない状態だった」と聞きました。
今では?だと思うCC;カーボンコピーが領収書以外でもバリバリ現役だったとき、
ゼロックスがコピーの代名詞だったようにコンピューターの代名詞がIBMでした。
大型なシステムで個人に一人なんてありえず共用のワークステーションだったときIBMの初代経営者だったトーマス・ワトソンの
「世界中に五台のパーソナルコンピュータしか要らない」
はガセのようですがIBMがPCに余り注力して居なかったのはその通りのようです。
そんなIBMがアーキテクチャーを定義し、インターフェースを明確にして仕様を公開し、標準化を推進したSystem/360を発売したのが1964年。これが大きなエポックメーキングな事件でした。
その後の1981年にワークステーションなどに注力するため工数が足りずに外注に出した先が有名なマイクロソフトのMS-DOSでした。
ここでの契約にもミスったことがIBMにとって一生の不覚となりました。
同じタイミングでCPUを受注したのがインテル8088です。
下記のスマイルカーブで言う
部品に価値を見出すキーコンポーネント・サプライヤとしてインテルが
プラットフォーマーに該当するOSをマイクロソフトが担うことになります。儲かっているところですね。
それでもWindows95ぐらいまでは日本メーカーの一体製造したもの
具体的にはNECの98シリーズやその前の文豪シリーズといったワープロが現役でした。
その後、エクセル・ワードでのやり取りにより一気にWindowsならずんばビジネスで使えず、
デザインの一部のみアップルを使っている
状態でした。
アメリカはそういう余りにも独占したとき独禁法が出てくるんですよね。スタンダードオイルやAT&Tなどが有ります。
かたや中国は監視しやすいように寡占を許容しているようにも見えます。
スマイルカーブの読み方
企画・開発,部品生産 などの川上の部品メーカーが儲かる。この会社しかできないというキーコンポーネントサプライヤが高い付加価値を得ます。
それ以外の 薄利多売の販売や、そのための製造、組み立ては儲からない。
川上からバリューチェンは川下に流れて行く中間のイメージです。ここでは量を膨らませて単価は安くとも生き残りを図ります。
アフターサービスはプラットフォーマーの出番です。垂直統合していた既存プレーヤーは弾かれています。
ICTにおける進化
1964年 IBM System/360 ワークステーション
1981年 インテル CPU8088 85年DRAM撤退i386
1998年 独占禁止法により更に細分化
通信:クアルコム
ファブレス:アーム
GPU:NVIDIA
余りに強大になると行われる独禁法で委縮したのか 部品側はその後生まれた、高速通信3、4Gでのクアルコムや、アップル向けのCPUから生まれたアーム
グラフィックボードからAIにも応用可能なNVIDIAが生まれました。
ソニーのカメラ機能などスマホに入るボトルネック工程で稼ぎが生まれています。
川上は上記のように登場人物が新しく増えていきますが、
川下はプラットフォームなので収斂していきます。お金や体力勝負なので一度歯車が回ると挽回の機会は
次の技術革新のタイミングまで待つ必要がありそうです。
それ以外にもプラットホーマーにもマイクロソフトのオフィス抱き合わせ販売などに対して独禁法のような事が起こるのでしょうか?
サッカーの隠喩
戦略の次世代への継承というと、サッカーが分かりやすい例なので挙げていきます。
現在は、バイエルンのスターチームがUEFAチャンピオンズリーグ(UEFA Champions League)を勝ちました。以下すべてこの大会を強さの基準にします。
現代サッカーの元祖と言えるのが1974年のワールドカップで魅せたトータルフットボールのオランダ代表。
ボール狩りと呼ばれるDF,MF,FWといったポジションを離れてのプレーが衝撃を与えました。
これが、IBMのIBM System/360にあたります。しかし流動的にしたという点では逆の動きにも見えます。
アーキテクチャーを定義
インターフェースを明確にして仕様を公開
しかし、持ち場を離れてもフォローするなど設計された内容は通じるものがあります。
同じトータルフットボールから、スマイルカーブのようにディフェンス特化とオフェンス特化に枝分かれしていきます。
防御側
部品に価値を見出すキーコンポーネント・サプライヤに該当するのがディフェンス側です。
このディフェンス側の新たな動きはそれまでもカテナチオと言われる鉄壁のディフェンスを誇っていたイタリアが発祥です。
ACミランのサッキ監督が導入したゾーンディフェンスを組み合わせた「プレッシング」です。
4-4-2の前後10m限られたポジションの中で連動してボールを奪う戦術はハマりました。
チェルシーに移籍したシェフチェンコが奪ったボールをゴール量産するのを、インザーギと共に演出していましたね。
日本でも流行りセリエ・アーと格好つけてAをこう呼んでましたね。88-90、93-94、02-03,06-07champion
こちらはビジネスでいう部品単体の精度を上げて次工程に回せば、ゴールゲットするという流れに通じます。
CPUのインテルのように限られた場所で独占するのはミランのスペースに入ったら終わりに似ています。
その後、後で述べるような攻撃的なスターチームの台頭で一時下火になりますが
2012年からレッドブルが起こなった若手のみによる体力勝負のサッカーで生まれ変わる「ストーミング」が生まれます。元々実績のあったラングニック監督が統括しながら8秒ルールのようなボールを取ったら直ぐにシュートといった流動性を求めたサッカーに変化します。
ドイツ系が好きな規律と強靭な体を使った戦術はクロップ監督がリバプールで花開きました。
これはアームのようにファブレス生産に特化した戦術に似ています
老獪な動きは他のチームに任せてストロングポイントである走りに特化する。格好いいです。
攻撃側
プラットフォーマーがうごめくオフェンス側に移ります。
トータルフットボールのごちゃごちゃしたボール周りを体系化したのが主将をしていたヨハン・クライフが監督のバルセロナです。
ボール支配率を70%以上持てば80%勝てるという思想の元、ボールを回して回して隙を見つけたらゴールゲットします。91-92、05-06、08-09優勝
なお、メッシが在籍するようになってからは、リアル・ウイニングイレブンと言われるぐらいゲーム機にてやっているようなスター選手、ボール回しの動きを行っていました。
全盛期のころは偽7番とか、メッシのポジショニングとか基本メッシを中心にバルセロナは動いていました。
ビジネスで見ると、ひとりのスター技術者をというかスティーブ・ジョブズをどのように活かすかがアップルの全てだったのと似ています。
年齢的にも厳しいメッシ亡き後をどのようにするかという点でも瓜二つです。
現在のサッカーとビジネスの対比
ヨハンクライフが監督だった時の主将であるグラウディオラはバルセロナ全盛期を支え、現在、マンチェスターシティの監督です。
対するディフェンス側のストーミングは香川真司もいたドルトムントで活躍したクロップ監督がリバプールで昨年優勝しました。
今年も取ったバイエルン・ミュンヘン、宇宙までついたレアルマドリード
レアルから移籍したクリロナのいるユベントス
アラブマネーのPSG(パリ・サンジェルマン)
目が離せません。
って、ビジネスと合わせるとこのあたりがグローバル大企業です
お金が有るのなら、全てにスター選手を集めてジダンのようなカリスマに監督(CEO)任せたらある程度の結果が出る。
これが今の超大企業ですね。川上から川下まで全て頑張る。
それとほぼ大差ないですが、オフェンス側のプラットフォ-マーにも顧客との接点が必要なため、お金が必要です。
そりゃバルセロナのようにボール支配率70%とかを求めたら足技を持った優秀な選手を穴の無いように準備する必要がありますからね。
または、真の天才に合わせてデザインするバルセロナの状況をトレースするのが有りそうです。
まとめ
実際の二章の中心は両利きの経営なんですが、
既に書いたので割愛して脇道を攻めています。
ビジネスもサッカーも日々進化して行ってるので立ち止まっていると、取り残されてしまいます。
日本企業も日本的経営とか言ってる場合では無いのでは無いかというのはその通りかもしれません。
また、スター選手がいないから、分野を特化して稼ぐのが必要なので、今後も部品メーカーが儲かるのではないかというのが、良く対比して居るのでは無いかと自画自賛です。
何故サッカーなのか?追記
そもそもサッカーは野球に比べて即興的なので、今の経営モデルに有っていると思います。
過去のアンゾフの経営モデル、管理が居て、その下に経理、開発、営業などなどがピラミッドになっているのは野球に似ています。
これに対して、アジャイル開発やらスピーディな決断力が求められるとサッカーが似て居るのではとの事でした。
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